生体機能材料学
生体機能材料学
生体機能材料学

生体機能材料学分野

教授
山本雅哉
助教
小林真子

生体機能材料からプラネタリーヘルスを支える
先進医療の発展に不可欠な医用高分子の可能性を拓く

 

多様な生物が地球環境でいかに有機的に活動するか
近年、SDGsをはじめ、プラネタリーヘルス(地球の健康、つまり人類を含めた多様な生物が生命を維持できる自然環境を有し、地球上で人類が安全に有機的な活動ができる状態)の実現が世界共通の大きな課題となり、人類はこれまでの経済活動優先の行動を変えるべき転換期を迎えました。
そして、この地球に暮らす私たち一人ひとりのかけがえのない健やかな暮らしもまた、有機的な営みとして保障されるべき要件に数えられます。

生体材料として汎用性の高い医用高分子
安心して暮らすための人と地球の健康を考えたとき、先進医療や医用材料の発展が欠かせません。医療の歴史において医用材料は、補助人工心臓などの人工臓器から始まり、再建外科治療では骨を接合させる金属製や非金属製ビス、2000年代からは生体の失った部分を再生させるIPS細胞などの再生医療によって医療の高度化をもたらしました。
そして、医療のさらなる発展には、材料科学や基礎医学の進歩とともに、再生医療材料の研究開発が必要不可欠であると考えられています。私たちは、生体と材料の相互作用を理解して制御可能な「医用高分子」の研究を進めています。高分子と一言にいっても、ゲル状のソフトマテリアルやプラスチックなどの硬い素材など多様ですが、生体適合性の高さだけでなく、生体と双方向に対話する技術の開発研究を行っているところが私たちの研究の特徴です。
一方で、医療分野だけではなく、化粧品などの日用品や環境問題となるナノ・マイクロプラスチックでも材料と生体とが相互作用するため、このような新たな研究分野に対しても、これまでの医用高分子研究の技術や知識が活用できると考えています。

新たな生体機能材料がもたらす先進医療の発展と革新
山本研究室では、医用高分子の持つ「生体と対話する技術」を高め、将来の医療技術開発への貢献を目指しています。医用高分子の知識と技術を、再生医療など医療目的で活かす方向性と、環境問題としても話題となるナノ・マイクロプラスチックの有害性を調べ、医療以外の多方面へ展開する方向性の、2つの方向性で研究を進めています。
再生医療を応用先とした研究では、体内の細胞を活性化する方法を開発したり、体外で細胞機能を改変したり、細胞を立体的に配置して生体組織に類似の3D組織を造るための細胞足場材料を開発したりしています。
生体機能材料は、医歯薬学に関する基礎研究や医療応用のみならず、複合材料、有機・無機ハイブリッド材料、バイオミメティック材料などとして、さまざまな用途への応用が期待されていますが、現在、私たちが取り組んでいる研究の具体的な出口イメージは、生体材料、再生医療、ドラッグデリバリーシステムなどです。

Projects

再生医療への応用を目指して3Dバイオプリンティングなどを含めた体外で生体組織を構築する技術の開発

再生医療は、体内に存在する細胞の自己修復能を高め、治療する方法論であり、大まかに2つの方法があります。ひとつは、体外で細胞を加工して体内へ戻す方法、もうひとつは、体内の細胞を直接活性化する方法です。
前者では、細胞培養技術や細胞を立体的に配置する技術が必要とされますが、山本研究室では、医用高分子ツールを使ってこの培養生体組織を3次元で構築、つまり「体内の微細な組織を、体外で再生する」ための技術開発を進めており、さらに3Dプリンティングに応用しやすい足場素材の研究ツールを開発しています。
高分子ナノファイバー、高分子ナノ粒子アレイ、金属有機複合体、高分子ペプチドや刺激応答性高分子などさまざまな材料を開発し活用して、生体と材料を物理的・機能的につなげる仕組みを研究しています。

ナノ・マイクロプラスチックの物性と生体影響との関連性に関する研究

極めて微細なプラスチックごみ「ナノ・マイクロプラスチック」。ペットボトルや服の繊維などから出ると言われており、近年、海や大気中などあらゆる環境で見つかり問題になっています。魚介や野菜などから知らず知らずのうちに人体への取り込まれている可能性も高く、腸内や血管内から見つかったという事例も報告されています。しかし、この微細な物質が地球環境や生態系に対してどのように影響するのか、実はまだあまり分かっていません。
山本研究室では、生体と材料とが出会う場所(界面)の研究で培った技術を、この研究に応用しています。環境中にあるようなさまざま形、サイズのナノ・マイクロプラスチックを試作し、腸や血管の生体3Dモデルに入れ込み、その影響を調べています。これは現在の地球環境の中で人間がどのように生きていけるかということに関係します。

Topics

カツ丼を食べに行く会?!イベント充実です

山本研究室では、活発にイベントを開催しています。留学生の歓送迎会から、論文読み合わせの雑誌会の慰労会、院試の前のカツ丼を食べに行く会、秋の芋煮会、研究室対抗の野球大会や駅伝大会など、みんな思い思いに行事を楽しんでいます。
研究室に仙台出身者がいない年にも芋煮会を開催し、誰も正解を知らないままにみんなで買い出しに行き、河川敷に集まって芋煮を作りました。初めて作った芋煮もあったかくてとても美味しかったとのこと。
材料系には男性学生が多いのですが、山本研究室は生物系テーマのためか毎年数名の女性学生が在籍しています。関連があるかはわかりませんが、研究室にはいつもお菓子が溢れています。