最近の研究

杉本研究室の最近の研究を紹介

01.高磁化・高耐熱を有する新規Mn拡散Sm-Fe-N系コアシェル粉末を開発

  本研究室では,既存の還元拡散法を応用したプロセスにより,Sm2Fe17Nxをコアに,Mnが濃化したSm2(Fe,Mn)17Nxをシェルに有する,Mn拡散Sm-Fe-N系コアシェル粉末の開発に成功しました。Sm2Fe17Nxを主相とするSm-Fe-N系粉末にMnを添加すると高保磁力・高耐熱性が得られることが知られておりましたが,Mn添加に伴う磁化の減少が問題となっておりました。そこで本研究室では,MnをSm-Fe-N系粉末表面にのみ濃化させたコアシェル粉末の作製を試みました。Sm2Fe17, Mn3O4, Sm2O3混合微粉末にCaを加え還元拡散処理することで,Sm2Fe17粉末の表面近傍にのみMnを拡散させ,さらに窒化処理,洗浄を経ることで,粉末表面にMnが濃化した,Mn拡散Sm-Fe-N系コアシェル粉末の作製に成功しました。このコアシェル粉末は,従来のMn添加Sm-Fe-Mn-N系粉末と,Mn添加なしSm-Fe-N系粉末の中間の磁気特性を有しており,高耐熱性と高飽和磁化を両立する粉末として期待されております。1)

  1. 1) M. Matsuura, et al., ”Preparation of Mn-diffused Sm-Fe-N core-shell powder by reduction-diffusion process” , Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 471 (2019), 310-314.
    https://doi.org/10.1016/j.jmmm.2018.09.084

02.世界最高レベルの高(BH)maxを有するSm-Fe-Nバルクマグネットを開発

  本研究室では低酸素なSm-Fe-N系粉末を作製し,それを放電プラズマ焼結装置(SPS)で焼結することで,179 kJ/m3 (=22.5 MGOe)なる高(BH)maxなSm-Fe-N系バルクマグネットの作製に成功しました。これは同等クラスの保磁力を有するSm-Fe-N系磁石の既報値と比べて優れた特性と言えます。
  さらに,低酸素Sm-Fe-N系粉末に対し,アークプラズマ蒸着法(APD)により低酸素・微細なZn粒子を蒸着したSm-Fe-N/Zn複合粉末を作製し,それをSPSで焼結することで,Zn添加量が3.3 wt%ながら1.1 MA/m (= 13.8 kOe)なる比較的高保磁力を有し,かつ153 kJ/m3 (= 19.2 MGOe)なる高(BH)maxを有するSm-Fe-N系Znボンド磁石の開発に成功しました。1)

  1. 1) M. Matsuura, et al., “Increase of energy products of Zn-bonded Sm-Fe-N magnets with low oxygen content“,467,64-68.
    https://doi.org/10.1016/j.jmmm.2018.07.064

03.高保磁力Sm-Fe-N系Znボンド磁石を開発

  本研究室では極低酸素な微細Zn粉末を開発し,それを用いることで,従来よりも低Zn添加量にも関わらず高保磁力なSm-Fe-N系Znボンド磁石の開発に成功しました。Zn粉末の作製に水素プラズマ-金属反応法(HPMR法)を用いることで,平均一次粒径が0.23 µmで,酸素量が0.068 wt% (680 ppm)と極低酸素な微細Zn粉末を作製しました。それを市販のSm-Fe-N系磁石粉末と混合,プレスし,熱処理して得られたSm-Fe-N系Znボンド磁石において,15 wt%-Znで2.66 MA/mなる高保磁力を実現しました。さらに,同Zn粉末を用いることで,10 wt%-Znと従来よりも少ない添加量でも2.41 MA/mと高い保磁力を得ました。1)

  1. 1) M. Matsuura, et al., “High coercive Zn-bonded Sm-Fe-N magnets prepared using fine Zn particles with low oxygen content”, Journal of Magnetism and Magnetic Materials,452,243-248.
    https://doi.org/10.1016/j.jmmm.2017.12.059

04.新しいAl合金の実用化に道筋、Al-Ca合金の「伸びやすさ」を制御可能に

- 高い寸法精度が要求される電子機器材料や高成形性材料への応用に期待 -

  手束展規准教授(知能デバイス材料学専攻・スピントロニクス学術連携研究センター)と日本軽金属株式会社は、低ヤング率であり優れた成形性が期待されるAl-Ca合金のヤング率が加工・熱処理で変化するメカニズムを解明しました。これにより本材料のヤング率の制御が可能となりました。また、強度向上のためヤング率に影響を及ぼさないFeを添加することでAl-Ca合金の実用化の目途が立ちました。
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05.FeCo基異方性薄膜の開発に成功

  Rh(001)下地層上にFeCo-Ti-N薄膜をエピタキシャル成長させることで,膜面直方向に歪んだbct構造を有し,膜面直方向の磁気異方性を示すFeCo系薄膜の開発に成功した。FeCo-Ti-N層の膜厚が7.7 nmのとき磁気方性定数(Ku)は1.39 MJ/m3で,15 nmではKu=1.15 MJ/m3であった。このとき格子の軸比(c/a)は1.08であり,FeCo-Ti-N層の膜厚を62 nmまで厚くしてもc/a=1.05と格子歪が保たれており,Kuは0.46 MJ/m3という比較的高い値を示した。以上の結果から,TiとNの添加が格子歪の保持ならびに磁気異方性の向上に寄与した可能性を見出した。1),2),3)

  1. 1) M. Matsuura, et al., “Increased Uniaxial Perpendicular Anisotropy in Tetragonlly Distored FeCo-Ti-N Films”, J. Appl. Phys., 117, (2015) 17A738.
    http://dx.doi.org/10.1063/1.4916763
  2. 2) 河原崇範ら,“FeCo-Ti-N薄膜における格子歪と磁気異方性”, 電気学会論文誌A, Vol. 136, No.12 (2016) 804.
    http://dx.doi.org/10.1541/ieejfms.136.804
  3. 3) 河原崇範ら,“FeCo-Ti-N系異方性薄膜における結晶構造と磁気特性の膜厚依存性”, 電気学会マグネティックス研究会資料, MAG-15-160, (2015).

06.FeCo基高保磁力ナノ粒子の開発

  アークプラズマ蒸着法を用い,FeCoナノ粒子(平均粒径=3.7 nm)をSiO2ナノ粒子上に蒸着したFeCo/SiO2複合ナノ粒子において,FeCo系としては異例の,最大600 kA/m (平均300 kA/m)の高保磁力が発現することを見出した。高保磁力発現の要因としてはFeCo/SiO2界面での界面磁気異方性または界面での酸化物相出現の可能性があり,現在詳細な調査を進めている。1)

  1. 1) D. Horiyama, et al., “High-Coercivity Fe-Co Nanoparticles Prepared by Pulsed Arc Plasma Deposition”, Materials Transaction, Vol. 57, No. 2 (2016) 207.
    http://dx.doi.org/10.2320/matertrans.MAW201510

07.新規高保磁力Mn-Li-N系バルク合金の開発に成功

  超高圧合成に最適な窒素封止超高圧セルを開発し、このセルを用いて、リチウムアミド(LiNH2)とMnの微粉末を混合後、2~13.6 GPaの高圧下で合成することによって、既存のMn-N系化合物とは異なる正方晶系の新規化合物の合成に成功した。この新規化合物は最大印加磁場1.6 MA·m-1(20 kOe)において17.73 A·m2·kg-1 (17.73 emu/g)、保磁力が310.7 kA·m-1 (3.96 kOe)という高保磁力材料の可能性を秘めていることを見出した。1)

図) 高圧合成されたMn-Li-N系合金のヒステレシス曲線
  1. 1) Itsuki Matsushita, Atsunori Kamegawa, Satoshi Sugimoto.,“High-Pressure Synthesis of New Magnetic Compound in Mn-Li-N System”, Mater. Trans., 57(10), 1832-1836, (2016).
    http://dx.doi.org/10.2320/matertrans.M2016096

08.世界最小Nd-Fe-B系磁石粉末の作製に成功

  Nd-Fe-B系焼結磁石の高保磁力化のために、結晶粒径を小さくし単磁区粒径に近づける方法が考えられている。本研究室では、水素の吸収・放出反応に伴う結晶粒微細化現象(Hydorgenation Disproportionation, Desorption Recombination (HDDR))、水素の吸収に伴う結晶格子膨張によって生じる粒界破壊、粒内破壊現象(Hydrogen Decrepitation (HD))、微粉末作製方法であるヘリウム(He)ジェットミル法(He-JM)のコンビネーションにより、図のSEM像に示すような、単磁区粒径サイズに匹敵するサブマイクロメートルサイズで世界最小のNd-Fe-B系ジェットミル粉末の作製に成功した。1),2)

図 a) 従来のJM粉と b) HDDR法利用したJM粉末のSEM像

09.新規高保磁力Mn系バルク合金の開発

  本研究室では、希土類磁石並みの保磁力が発現するMn-Sn-Co-N系合金を見出した。図1に高温での窒素中アニール後、低温で窒素中アニールを行った際の保磁力を示した。組織観察から高保磁力を示す合金は、上記の熱処理中に高温相がβMn相とぺロブスカイト相に分離した2相組織を形成し、そのぺロブスカイト相内には多くの双晶が存在することが分かった。さらに、双晶界面で磁壁がピンニングする可能性があることも判明した。1),2),3)

図1) Mn-Sn-Co-N系合金における保磁力の熱処理温度依存性
  1. 1) Keita Isogai et al., Mater. Trans., 54, 1236, (2013).
    http://dx.doi.org/10.2320/matertrans.M2013113
  2. 2) Keita Shinaji et al., Mater. Trans., 54, 2007, (2013).
    http://dx.doi.org/10.2320/matertrans.MAW201312
  3. 3) Masashi Matsuura et al., J. Alloys. Compd., 605, 208, (2014).
    http://dx.doi.org/10.1016/j.jallcom.2014.03.158