電気化学反応を利用した、有機水素キャリアからの新しい脱水素化手法を開発します。

MCH1

 燃料電池などに使用される水素の貯蔵法として、液体水素や圧縮水素だけでなく、LaNi5やバナジウム系の水素吸蔵合金や遷移金属錯体であるボロハイドライド等の無機系材料が検討されてきました。 最近ではそれらに加え、よりハンドリングの容易な常温で液体のメチルシクロヘキサン(MCH)などの有機ハイドライドやアンモニア(NH3)の利用が提案されています。 このような状況下で、エネルギーキャリアを主体とする水素エネルギー社会の実現に向けて、水素エネルギーキャリアの低コスト合成や、工場や家庭などの水素を使用する場所(オンサイト)でキャリア分子から水素へ変換(脱水素)するための高効率触媒開発が挙げられます。 これらのうち、脱水素反応自体は、エネルギー効率(活性化エネルギー)を無視すれば、熱的に進行させることが可能です。 しかし、水素エネルギーキャリアの燃料電池への応用を考えるとき、キャリア分子からの脱水素反応を、オンボードで、エネルギー効率よく、しかも瞬時に、そして経済性を加味して、行うことが必須条件です。

MCH3

 以上の研究背景の中で、私達は電気化学反応を利用した脱水素化手法の開発を行っています。 上図に示す、電気化学フローセルやオンライン電気化学マススペクトロメトリー(OLEMS)、ガスクロマトグラフィーなどの分析手法を用い、脱水素過程における生成物や電気化学的電流応答の分析を通じ、 脱水素化手法を開発します。更には、高エネルギー効率、高レスポンス性を達成する触媒構造を見出すことを研究課題としています。