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環境負荷低減を支える材料開発
2006年1月現在  

 地球温暖化は,最も重要な環境問題です.原因物質のCO2は火力発電(30 %)と自動車を含む輸送部門(20 %)が,排出量の50 %を占めます.温暖化の抑制には,火力発電プラント,輸送機器の効率化を計りCO2排出を抑制する必要があります.
  Fig. 1に示す発電プラント等の熱効率と作動温度の関係から,プラントの作動温度を上げれば効率が向上することは明白です.当分野では,火力発電やジェットエンジンの回転部材に使う,軽くてしかもより高温に耐える材料の開発で,高効率化に貢献しようと考えています.また,自動車の燃費向上には車体の軽量化が有効です.軽量化に有益なマグネシウム合金の利用拡大には,高温用マグネシウム合金の開発,室温用マグネシウム合金の加工性向上などが必要です.さらに,種々のプラントでも多くの材料が消費されています。プラントの長寿命化も環境負荷軽減に有益です。当分野では長寿命化を支える損傷評価や信頼性の問題も取り扱っています.
 
発電プラントの熱効率と作動温度の関係

Fig. 1 各種発電プラントの熱効率と作動温度の関係
研究テーマ(材料)

  TiAl合金
    - ナノラメラ組織が注目される次世代軽量高温材料

  高Crフェライト系耐熱鋼 - 高温プラント構造材料

  遮熱コーティングシステム

  ロータス型ポーラス・マグネシウム
   - 不思議な多孔質材料

  マグネシウム合金 - 次世代軽量材料

  アルミニウム・リサイクル材料
    - Al-Fe金属間化合物の組織制御

  FeAl合金 - 不思議な材料特性とナノテクノロジーへの応用

  NiAl, CoAl合金 - 高融点にして高機能な金属間化合物

  Mo-Si合金 - 超高温耐熱合金の最有力候補

  鉄-フラーレン合金 - 金属材料学とナノテクノロジーの融合

  マベガイ真珠
    - 美しさに秘められたバイオミネラルの不思議な材料特性

  金属ガラス - 変形と破壊のメカニズム
 


TiAl合金 次世代軽量高温材料

   
 航空機エンジンや自動車ターボチャージャ用の耐熱材料には,これまでNi基超合金が使用されてきました.チタンとアルミニウムの金属間化合物「TiAl合金」は,比重がNi合金の半分程度であり,高温強度にも優れています.このため,約700〜900℃の温度範囲でNi合金に代わる軽量高温材料としてTiAl合金は期待されています.
 現在TiAl合金の実用化が少しずつ始まっており,市販車用ターボチャージャのタービンホイール材への採用では大きな注目を集めました(Fig. 2-a).宇宙・航空分野も視野に入れて広く実用化させるには,さらに高い高温強度が必要となっています.
 本研究室ではTiAl合金の高温強度向上のため,その微細な完全層状組織と高温強度の関係を解明し,さらに強度向上に向けた微細組織制御の指針を得ることを目的として研究を行っています.
 


Fig. 2-a. 自動車ターボチャージャー用の
TiAl合金製タービンホイール(右側の羽根車)

Fig. 2-b. a2/g 層界面の高分解能透過型電子顕微鏡による原子像.完全層状組織中には,界面転位の存在する不整合な界面(左)と界面転位の存在しない整合な界面(右)がある.
   

主な研究テーマ
・TiAl合金の微細組織制御および高温クリープ特性評価
・層状組織TiAl合金の第三元素添加による層界面構造制御と降伏強度向上
 
これまでの研究成果
 TiAl合金では,a2-Ti3Alとg-TiAlの2相層状組織を持つ合金は機械的性質に優れています.当分野では,この材料の強度向上を目指して,組織設計の基本指針を研究してきました.その結果,g/a2層界面の原子構造制御(Fig. 2-b)が室温強度向上に有用であること,層状組織の方向制御で,高温での寿命が100倍も向上すること(Fig. 2-c)などを明らかにしてきました.それらの成果を2回の国際会議で招待講演として報告するとともに,「第13回材料強度国際会議(ICSMA 13, 2003)」では,これまでの成果をまとめて基調講演しています.
TiAl合金のクリープ変形速度に対する層状組織の配向の影響
Fig. 2-c. TiAl合金のクリープ変形速度に対する層状組織の配向の影響
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高Crフェライト系耐熱鋼 高温プラント構造材料

 環境問題が深刻化する今日、地球温暖化の原因となるCO2排出量の削減が必要となっています。大きな削減量が期待できる発生源として火力発電所が注目されており、その発電効率を5%向上させると日本のCO2排出量が3%削減できると報告されています。発電効率の向上には操業蒸気条件の高温高圧化が必要であり、現在そのような条件に耐えうる大型構造材料として高Crフェライト系耐熱鋼が注目されています。
 本研究室では高Crフェライト系耐熱鋼およびその溶接熱影響部における高精度な寿命予測に必要な要素を得るため、詳細な破断メカニズムの解明を目指して研究を行っています。
 
火力発電所の蒸気管
Fig. 3 火力発電所の蒸気管
主な研究テーマ
 ・高Crフェライト系耐熱鋼の溶接熱影響部におけるキャビティ生成メカニズムの解明
 ・長時間クリープ強度に及ぼすMX炭窒化物の影響の究明
 
これまでの研究成果
 火力発電プラントでは,コスト削減と同時に,破損を未然に防ぎ安全を確保することが不可欠です。それを達成するには,高温プラント部材の損傷機構を解明し,破壊予知や防止に応用する必要があります。当分野では,種の組織キャラクタリゼーション手法(TEM,SEM,SEM-EBSP,ナノインデンテーションなど)を駆使して,先進高Cr系フェライト鋼溶接部のタイプIV破壊の解明を行っており,非破壊的損傷評価に関して興味深い成果を得ています。また,「材料リスク情報プラットフォームの開発に関する研究」(日本鉄鋼協会安全率・許容応力設定調査委員会,丸山公一主査)に参加し,材料損傷評価の高度化や許容応力の合理的設定にも貢献しています。
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遮熱コーティングシステム
 
 環境問題、エネルギー問題に対応するためガスタービンの高温化が指向されるなかで、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating; TBC)の役割が増大しています。TBCは金属表面への熱負荷を低減するために高温部品表面に施され、ガスタービン(Fig. 4)、ジェットエンジンの燃焼器、静翼、動翼などに適用されています。しかし、長時間の使用においてTBCはき裂発生や剥離などの損傷を生じ、基材にまで有害な損傷が発生する事が問題となっています。本研究室ではTBCの信頼性向上のため、損傷劣化要因を解明することを目的として研究を行っています。
 
TBCを施したガスタービンロータ
Fig. 4 TBCを施したガスタービンロータ
主な研究テーマ
 ・Ni基超合金上MCrAlY/YSZコーティングの熱負荷による組織変化
 ・遮熱コーティングの剥離に及ぼす熱サイクルと酸化物の影響
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 多孔質材料は粉末冶金焼結法や溶解・鋳造法などによって製造されており,軽量金属材料の一つとして注目されています。これらの多孔質材料では,複雑形状を有する微細孔が応力負荷時のクラック発生源となるため機械的強度に優れているとはいえません。もし機械的強度に優れた多孔質材料ができれば,軽量構造材料にとどまらず,その多孔性,巨大表面積を利用して未知のフィルターや電極材料,医療材料などの開発につながる可能性があります。これまでに,ポアを繊維のように一方向に揃えて強度向上を図ったロータス (レンコン) 型ポーラス金属が開発されており (Fig. 5),室温における研究が盛んに進められています。
 本研究室では,ロータス型ポーラス・マグネシウムを用い,高温下でのクリープ挙動や変形のメカニズムを調査しています。この研究は,大阪大学産業科学研究所の中嶋研究室と共同で行っています。
 

Fig. 5 ロータス型ポーラス・マグネシウムの微細孔形状.(a)断面の光学顕微鏡写真, (b)模式図
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 金属間化合物の一つであるFeAlは、B2構造と呼ばれるBCC構造を基本とした最も単純な結晶構造の金属間化合物です。しかも、最も豊富な金属資源である鉄とアルミニウムからできた化合物です。しかしこのFeAl金属間化合物は、鉄にもアルミニウムにも見られない、奇異で特異な材料性質を持っていることがよく知られています。その一つは降伏応力の温度依存性であり、もう一つは原子空孔の熱的挙動にあります。
 そこで本研究室では、FeAl金属間化合物の物性解明の基礎研究と、それを利用したナノテクノロジーへの応用研究を行っています。
 


Fig. 6 FeAl単結晶表面のナノ自己パターンニング.DからFは表面ポアーの模式図.
 
主な研究テーマ
・降伏応力の逆温度依存性発現メカニズムの解明
・表面のナノ自己パターニングとナノタンパク質の固定化
 
これまでの研究成果
 一般的に金属の降伏応力は、温度の上昇にともない徐々に低下します。しかしこのFeAlは、400℃から600℃の温度範囲で、温度の上昇とともに降伏応力が増大します。この現象は降伏応力の逆温度依存性と呼ばれ、FeAl以外にもNi3AlやTiAlなどで発現することが知られています。Ni3AlやTiAlでは、降伏応力の逆温度依存性が発現する原因として、Kear-Wilsdorf (K-W) 機構と呼ばれる転位メカニズムが明らかとなっています。FeAlでは発現メカニズムの一つの可能性として、Yoshimi's Decomposition Schemeと呼ばれる転位分解メカニズムが考えられていますが、詳細は未だにわかっていません。そこで本研究室では、FeAl単結晶の変形と透過型電子顕微鏡による変形組織の観察などを通して、降伏応力の逆温度依存性発現メカニズムの解明に向けた基礎研究を続けています。一方、このFeAlは、融点(約1300℃)近くの高温で熱空孔濃度が10%近くに達することが理論的に予測されています。金属間化合物中の熱空孔は、その規則構造に由来して移動速度が遅いため、FeAl中の異常な濃度の熱空孔は急冷処理によって簡単に凍結できます。本研究室では、過飽和に凍結した熱空孔を時効熱処理すると、それらが消滅する過程で自己組織化し、試料表面にナノサイズの大量のポアーが生成することを発見しました。そこでこの原理に基づいた、試料表面のナノ自己パターニング(Fig. 6)に関する基礎研究を行っています。さらにこのナノポアーを利用した磁性材料の自己組織化の研究を本学金属材料研究所と、またナノタンパク質の配向を制御しながら固定化するための研究を同生命科学研究科とそれぞれ共同で行っています。
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 金属間化合物の一種であるNiAl、CoAlは、FeAlと同様、B2構造と呼ばれるBCC構造を基本とした最も単純な結晶構造の金属間化合物です。融点はいずれも1600℃以上である一方、耐酸化性に優れ、軽量高温材料としてたいへん注目されています。ところが、これまで異常な熱空孔挙動についてはFeAlでよく知られていましたが、NiAl、CoAlではほとんどわかっていませんでした。
 そこで本研究室では、NiAl、CoAlの熱空孔挙動に関する基礎研究と、より高温で利用可能なナノ自己パターン表面の開発に関する応用研究を行っています。
 

主な研究テーマ
・急冷凝固NiAl、CoAl中の熱空孔挙動
・ナノポーラスNiAlの高温触媒機能
 

Fig. 7 800Kで時効熱処理したCoAl急冷凝固薄帯の内部組織(透過型電子顕微鏡像).
これまでの研究成果
 NiAlやCoAlは、FeAlと同様、B2構造の遷移金属アルミナイドです。NiAlやCoAlの熱空孔挙動はこれまで、第一原理計算による理論的予測程度しか行われておらず、FeAlのような実験に基づいた材料学的取扱いはほとんど皆無でした。そこで本研究室では、NiAlやCoAlの急冷凝固体を作製し、格子定数の精密測定による過飽和空孔濃度の見積りや熱分析による過飽和熱空孔の凝集過程の調査、さらには透過型電子顕微鏡による過飽和熱空孔の自己組織化について研究してきました。その結果、NiAlやCoAlでも大量の熱空孔が凍結されている事実が明らかとなりました。このことは、NiAlやCoAlもFeAlと同様、高温では極めて高い熱空孔濃度であることを示しており、B2構造の遷移金属アルミナイドの物性解明に大きな前進をもたらしました。さらに、時効熱処理による過飽和熱空孔の自己組織化の結果、Fig. 7に示すように、数ナノメーターの超微細なボイドの形成が確認されました。この超微細なボイドは熱に対して極めて安定で、NiAlやCoAlがFeAlに比べて拡散性が低いこととよく一致していました。このような超微細なナノ構造を利用して、高温触媒等への応用研究を〔独〕物質・材料機構(つくば)と共同で行っています。また、NiAlやCoAl急冷凝固体の作製に関しては、本学工学研究科と共同で行っています。
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 ジェットエンジンや発電プラントのタービンブレードは、ニッケルとNi3Al金属間化合物の二相合金、いわゆるNi基超合金でできています。エネルギー変換効率には部材の耐熱特性が大きく影響しますが、Ni基超合金は融点が1400℃ほどであり、すでに耐熱限界に達していると言われています。そこで、より高効率なエネルギー変換システムを創出するために、Ni基超合金よりも高温で使用可能な「超」高温耐熱材料の開発が切望されています。
 本研究室では、現在提案されている超高温耐熱材料の中で、最も高い降伏応力を有する合金系を発見しました。それがMo-Si系合金です。現在、このMo-Si系合金を効率的に合成する加工プロセスと、得られた材料の耐熱特性を超高温(1400℃以上)で評価する研究を進めています。

主な研究テーマ
・粉末焼結法によるMo-Si系合金の合成と組織制御
・Mo-Si系合金の超高温耐熱特性(超高温圧縮・クリープ強度、超高温耐酸化特性等)
 

Fig. 8 超高温耐熱材料の降伏強度の温度依存性.
これまでの研究成果
 Mo5SiB2金属間化合物とMoによる二相合金は、Fig. 8で示すように、現在提案されている超高温耐熱材料の中で最も高い高温降伏応力を有することが見出されました。このいわゆるMo5SiB2/Mo in-situ Compositeは、母相が硬質なMo5SiB2相、分散相が延性に富んだMo固溶体相であるため高強度な上に靭性も比較的高く、次世代の超高温耐熱材料としてたいへん期待されています。しかしこの合金は融点が2000℃を越えており、しかも難加工性であるため、いかにして大型部材を効率的に作製するか、その加工プロセスが問題となっています。そこで本研究室では、粉末焼結法に基づいたMo5SiB2/Mo in-situ Compositeの加工プロセスとそれによる組織制御に関する研究を進めています。Mo5SiB2/Mo in-situ Compositeのもう一つの問題点として、超高温下での耐酸化性の劣化があります。この問題を解決するには、耐酸化コーティング以外にありません。そこで本研究室では、MoSi2金属間化合物ベースの耐酸化性に優れた合金を開発し、プラズマ溶射コーティングへと展開しています。一方、Mo5SiB2/Mo in-situ Compositeの持つ超高温耐熱特性のポテンシャルは、まだ十分に明らかになっていません。そこで本研究室では、Mo5SiB2/Mo in-situ Compositeの超高温圧縮強度やクリープ強度とその変形メカニズムの解明、そして強度特性をさらに向上させるための合金設計と組織制御に関する研究も進めています。
 これらの研究は、本学金属材料研究所、北海道大学エネルギー変換マテリアル研究センター等と共同で行っています。
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このテーマは、現在公開することができません。
申し訳ございませんが、詳しくは吉見助教授まで直接お問い合わせください。
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 生物由来の材料には、現代の科学技術の粋を集めても作り出すことのできない、超高性能な材料が数多くあります。真珠はその代表的なものの一つで、真珠貝と呼ばれる貝類が作り出す炭酸カルシウムと有機物の複合材料です。真珠は高強度で、しかも高靭性という極めて優れた機械的性質を持つ一方、装飾品として珍重されるように美しい光沢を放つ不思議な光学的性質を持っています。しかし、これらの性質は材料科学的にはほとんど解明されておりません。
 そこで本研究室では、田崎真珠(株)から提供されたマベ真珠を対象に、微細構造と機械的性質や光学的性質とのかかわりについて基礎的研究をしています。

主な研究テーマ
・マベガイ真珠層中におけるアラゴナイト結晶の積層構造と配向性

 

Fig. 10 マベガイ真珠層表面の走査型電子顕微鏡像.
これまでの研究成果
 真珠層は、炭酸カルシウムの一種でありアラゴナイトとタンパク質による複合材料です。タイル状のアラゴナイト結晶が、タンパク質膜を接着剤にして積層構造となっています(Fig. 10)。これまで、アラゴナイト結晶のタイル板面方向がある特定の結晶方位となっていることは、すでに知られていました。本研究室ではさらに、装飾品として価値のある優れた光沢の真珠層では、タイル状結晶が面内方向にも強く配向していることをつきとめました。この結晶成長メカニズムとして、接着剤の役割を果たしているタンパク質膜の分子構造に対して、ある特殊な条件下でアラゴナイト結晶がエピタキシャル成長しているものと考えました。もしこの推論が正しければ、私達は人工的に分子構造を制御し、優先的にアラゴナイト結晶をエピタキシャル成長させることによって、優れた光沢を持つ人工真珠層が創製できるようになるかもしれません。また、この技術は単に真珠の合成のみならず、さまざまな生体材料の創製につながるものとして期待を寄せています。
 これらの研究は、田崎真珠(株)、本学生命科学研究科、Bruker AXS K.K.、長崎大学大学院医歯薬学総合総合研究科と共同で行っています。
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 液体金属を急冷凝固によって過冷却すると、非晶質化することがあります。非晶質化した金属はアモルファス合金、または金属ガラスと呼ばれ、これまで多くの合金系で金属ガラスになるものが見つかっています。金属ガラスは、金属多結晶体と異なり結晶粒界がないため高強度で耐食性に優れており、新しい金属材料としてたいへん注目されています。金属ガラスは転位の活動がないため一般的に極めて脆性的ですが、近年、いくつかの金属ガラスで塑性変形するものが見つかっています。さらに、金属ガラスの多くが高い破壊靭性値を持っています。このように、金属ガラスの変形と破壊は、まさにミステリアスです。
 そこで本研究室では、金属ガラスの変形と破壊のメカニズムを解明するための基礎研究を行っています。
 

Fig. 11 引張破断後に観察されたZr-Al-Ni-Pd金属ガラスの試料表面の共焦点顕微鏡像.
主な研究テーマ
・Zr-Al-Ni-CuおよびZr-Al-Ni-Pd金属ガラスの変形と破壊


これまでの研究成果
 Zr-Al-Ni-PdとZr-Al-Ni-Cu金属ガラスは、室温で異なる圧縮変形挙動を示します。Zr-Al-Ni-Cu金属ガラスは、シリカガラスのようにまったく塑性変形せずに破壊します。ところがZr-Al-Ni-Pd金属ガラスでは、多くのShear Bandsを発生させながら巨大な塑性伸びが発現します。そこで本研究室では、Zr-Al-Ni-PdとZr-Al-Ni-Cu金属ガラスの引張変形挙動について比較調査しました。その結果、Zr-Al-Ni-Pd金属ガラスではShear Bandsを伴いながら(Fig. 11a)、わずかに塑性伸びを発現することが見出されました。その際の特徴的な点として、Fig. 11bに示すように室温であるにもかかわらず、試料表面の破断部近傍で粘性流動によって塑性変形した証拠となるViscous Flow Depression (VFD) Zoneが観察されました。Zr-Al-Ni-Cu金属ガラスではこのVFD Zoneはまったく観察されず、このことが塑性変形能の違いになっているものと考察されました。
 これらの研究は、本学金属材料研究所、同学際科学国際高等研究センターと共同で行っています。
 
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 地球環境問題が叫ばれる昨今、自動車メーカー各社は高張力鋼板やアルミニウムを用い軽量化を行い燃費効率の向上を推し進めています。自動車では10%の軽量化により5%の燃費効果が得られると言われています。本研究室ではアルミニウムよりもさらに軽量(密度1.74)で比強度にも優れるマグネシウムに注目し、自動車でも特に重量のあるエンジン部材へ適用させるため、マグネシウム合金の高温強度向上を目指しています。そのためにはマグネシウム合金が高温でどのように変形や破壊をするのか把握することが必要です。
 本研究室では、高温でのクリープ試験や疲労試験などの機械試験を行いマグネシウム合金の変形・破壊挙動を解明し、組織制御によって高温強度を向上させるための指針を得る試みを行っています。
 
 

Fig. 12a Mg合金を多用したハイブリッドカー
 


Fig. 12b 燃費100 km/lを達成したディーゼルエンジンカー



Fig. 12c Caを添加し,組織を変化させることで最高1000倍程度の高強度化が可能なMg-Al-Ca系チクソモールディング®材
研究テーマ
 ・WE54マグネシウム合金の高温低サイクル疲労
 ・Mg-Y系合金の高温クリープ下での固溶原子による強化機構
 ・Mg-Al-Ca系Thixomolding®材の高温クリープ挙動に及ぼす第2相の影響
 ・摩擦攪拌加工(FSP)を施したMg-Al-Ca系Thixomolding®材溶接部の微細組織と機械的性質
 
これまでの研究成果
 Mgは密度が1.74Mg/m3と実用材料中最も小さいことから,自動車・飛行機等の輸送媒体に使用することで輸送速度の増加ならびに燃費の軽減に貢献します(Fig. 12a, b)。六方晶構造のMgは室温での加工性に乏しいために軽量性ではAlに優位性を持ちながら,これまで利用されることは殆どありませんでした。しかしながら近年結晶粒径を微細化することでその加工性が大幅に改善されることが報告され,自動車産業への応用の期待が大幅に高まっています。Mg合金の自動車への適用部位は加工を必要とするボディ部と,車両重量の大半を占めるエンジン回りの高温部位とに分けられ,前者は室温強度と加工性,後者は高温での強度が重要であり,求められる性質が異なります。Fig. 12cにMg-Al-Ca系合金(チクソモールディング®材)の高温強度を示します。この材料は粒界を第二相が連続的に被覆するという特異な形態を持ち,この組織を安定化することによって強度は最高で1000倍近く増加します。これらの成果は国内外の学会等で発表されております。
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 アルミニウムは軽量であることに加えて、省エネルギーの面から考えてリサイクルの優等生ともいえます。しかし、アルミニウムのリサイクル・プロセス中において、Feなどの不純物が再溶解の際に混入してしまい、問題となっています。この不純物がAl合金の機械的特性を低下させ、もとの製品として使用するのを困難にしてしまいます。この原因として考えられるのは、組織中に分散しているFe-Al系の針状の析出物であり、現在これらの影響を抑制するために多くの不純物除去技術や不純物無害化技術が考案されています。
 本研究室では、不純物無害化に注目して適切な熱処理や加工処理を施すことで、FeをFe-Al金属間化合物として微細に分散させ、不純物の影響を抑えてFe許容量を拡大させる研究に取り組んでいます。
 

研究テーマ
 ・アルミニウムリサイクルにおける有害不純物の影響とFe-Al金属間化合物の有効循環利用
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東北大学大学院環境科学研究科・工学部材料総合学科 丸山研究室