自動車の中で活躍する“固体イオニクス材料”とは?

固体イオニクス材料は、自動車を環境にやさしいクリーンな乗り物にするために活躍しています。固体イオニクス材料とは、固体の中をイオン(電荷を帯びた原子)が動く材料全般のことです。この“イオンが動く”性質を利用すると、酸素を貯めたり放出したりする材料や電子は流れずイオンのみが流れる材料が実現できます。このような材料は、ガソリン、ディーゼル車の排気ガス浄化システムやハイブリット車、電気自動車に搭載されているLiイオン電池に使われています。

 自動車の排気ガス浄化システムでは、酸素を貯めたり放出したりできる酸素吸放出材料が浄化触媒として使われています。排気ガス浄化触媒は、エンジンでの燃焼が理論空燃比(最も燃焼効率が良い酸素/燃料比)のとき浄化率が最大となります。しかし、空燃比は自動車の走行状態によって変化するため、触媒近傍のミクロな領域で理論空燃比を維持する必要があります。ここで活躍するのが酸素吸放出材料です。この材料は走行状態による空燃比の変動に応じて酸素を吸収、放出することで理論空燃比を保つ機能があり、走行状態が変化しても高い浄化率で有害ガスを無害化することができます。現在はCeO2-ZrO2系が使われており、低温での酸素吸放出能の向上を目指して研究が行われています。

 Liイオン電池には、Liイオンのみを通し電子は通さない電解質が使われています。この電解質は化学反応によって生じるLiイオンと電子の経路を分けることで、化学エネルギーと電気エネルギーを変換する役割を担っています。現在使われているLiイオン電池には液体電解質が使われており、安全性向上のため液体の代わりに固体電解質を用いた全固体Liイオン電池が盛んに研究されています。たくさんの電気エネルギーを取り出すため、Liイオンがより高速で動ける材料設計と開発、それらを用いた電池の性能評価を行っています。

自動車の排気ガス浄化触媒と酸素吸放出材料
全固体リチウム電池の充放電特性と断面の電子顕微鏡像