材料を“くっつける”技術の大切さとは?

 自動車に限らず、新幹線や船など人や物を輸送する機器では、快適性と安全性が強く求められます。同時に、二酸化炭素の排出量削減も求められており、このような機器向けに、さまざまな軽くて強い材料が開発されてきています。一般に、新しい機能や特性を示す材料を作るには、元素の配合比、熱や力の加え方などを巧みに制御する必要があります。日本の材料メーカは、オンリーワンの技術を用いて、軽くて強いさまざまな自動車向け材料を開発し、世の中に製造・販売しています。

 しかし材料が開発されたとしても、それらを組み合わせて“かたち”にしなければ、自動車や工業製品にはなりません。つまり、さまざまな材料を“くっつける”技術、言い換えれば、さまざまな材料を接合する技術が求められます。実際、自動車の製造には、抵抗スポット溶接という点接合法が用いられ、薄い金属板を複数枚重ねて、点で接合されています。その数、車一台当たり3000点から5000点。運転中、接合部分が壊れては重大事故につながりますので、接合部分には高い信頼性が求められます。しかしながら、一般的に材料を接合するときには大きな熱を加えるため、材料製造時に作り込まれた機能や特性が劣化してしまいます。特に最近開発された材料ほど機能や特性の劣化が著しく、実用化の妨げになることもあります。

 接合による機能や特性の劣化は、作り込まれた材料に大きな熱を加えることに起因するため、最近では材料に加える熱を減らし、溶かすことなく接合する技術が開発され、自動車等の工業製品の製造に利用され始めています。その結果、“くっつける”ことが難しい高性能な開発材料を自動車で使えるようになり、快適性や安全性に優れ、環境に優しいSmart Carの開発へつなげることができます。

溶かさない接合法、摩擦攪拌接合により鋼板を接合している様子。摩擦攪拌接合は、自動車向け軽量材料の接合やロケット燃料タンクの製造に利用されている。

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