複雑なマルチマテリアル製品のためのリサイクル技

 近年、性質が大きく異なる構造材料を適材適所で組み合わせ、総合的に優れた特性を有する部材や製品を作り出すマルチマテリアル化が国内外で進んでいます。例えば、最新の自動車は40,000もの異なるパーツから成り、それらのパーツには鋼、アルミニウム、銅、亜鉛、樹脂、半導体、レアアース等が用いられています。また、当然ですが、車は経済的で速くて安全であるべきです。ゆえに、軽くて高強度の材料から作られなければなりません。このため、下図に示すように、鋼に代わってアルミニウムやマグネシウムというより軽くて強度の強い合金を車に利用する傾向が強まり続けています。近年の日本では、車一台あたりのアルミニウム使用量は約15%でありますが、将来的にはより多くの量が利用されることが予想されています。

 さて、この車をリサイクルするにはどうすれば良いでしょうか。

 車のリサイクルは経済的でなければならないため、車のボディーを自動で小さいスクラップ片へと解体し、それらを材料毎に分離しますが、一つ一つ完全に分離することは不可能です。つまり、スクラップは常に不純物を含んでおり、車の材料がより複雑になるにつれその含有量は増加していきます。従来はこのスクラップを再利用するために、純度と値段が高いアルミニウムを混合させることで不純物濃度を低くし、利用されてきました。また、スクラップからアルミニウムを製造した場合、鉱石から製造した場合の3%しかエネルギーを必要としません。この差が、アルミニウムスクラップをリサイクルする技術開発の大きなモチベーションとなっています。

 研究室では超音波や電磁場、プラズマ、それらを融合するというような物理的な場を使うことで、アルミニウム合金中からの数多くの有害な不純物を除去し、無害化する環境調和型の方法を開発し、スマートカーのような複雑なマルチマテリアル製品に対する次世代のリサイクルや廃棄物低減システムの開発に貢献します。

自動車の生産に必要な素材 (米国エネルギー省(EIA))

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