私たちの社会を支えている鉄は、建物や橋、自動車、電車など、さまざまな場所で使われています。しかし鉄を作るときには大量のエネルギーが必要で、その結果として二酸化炭素(CO2)が排出されます。実は、世界のCO2排出量の約7%、日本では約13%が鉄鋼業に関係しています。これは、鉄の原料である鉄鉱石(酸化鉄)を金属の鉄に変えるときに、石炭などの化石燃料を使うためです。そのため、地球温暖化を防ぐためには、鉄の作り方を変えることが重要な課題になっています。
日本の鉄鋼製造技術は世界でもトップレベルで、非常に効率よく鉄を作ることができます。現在主流となっている方法は高炉―転炉法と呼ばれ、鉄鉱石から最終製品までを一貫して作るプロセスです。では、鉄を作りながらCO2排出を減らすには、どのような方法があるのでしょうか。
①バイオマスを利用する方法
1つ目は、石炭の代わりにバイオマスを使う方法です。バイオマスとは、木材などの植物由来の資源のことです。これらは成長するときにCO2を吸収するため、燃やしても大気中のCO2の総量が変わらないと考えられています。例えば、ブラジルでは木炭を使った製鉄が実際に行われています。しかし、日本を含む東アジアの国々では、鉄鋼生産量に比べてバイオマス資源が少ないため、すべてをバイオマスで置き換えることは難しいという問題があります。
②水素を使う方法
2つ目は、炭素の代わりに水素を使う方法です。従来の製鉄法ではCO2が発生しますが、水素を使うと水(H2O)ができるだけで、CO2は発生しません。そのため、水素製鉄はカーボンニュートラルの有力な方法と考えられていますが、いくつかの課題もあります。
- ・ 水素による反応は熱を吸収するため、熱の供給が必要になる
- ・ 水素で還元すると、原料の鉄鉱石が粉々になりやすい
- ・ 鉄を溶かして不純物を取り除くには、炭素が必要になる
③CO2を回収して再利用する方法
3つ目の方法として、炭素を使った製鉄を続けながら、発生したCO2を回収してグリーンなエネルギーを用いて再利用する方法も研究されています。これは「炭素循環製鉄」と呼ばれています。その例として下図にCRIP-Dのプロセス図を示します。発生するCO2をH2でCOに改質し、COを鉄と反応させて固体の炭素として回収するプロセスです。詳細は研究室のHPをご覧ください。
このように、製鉄のカーボンニュートラル化を実現するために、世界中でさまざまな研究や技術開発が進められています。鉄は社会を支える重要な材料であり、環境にやさしい製鉄技術の開発はこれからの大きな課題です。