体の中で活躍する金属系バイオマテリアル

 総人口の28.4%が65歳以上(2019年、総務省人口推計)という超高齢社会に突入した日本はもちろん世界的にも高齢者人口は増加の一途を辿っています。これらを背景に2019年の世界医療機器市場は50兆円を越え、今後益々増加することが確実視されています。

 事故や疾病によるものも含めて、生体機能の低下や喪失に苦しむ高齢者の「生活の質の維持」のために、失われた生体機能を再建するための医療技術への関心が高まっています。特に人工関節、人工歯根や血管内ステント(写真2)などの生体内で使用される医療器具(インプラント)は日本の政策でもある「健康寿命の延伸」の達成にも関係しています。インプラントの更なる高機能化・高安全化を図るためには、それらを構成するバイオマテリアルにまで遡った検討が必要です。

 整形外科分野のインプラントの9割に金属系バイオマテリアルが使用されています(写真1)。金属製インプラントの優位性はどこにあるのでしょうか?生体内という、破損した場合に取り出すことが容易ではない領域で用いられるインプラントには、金属材料の有する優れた強度と延性に代表される信頼性・耐久性が必要とされます。

 金属系バイオマテリアルにはチタン、コバルト-クロム合金、NiTiなどがあります。チタンは骨と結合する特性、オッセオインテグレーション、を有しているので人工関節や人工歯根に、コバルト-クロム合金やNiTiはステントに用いられています。

 金属系バイオマテリアルはインプラントの機能向上・安全性向上を通して、「生活の質の維持」と「健康寿命の延伸」に寄与することが期待されています。

金属系バイオマテリアルの応用領域と特徴(写真1)
血流確保を目的に血管内に留置されるNiTi製ステント(写真2)

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