健康を支える生体材料ってなに?

 「いつまでも元気に暮らしたい。」古来より人類が追い続けている問いの一つではないでしょうか?歴史をさかのぼれば、既に、古代ギリシアやローマでは、失った歯の代わりに人工物を利用する治療が行われていたといわれています。また、日本でも、16世紀頃には、仏像を彫る技術を活用して、木製の入れ歯が作られていたようです。食事という健康に生きるために必須の日常生活も、材料やその加工技術に支えられてきました。このように、「健康を支えるのは医学だけではない」という事実は、ほかにもたくさんあります。例えば、骨折した骨を元に戻すために、金属製の生体材料を用いて骨を固定する治療があります。さらに、体内で分解されてなくなるプラスチック製の生体材料を用いることで、骨が治った後に材料を取り除く手術が不要になる方法も開発されています。このように、医学だけではない、様々な分野の研究者による飽くなき探究がもたらした、薬や医療機器の進歩によって、私たちの健康は、より高度に守られています。一方、こうした医療の進歩があっても、死亡原因の上位は、ガン、血管の病気を原因とする心臓や脳の病気が占め、過去20年以上にわたって変化がなく、さらなる探究の必要性が認識されています。

 では、今後、どのような探究が望まれるのでしょうか?確実にいえることは、これらの病気を深く理解すること、そして、その理解に基づいて新しい治療方法を開発することです。このために、これまでにはなかった新しい生体材料を生み出していくことが必要不可欠です(下の写真はその例です)。生体材料も20年前までは人工臓器が主流でしたが、再生医療への応用を皮切りに、病気の研究など、これまでとは違う用途で、世の中で急速に発展しようとしています。

 このように生体材料は、古来から健康を支えてきた、そして、今後も支えていく、そんなチカラをもっています。

がんに関連した新しい生体材料の例。刺激応答性の生体材料を用いて作製した体外でがん組織を再現するモデル。
がんに関連した新しい生体材料の例。がん細胞へ効率よく薬(赤色)を送り込む高分子材料。