材料の変態を使ってデータを記録する?

 超スマート社会:Society 5.0の実現に向け、IoTを介して人とモノが繋がる事で様々なデータが共有されるようになっています。今後、それらデータ量は加速的に増えていく事は間違いありません。あらゆるデータは、メモリと呼ばれる半導体デバイスに蓄積されますが、高度な情報化社会を支えるために、不揮発性型のメモリ(コンピュータの電源を切ってもデータが消えない!)の性能UPが益々必要になってきています。将来的には、それぞれのデバイス端末に人間と同様に学習することでどんどん賢くなる知識データが組み込まれ、ネットワークにアクセスしなくても良いペタバイト級(人間の脳の記憶容量に匹敵)のヒューマンメモリ時代が到来するかもしれません。

 現在、フラッシュメモリと呼ばれるデバイスが不揮発性型のメモリの主役になっていますが、その記憶容量が原理的に限界に達しつつあるとも言われています。また、膨大なデータを処理するには相当の電力が必要になってくるため、不揮発性メモリ動作の省エネ化も重要な課題となっています。

 最近、“相変化メモリ”と呼ばれるメモリが新しい不揮発性型のメモリとして注目されています。皆さんもご存知の様に、水は0℃以下で氷に、100℃以上で水蒸気に変化します。このような物質の状態の変化を“変態”と呼びます。この変態現象は、金属材料や半導体材料、絶縁体材料でも起こります。相変化メモリは、ある特殊な半導体材料中の変態によって引き起こされる電気抵抗の変化を利用してデータを記録する事が出来ます。材料自身の変態を利用する極めてシンプルな動作原理であるため、大記録容量化(データを記録する素子一つ一つを小さく作れるので、多くのデータを記録できる!)や動作電力の省エネ化を実現できる革新的なメモリです。

相変化メモリ素子の模式図。中央は透過電子顕微鏡で観察した実際のメモリ素子の断面。相変化材料の変態を通してメモリ層が高抵抗になったり低抵抗になることで情報を記録。