未来の航空機を支える磁性材料とは?

 皆さんは将来、飛行機がエンジンではなくモータで飛ぶ時代がやってくることをご存知でしょうか?近年、CO2排出量の少ない次世代航空機として「電動航空機」に注目が集まっております。既にボーイング社やエアバス社などの海外メーカーでは、2020年代初頭にエンジンとモータの両方で飛行する「ハイブリッド航空機」の試験飛行を計画しており、日本でもJAXAにより研究開発が行われております。また航空機だけでなく、最近よく耳にする小型飛行体「ドローン」についても「空飛ぶ自動車」が試作されるなど、未来の移動技術として研究開発が進められております。

 皆さんは、これら未来の飛行体を支える重要な材料をご存知でしょうか?それは「磁性材料」です。磁性材料とは、いわゆる「永久磁石(ハード磁性材料)」だけでなく、鉄などの「ソフト磁性材料」も含まれます。普段は目につかないところに使われているため気づきにくいのですが、磁性材料が無ければモータが動かないばかりか、電圧を変換することもできず、身近なスマートフォンやハイブリッド自動車なども動作しません。

 現在世界最強の永久磁石であるネオジム磁石(Nd-Fe-B系焼結磁石)は東北大学で博士号を取られた佐川眞人博士により発明され、ハイブリッド自動車やドローンのモータなどに用いられております。また、日本の鉄鋼メーカーが製造する高性能なソフト磁性材料である珪素鋼板も、モータや変圧器などに欠かせない材料です。さらに、ドローンなどのIoT機器が他の電磁波と干渉して誤作動しないようにするためには、不要な電磁波を吸収するシート(電磁波吸収体や電磁ノイズ抑制体)が必要となりますが、そのシートにも磁性微粉末が利用されております。

 このように、磁性材料は未来の航空機を支えるキーマテリアルであり、磁性材料を中心とした技術は、電気自動車や自動運転技術、さらに介護ロボットなどの産業でも欠かすことのできない重要な技術となっております。

ネオジム(Nd-Fe-B系焼結)磁石
電磁波吸収シートに利用可能な磁性粉末