新たな宇宙ステーションの建設、そして宇宙社会の実現に向けて

 宇宙旅行は古くからの人類の夢ですが、SPACE X、Blue Origin、インターステラテクノロジズなど、民間企業の宇宙参入も相次いでおり、宇宙がより身近な存在となりつつあります。さらに近年、宇宙社会の実現に向けた国際的なプロジェクトも始まっています。このプロジェクトでは、月の周回軌道上に宇宙ステーション「ゲートウェー」を建設し、月面基地の建設や火星への飛行を目指すことが構想されています。この実現には様々な技術革新が必要ですが、その中の重要技術の一つに地球から宇宙に安全に人や物資を届けるテクノロジーの確立があります。日本でもロケットを開発しており、高い安全性と信頼性を実現していますが、その中でも重要な役割を担うのが、様々な部材の非破壊検査技術です。非破壊検査は、“物を破壊せずに検査する技術”のことで、工業分野で機械・構造物の信頼性を高めるために幅広く利用されています。例えば、固体ロケットブースターの固体燃料(過塩素酸アンモニウムとアルミニウムを合成ゴムに混ぜて固めたもの)の検査もその一つです(写真1)。固体ロケットブースターは、固体燃料を使用するロケットエンジンであり、これをロケット本体に取り付けることで、宇宙空間に到達するために必要な大きな推進力が得られます。この固体燃料の検査は信頼性を保証するために必要不可欠ですが、これを高い信頼性と低コストで両立できる方法として、超音波を用いた計測法が注目されています。研究室では、これをより高い精度で実現するため、低周波超音波フェーズドアレイ映像化技術の開発にも挑戦しています(写真2)。

国産H3ロケット(写真1)
研究室で開発した低周波超音波フェーズドアレイセンサ(写真2)