超高温材料

 私たちは,今や飛行機で世界中を飛び回る世の中を生きています.今後は,宇宙に行くことも当たり前になるかもしれません.超高温材料は,空を飛ぶ,宇宙に行くといった人類の夢を実現するためになくてはならない材料です.

 例えば,空を飛んだり宇宙に行くためには,膨大な位置エネルギーや運動エネルギーを必要とします.こういったエネルギーは燃料の燃焼エネルギーよって得られますが,このエネルギー変換を行なっているのがジェットエンジンやロケットエンジンです.これらエンジン用材料は,超高温状態に加熱されますが,エンジンの効率はこの高温化によって向上します.また,エンジン自体が軽くなれば,さらに効率は向上します.エンジン効率の向上は,低燃費になると同時に,二酸化炭素の排出量が低減します.そのため,超高温で強く(高融点),且つ,軽い(低比重)といった特性がエンジン用材料には求められます.

 

 現在,エンジンに使用される材料は主にFe(鉄)やNi(ニッケル),Ti(チタン)などの合金です.しかしこれら合金の融点は1600 ℃以下であるため,持続可能な循環型社会の実現に向けてより高融点で耐熱性能の高い合金=超高温材料の開発が求められています.

 そこで当研究室では,次世代のエンジン用超高温材料としてMo(モリブデン)合金の研究を行なっています.Moは金属の中でも特に高融点(2623 ºC)で,比較的低比重(10.2 g/cm3)です.私たちは,TiC(炭化チタン)などの化合物を加えたMoSiBTiC(モシブチック)合金を自ら開発し(写真1),その優れた材料特性を明らかにするための研究をしています.最近の研究で,この合金は高温でもセラミックス並みに強く,Fe合金やNi合金並みに軽いという超高温材料に必要不可欠な特性を有していることがわかってきました(写真2).

 超高温という極限環境下で材料の耐熱性能を考える,それが当研究室の使命です.次世代の材料が人類の夢を乗せて飛び回る日を実現するために,日夜研究に打ち込んでいます.

モシブチック合金のミクロ構造(写真1)
温度上昇に伴うMoSiBTiC合金の比強度(強度を比重で割った値)の変化(写真2)