材料の地図 「状態図」ってなに?

水(液体)を0℃以下に冷やすと氷(固体)に変わり、100℃以上に熱すると水蒸気(気体)に変わることはご存知ですね。また、水と油を混ぜ合わせても上下に分かれて、溶け合うことはありません。金属や半導体、セラミックス、さらには高分子などの材料も同じで、温度が変われば形態が変わるし、異なる物質を混合したとき、均一に溶け合うこともあれば、水と油のように分かれることもあります。このように、温度と混合する濃度によって、物質がどの様な状態になるのかを示した図が状態図です(理学系の研究者は相図と呼ぶことが多いようです)。例えば、身近な材料の「はんだ」は、鉛とスズを重さの割合で63:37で混合した合金が一般的に電子部品の接合に使われています。その状態図を図1に示しました。鉛とスズの融点はそれぞれ327.5℃と232℃ですが、混ぜ合わせることによって融点が次第に低下し、スズの濃度が61.9重量%の合金は183℃で液体になることが分かります。また、線(相境界といいます)で区分けされた領域は、均一な液体(L)、固体(A)および固体(B)と、それらが分かれて共存する「なわばり」を表しています。

図1 鉛と鈴の状態図

鉛‐スズはんだは5千年以上の昔から利用されてきた古い材料ですが、現代のエレクトロニクス産業には欠かせない先端材料でもあります。しかし、最近、鉛の有毒性が環境問題として注目されています。マテリアル・開発系は、発足当時から状態図について日本のみならず世界をリードする研究成果を挙げてきました。その状態図を利用して、現在、鉛を含まない環境にやさしいはんだを開発するための研究を行っています。