固体冷凍技術ってなに?

現在、一般的なエアコンや冷蔵庫等には「気体冷凍」と呼ばれる技術が使用されている。気体冷凍には、圧力を加えると気体から液体へと変化し、圧力を弱めると液体から気体へと戻る、「冷媒」と呼ばれる物質が用いられていている。冷媒における、このような気体・液体間の変化は「相変態」と呼ばれ、一般に気体から液体へは熱を放出し、液体から気体へは熱を吸収する性質がある。「気体冷凍」は冷媒に圧力を加えることで相変態を起こさせ、その吸熱を利用して冷却を実現している。現在冷媒には、オゾン層破壊の問題から「代替フロンガス」が利用されているが、代替フロンは二酸化炭素の数百倍以上の温室効果があるため、全く新しい冷凍技術の開発が求められている。冷媒に流体を用いず固体のみを使用する「固体冷凍技術」は、その有力候補の一つである。前述の気体冷凍技術と同様に、相変態時の放熱・吸熱を用いるが、固体中の相変態を利用する。冷媒に流体を用いないため外に漏れ出す心配はなく、騒音も低減できる可能性がある。固体冷凍技術の中でも、下図のように永久磁石等の磁場で強磁性・弱磁性変態させる「磁気冷凍」および形状記憶合金を外力でオーステナイト・マルテンサイト変態させる「弾性冷凍」が、現在最も有力視されている。2020年現在、弾性冷凍技術は大学機関等による基礎研究レベル、磁気冷凍技術は基礎研究から試作レベルの段階まで進んでおり、その早期の実現が期待されている。(東北大学マテリアル・開発系は、実用に向いていると考えられているLa-Fe-Si系磁気冷凍材料やCu-Al-Mn系弾性冷凍材料の開発など、本分野で世界をリードする立場にある)