身の回りの“光”と“材料”のかかわり

まず、“光”の種類をみてみましょう。人間が“みる(感じる)”ことができるのは可視光と呼ばれる光で、波長(エネルギー)を区切って区別したものが“色”(波長の短い方から紫〜赤)です。ずいぶん狭い領域の光であることが表からわかります。可視光より短い波長(高いエネルギー)の光は紫外線、長い波長(低いエネルギー)の光は赤外線と呼ばれています。さらに、ガンマ線、X線、マイクロ波、短波などを含めて“電磁波”と呼ぶこともできます。これらの “光”は“材料(物質)”とのかかわり方が異なります。たとえば、海やスキーに行ったときに日焼け(雪焼け)するのは紫外線のためであり、また紫外線を多量に浴びるとガンになりやすいといわれています。これは、紫外線が我々の体を構成する物質(生体物質)を壊してしまうからです。一方、東北地方のような寒い地域では冬に炬燵を使いますが、これは赤外線(遠赤外線)が熱線として振る舞い直接体を温めてくれるものです。でも紫外線とは違って長い時間炬燵に入っていても日焼けすることはありません。つまり、“光”の種類により“材料”とのかかわり方にバラエティーが生じます。

身近な光“可視光”に話を戻すと、晴れた大空の示す青色、夕立の後に架かる虹、極地方の夜空のオーロラは、我々の目が“光”を色として感じた結果ですが、“材料(物質)”とのかかわりとしてみればその背景は異なります。青空は太陽光が大気中の分子によりレイリー散乱された結果であり、虹は大気中の水蒸気のために太陽光が屈折されたもので、オーロラは太陽風がもたらす荷電粒子と大気中の酸素や窒素と衝突して発光することからおこります。工学部ですので身近な電化製品に目を向けてみましょう。皆さんの多くは今パソコンのディスプレーを通じてこの記事を読んでいますよね。見ている画面はCRT(ブラウン管)ですかそれとも液晶でしょうか。どちらも多彩な光(色)で情報を示してくれますが、なぜ色が出るのかご存じでしょうか。CRTは電子を蛍光面にぶつけ、それを発光させて色を表示します。液晶の場合は基板上における分子の向き(配向といいます)により光の方向が変わることを利用し、細かい単位(液晶セル)に赤・青・緑色(光の3原色)のフィルターをかけることによりカラー表示を行っています。

いかがですか、“光”と“材料”のかかわりって我々の身近にいっぱいありますよね。皆さんも身の回りのものがどうして光っているのか、そして様々な “色”の素は何なのか考えてみるとおもしろいかもしれません。例としてパソコンのディスプレーを引きましたが、我々を取り巻くものが示す“色”の背景には、“光”と“材料(物質)”の様々な関係が隠されています。ディスプレーでいえば、それぞれに使われる“材料”として液晶、フィルター、電子線源、蛍光材、ガラスなど様々なものが使われており、どのような材料(素材)を選択し、その使い方(レシピ)をどうするかといったとき“材料”系の出番となります。マテリアル・開発系では様々な研究分野において“光”と“材料”のかかわりを念頭に、X線からテラヘルツ領域の広義の“光”を利用して材料の性質(物性)を探求し、その上で新たな材料の開発を目指した研究を行っています。