塑性加工とは?

“塑”という漢字になじみがない方が多いと思います。この漢字は、月が満ち欠けして形を変えるように、土 (粘土) をこねて形を変えることを意味しています。塑性のことを英語では plasticity といいます。合成樹脂をプラスチック (plastics) とも呼んでいますが、合成樹脂は形を変えるのがとても容易なことに由来しています。

塑性と対称的な用語に、“弾性 (elasticity)”があります。英語では、頭文字pとeが違うだけです。弾性とは、力を加えると伸びたり、縮んだりしますが、力を取り除くと元の形に戻る性質のことです。バネやゴムが弾性の典型的な例です。バネを無理やり引き伸ばすと、もとに戻らなくなることを経験している方が多いと思います。塑性変形が起こったためです。金属もプラスチックも、弾性と塑性の両方の性質をもっています。

私達の身の回りには、様々な形状の金属やプラスチック製品が沢山見掛けられます。直接、目に見えないところにも金属やプラスチック製品が使われています。これらの多くは塑性の性質を利用した「塑性加工」で作られます。その例を挙げて見ましょう。

アルミ缶は、薄いアルミの板を「深絞り」という方法でコップ状にした後、「アイオニング(しごき)」によって、コップの胴部分を薄く引き延ばして作られます。缶の底の部分が厚いのは、しごかれていないためです。そういえば、硬貨も板から「コイニング」と呼ばれる方法で作られます。コイニングは英語の coin (硬貨)が原語です。

自動車にはとても多くの塑性加工品が使われています。ボンネット、ドア、フロアは、鋼やアルミの板から「プレス」という加工法で成形します。テールランプはプラスチックを「射出成形」して作っています。エンジンのコンロッド、バルブ、クランクシャフト、あるいはトランスミッションにたくさん使われている歯車などは「鍛造加工」製品です。

ざっと見ただけでも多く塑性加工製品があることがお分かりでしょう。そこで、実際に塑性変形する様子を見てみましょう。[動画1]は、表面に格子を描いた金属に、工具を押し込む「押出し加工」における「流れ」を直接観察したものです。金属は硬い固体ですが、まさに「流動」していることが分かります。

[動画2]と[動画3]は、種類が異なるアルミ合金を圧縮した時の様子です。同じアルミ合金ですが、片方は途中で割れてしまいました。このように、材料の種類によって塑性の性質は異なります。材料の塑性をよく調べ、加工の仕方を工夫すると、割れてしまった材料でも、割れないで加工することができるようになります。

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