電磁攪拌と電磁分離の原理

電磁調理器というものを知っていますか? 鍋を置くと火を使わないのに鍋が暖まってその中で料理ができます。これは、金属に高周波磁場(数kHzから数10kHz)を加えると金属の表面に渦電流が生じ、これによって金属が抵抗加熱されるからです。

高周波誘導炉もこの原理で金属を溶かします。この炉の中では金属を良くかき混ぜることができます。これが電磁攪拌です。その原理は次のようです。溶けた金属(図1のように、円柱型のるつぼに入っているとします。)の周りにはコイルがあり、そのコイルには高周波電流が流れています。これにより磁場が発生し、その磁場により金属には図のような渦電流(J )が円周方向に流れます。ここで磁場(B)が図のようにかかっているとフレミング左手の法則により、ピンチ力(F)が中心に向かって生じます。この力により溶けた金属に流れが引き起こされます。この流れにより金属が攪拌されることになります。(磁場の向きは絶えず変化しますが、それにより誘導される電流の向きも変わるので、ピンチ力は常に同じ向きになります。)

図1 誘導攪拌の原理

ところで溶けた金属の中の電磁力場の中に、電気を通さない粒子があったときどんな力を受けるでしょうか?それは、図2のように電磁力とは逆向きの力になります。円柱形の金属では、この力のために、粒子は全て側面に向かって移動することになります。こうして粒子を動かして分離することができます。

図2 電磁力を受けた溶融金属中の粒子にかかる力