形状記憶合金の研究を主にやっていますが、応用はいろいろなものが考えられます。われわれが開発した形状記憶合金で製品化に至っている物として巻き爪矯正器具などがあります。
今、メインで開発を進めているのは建築・土木材料です。どんな機能を期待され、建築・土木材料として、形状記憶合金の研究が進んでいるかというと制震性になります。地震などで揺れても躯体を元に戻す機能を形状記憶合金に求めているというわけです。現在、私たちは銅・アルミ・マンガンを組み合わせた銅合金で実用化を期待できる状況にたどり着きました。銅合金は加工性や切削性が高く、既存の形状記憶合金に比べて汎用性が高い点でも優位性があります。
研究はトライ・アンド・エラーの連続です。私たちは「状態図」を使って、当然、ある目的を達成するために実験しますが、その結果は必ずしも思ったとおりにはなりません。でも、発見はどちらかというと偶然に出てくることが多いんです。実験をすると、いろんな副産物的な発見が出てくることがあり、思いもしない性質を目の当たりにすることがまれに起こります。そうしたところも研究の魅力です。