医療材料の開発、そして再生医療に携わり、実用化に近い研究を積み重ねてきました。今、関心がナノ・マイクロプラスチックにまで拡がり、新たな研究テーマが緒に就いたばかりです。ナノ・マイクロプラスチックはいわば極めて微細なプラスチックのごみです。日常的に使っているものでいうと、例えば、紅茶のティーパックや洗濯物の排水にナノ・マイクロプラスチックが混ざっていると言われています。つまり、至る所に微細なプラスチックごみがあります。しかし、それが地球環境や生態系に対しどのように影響するのか、まだあまり分かっていません。医療材料も体内に入ってしまえばいわば異物であることは一緒です(笑)。生きものと材料とが出会う場所(界面)、その理解は医療材料でもナノ・マイクロプラスチックでも同じだと思っています。医療とナノ・マイクロプラスチックという無関係がつながるんです。ただ、つなげるためには界面の理解が必要です。ナノ・マイクロプラスチックはとても小さいから捉えにくくて、評価が難しい。でも、そこをなんとか捉えて評価できるようにしたいというのが、今のテーマになっています。
研究というのはほとんどうまくいかないものです。私は推理小説がすごく好きですが、研究はどこか推理小説的な部分があるものだと思っています。要するに、推理小説では事件、研究では課題・問題があって、こうじゃないかなと推理を進める。でも、それはすぐにうまくいくことは少ない。この作戦は駄目だったから、次はこの作戦だ、という具合に進めていく。作戦が次々に駄目でもいいんです。ヒントはもらえるはずですから。そういう積み重ねがあって、その先に初めてこれだ!というのが出てくるのが研究だと思います。