ロールモデルになる先輩方の働く姿をご紹介

MAST21 Alumni Interviews

#6

圧倒されるほど巨大な製鉄設備に憧れを抱いて

國分 雄太
〔スチールプランテック株式会社〕

東北大学大学院 環境科学研究科
先端環境創成学専攻 博士前期課程 修了

國分 雄太
オフィス風景 オフィス風景

せっかく進学するなら
日本一と言われる
東北大学の材料科学総合学科へ

子どものころは、友達と外でサッカーやバスケをしたり、家の中でカードゲーム、テレビゲームをしたりして遊んでいました。中学生の時には、学校行事がきっかけで取り組んだ百人一首に結構ハマり、熱中して遊んでいたことを覚えています。中学の部活を引退してからは、学外の勉強をあまりせずにゲームばかりしてしまって、高校受験では思うような成果が出せず悔しい思いがありました。

高校では、あまり遊ぶことなくよく勉強していたと思います。勉強すること自体が嫌いではなかったので、気の合う友人と有料の自習室を借りて、そこでよく自習していました。「どの大学に行きたい」とか「何学部がいい」という明確な目標や将来の目的を持っていたわけではありませんが、なんとなく「一人暮らしをしてみたい」という思いがあり、進学先は実家のある関東から離れた、関西か東北がいいなと漠然と思い描いていました。仙台に住んだことのある身内がいて「仙台は住みやすい街だよ」と聞いていたので、仙台の印象は良かったです。

結局、高校3年の冬まで進学先を決められませんでした。理系科目は好きですが、特に得意な科目がなく決め手に欠けたというのが理由です。たまたま見ていた東北大学のパンフレットに、材料科学総合学科が日本一という記述を見つけて「せっかく進学するなら有名なところで学びたい」と思い、最終的に材料科学総合学科を選びました。

スチールプランテックのロゴがある壁の前に立つ國分さん スチールプランテックのロゴがある壁の前に立つ國分さん

専門性の高いマテリアル系の科目が
とても興味深く
夢中になって学んだ

大学入学後、1年から3年までは教養科目と材料に関する専門科目を座学しますが、1年生では教養科目にあまり興味が湧かず、真面目に取り組まなかったので年度末には大苦戦しました。2年生では反省して真剣に取り組んだところ、教養科目も案外面白いものだなと発見がありました(笑)。材料系の専門科目については、物理化学や電子材料、材料組織など興味深い授業がたくさんあって楽しかったです。

中でも鉄鋼精錬の授業は特に理屈が面白く、物理化学の授業で学んだ論理が実用的に応用されている印象を強く感じました。

教授から、鉄鋼業界に就職した先輩方が、最先端の技術をもって国を背負って頑張っていらっしゃる様子を聞く機会も多く、身近に感じられました。

4年生から所属する研究室は、迷った末、鉄鋼に興味があったので葛西研究室(先端環境創成学専攻 太陽地球システム・エネルギー学講座|現:村上太一研究室)に所属しました。研究テーマは「セラミックスの高温酸化反応」に関するものです。

スチールプランテックのロゴアップ
パソコンに向かう國分さん
青空とビル群

セラミックスは、一旦傷が入ると脆く割れやすい性質があり、構造材料として課題があります。使用環境下(高温・酸化性の雰囲気)で自然に傷を埋めるように酸化層(自己治癒層とも呼ばれる)が形成されることで、亀裂の進展・破壊を防ぐのですが、その傷を修復した酸化層が、使用環境下で腐食して減ったり無くなったりしてしまうと困りますので、そういったことが起こるのかどうかを研究で検証していました。焼成したセラミックスに害になりそうな物質を添加し、炉で酸化層を作り出します。数時間後、その試料を取り出し反応を観察。反応させる時間や温度、添加させる物質を変えるなど条件を変更しながら、研究室にこもってデータを取り続けました。

難しかったのは、実験結果をどう評価をするかです。セラミックスの断面を電子顕微鏡やX線で観察しても何が起こっているか評価しにくく、経緯を説明しながら「そもそも反応しているかどうかもわからない」と先生に相談することもありました。助言をもらいながら評価基準を設定し、成果をまとめることができました。

自分が研究するようになると他の人の発表を聞くのも楽しかったですね。当時の研究室では民間企業と連携した研究テーマも多く、産業界の人が私たちの研究に期待してくれているのだなという、誇らしい気持ちもありました。特に自分は鉄鋼や製錬について興味があり、知識を得ることが喜びでした。

大学院前期課程への進学を決め、所属研究室は新日鉄住金連携講座(当時の講座名)を選びました。実際に千葉県富津市の新日鉄住金(現在の日本製鉄株式会社)の研究所で研究ができるという珍しい環境に惹かれて研究室を決めました。新日鉄住金の研究者が客員教授となり、講義や研究指導を進めてくださる長期の講座です。修士1年の夏までは村上先生の元で、自分なりの調べ物をしていたのですが、夏以降は新日鉄住金の社員寮に入り、研究所に通う生活が始まりました。前期課程が修了するまでの1年半の間、ずっと富津で生活しました。

説明中の國分さん 説明中の國分さん

そこでの研究テーマは「金属の急冷凝固について」です。高速で回転させている銅合金のロールに、溶融金属を噴射してぶつけると一瞬で冷えて固まり、厚さ20ミクロン、幅20ミリほどの金属箔帯が何メートルもできます。金属なので普通は結晶相になるのですが、この方法で急冷すると結晶構造にならずに固まるのです。このプランナーフローキャスティング法(Planar Flow Casting、PFC法、単ロール液体急冷法)というプロセスそのものの研究を行っていました。ロール表面の材質を変えることで起きる影響を調べ、出来上がった箔帯の表面の性状ができるだけなめらかで均一になることを目指します。ロール表面の材質、ロール回転速度、溶融金属の噴射圧力、噴射口とロールの間隔など、測定のパラメータを変えては機械的に記録を取り続けました。

忘れられないのは、実験装置が壊れて2ヶ月ほど使えない時期があったことです。研究に不可欠なメインの機器が壊れたことで研究がストップしてしまいました。他にできることがないかと他の実験方法を調べたり、原因を調べるためにセミナーを受講したりと、自分なりにできることを模索しましたが、今思うとさほど良い案は出せていなかったように思います。先生もそれを承知の上で状況を受け入れ、協力してくださっていたのかなと懐の深さを感じます。

連携講座に所属してみて、東北大の通常の研究室と一番異なる点は、研究に協力してくれる方の多さかなと思います。実験のサンプルを作ってくれる方、るつぼを作ってくれる方、箔帯を詳しく調べてくれる方と、社内外に多くの協力者がいて、自分の研究に携わってくださることが大変ありがたい環境でした。一方で、同じ境遇の学生がおらず孤独を感じることもありました。研究室には同級生がおらず、一つ上の先輩が一人いただけなので、先輩が卒業してから下の学年の学生が入ってくるまで学生は自分だけで、つらいなと思う時期がありました。だた、今振り返るとそれも自分が鍛えられたというか、とても貴重な経験だったと思います。

オフィスの大きな窓から見えるビル群

消極的な学生生活には後悔も
「楽しそう」と思ったら
ぜひ行動にうつして欲しい

大学生活を振り返ると、高校生の時に抱いていた大学生のイメージとは若干違っていました。学部3年までは座学が中心なので、高校までと学び方のプロセスがさほど変わらないのですが、4年生からはがらりと雰囲気が変わります。まず、研究したいテーマを選択し、その後、研究方法や研究のスケジュールなどを自ら調べ仮設定し、最終的に先生方と相談して決めます。研究するだけでなくその成果を資料やレポートへのまとめることもコツが必要でした。そもそも先生方とどのようにお話すべきなのかもわからず、心理的なハードルも感じました。学生生活の後半にこのようなことが待っているとは思いもよらず、とても苦慮したことを覚えています。ですが、今思うと、この経験が就職してから生かされていると感じます。自分で考えたことを資料にまとめ、お客様や会社の人へ伝えるというのは、社会生活において常に必要なスキルですし、大きな意義があったと思います。強いこだわりを持たず、自分の興味に沿って思うままに進路を選んできた自分ですが、研究生活で培ったこのような学びが、社会人生活に大いに役立っています。

逆に学生生活で自分に足りなかったのは、積極性でした。学生のときにもっと外に出ればよかったとか、同期とコミュニケーションをとればよかったと後悔することがあります。アルバイトもしてみればよかったな、とも。きっと交友関係や行動範囲が広がり、金銭面でも余裕ができたと思います。ぜひ学生の皆さんには失敗の許容される年代のうちにいろいろな経験をして欲しいです。楽しそうだなと思ったら、考えすぎずに行動してみるといいと思います。きっと経験値となって自分の人生を少しずつ豊かにしてくれるはずです。

金属板

1

溶接イメージ

2

連続鋳造機の図面

3

画像1・2(イメージ)、画像3(スチールプランテック株式会社)

自らの設計したものが
製鉄所に不可欠な工程の一部となり
実現していく面白さ

私が就職先として検討したのは、スチールプランテックのみでした。理由は、他にはない製鉄系のトータルエンジニアリングであることに強く惹かれたからです。特に学部3年のときの工場見学で見た製鉄事業の圧倒的な存在感や規模感に憧れをいだくようになり、「自分も大きいものをつくりたい、関わりたい」という思いがずっと心にありましたので、入社できて希望が叶いました。受かったと聞いたときは「ああ、よかった」と安堵したことを覚えています。

入社して今年で7年目になりますが、連続鋳造エンジニアリング部に所属し、ロボットや画像処理センサの導入に関する設計業務、連続鋳造装置の設計や見積りなどを担当しています。横浜市内の本社に勤務し、出社は朝8時半、定時退社が17時半ですがたまに残業をして19時ごろには帰宅しています。月に1、2度は全国の製鉄施設に出張があります。

具体的な仕事の内容ですが、製鉄メーカーなどの工場の一部ラインや設備のリニューアルのための要件の整理、設計や見積り、また製作管理、据付や試運転までのフォローを行います。実際に何度も現地調査に出向き、お客様と打ち合わせをしてニーズにあった機器を設計することが大切な業務です。特に今は、人がしている作業、例えば異常事態の監視や高温環境下での検査などを自動化するシステムが欲しいというご要望が多いです。

大きな窓の前に立つ笑顔の國分さん 大きな窓の前に立つ笑顔の國分さん

例えば、とある製鉄所から、高温で溶かした鋼が入っている鍋に、計測用の棒を入れて温度を測る作業を人力で行っているため、その工程を自動化したいという依頼があります。その場合、ロボット導入が可能か検討し、その機能やサイズ、配置などを総合的にまとめてご提案します。また、溶かした金属を鋳型に流し込んで固める工程の、まさに流し込んでいる箇所の様子を常時確認する方法がないかとご相談があれば、画像処理センサーの設置をご提案します。溶鋼が飛散せず綺麗に落ちているかをモニターでき、湯面の高さも自動的に計測して数値化できるなどのメリットを整理してお伝えし検討いただきます。

仕事の醍醐味は、PC上で仮定していたものが徐々に現地で具現化していくことですね。自分なりにこだわりを持って考えた細かな仕様が、現地でしっかりと機能している様子を見ると、やりがいを感じます。心がけているのは、「使う人が少しでも使いやすくなるように」そして「ちょっとでも便利にする」ことです。所属する設計部署は、調達や製作、品質などの社内の他部署や、社外ではクライアント、機器メーカー、据付工事担当の方など、関わる人が大変多い職場です。それぞれに豊富な経験と卓越した技術を持つ信頼できる方々であり、協力して仕事を進めることができるのは光栄です。一緒に仕事することで自分自身を成長させてくれる環境だと感じています。協働する方々に自分の仕事を少しでも認めてもらい「彼とは仕事がしやすい」と思ってもらえたら嬉しい限りです。

スチールプランテック株式会社
steelplantech.com

スチールプランテックオフィス入り口 スチールプランテックオフィス入り口