ロールモデルになる先輩方の働く姿をご紹介

MAST21 Alumni Interviews

#9

エンジニアから描くキャリアの未来図

石澤 寿将
〔大和工業株式会社〕

東北大学大学院 工学研究科
知能デバイス材料学専攻 博士前期課程 修了

石澤 寿将
スクラップの山と石澤さん スクラップの山と石澤さん

「好きだったこと」が
今も背中を押してくれる

出身は北海道南西部の上ノ国町というところで、4,000〜5,000人ほどの小さなコミュニティの中で育ちました。周囲は豊かな自然に囲まれ、友だちと外で遊ぶ日々を過ごし、特にサッカーに夢中になって駆け回っていた記憶が鮮明に残っています。もちろん年相応にゲームも好きで、地元には体育館くらいしか待ち合わせ場所がなかったこともあり、よくそこに集まってポータブルゲーム機を持ち寄り、ワイワイ遊んでいました。

そんな活発な子ども時代を送りつつも、家の中ではまた少し違った一面がありました。小さいころから世界地図を眺めることが好きで、自分から国旗をどんどん覚えていき、当時は「ほとんどの国旗を言える」と思えるくらい夢中になっていました。また、計算も非常に得意で、算数ドリルを楽しみながら解いていたのをよく覚えています。興味を持てる分野の勉強は全く苦にならず、むしろ自分をワクワクさせてくれる遊びの延長のようなものでした。一方で、読書だけはどうも苦手で、長い文章を読み進めるのに苦労した記憶があります。

兄と姉がいる家庭環境の中で、二人の存在はいつも良い刺激になっていましたが、理系を志すようになった背景には父と兄の影響が大きかったと思います。子どもの頃に肺炎で入院した際、父が見せてくれたラリーレースのビデオに完全に心を奪われ、セリカやインプレッサといったラリーカーの走りが格好良くて、何度も何度も繰り返し見ていたほどです。また、兄の影響でガンダムシリーズにハマり、そこから「宇宙」という存在自体への興味が自然と膨らんでいきました。宇宙に関する本を手に取り、難しいながらも夢中になって読んでいたことをなんとなく覚えています。

スクラップの山
製品
JSW 工場の一部

元々理科や算数が好きだった私は、こうした家族の影響もあって次第に理系分野へ進みたい、という思いが輪郭を帯びるようになりました。地元では大学進学を目指す人が特別多いわけではなく、友人たちも進学に対して強い意識を持っていたわけではありません。しかし都会へ出た兄や姉が、新しい環境で楽しそうに生活している姿がとても眩しく映り、「自分もこの小さなコミュニティを抜け出して、もっと広い世界で学びたい」と自然と思うようになりました。

大学への期待が高まるにつれ、自分が学びたい分野を考える中で「航空・宇宙分野」に対する関心が芽生え、東北大学など他の大学も視野に入れながら、自分の可能性を広げていきました。実際にオープンキャンパスに参加したことで、憧れの大学生活の一歩を踏み出す決意が固まったのを覚えています。

そして2018年、東北大学工学部材料科学総合学科の一員として新たな生活が始まりました。クセの強い仲間と出会い、トップレベルの先生方に教わる日々は大きな刺激に満ちていました。勉強は決して易しいものではありませんでしたが、不思議と「辛い」と感じたことはなく、仲間と励まし合いながら楽しく乗り越えられていたように思います。専門的な学びが進むにつれ、物質をミクロな視点でとらえる世界に魅力を感じるようになり、2年生頃には材料の領域へどっぷりとのめり込んでいきました。

話をする石澤さん 話をする石澤さん

人間的な成長を
促してくれた学生時代

学生時代の勉強は、受験勉強とはそもそもアプローチが違いました。高校生までは、ある現象を頭にさえ入れておけば、テストの点数は取れますけど、大学生になってからは現象そのものに着目し、それを紐解くために必要な数字を探し、どんな計算をすればよいかを考えることへとウェイトが変わり、研究室に入ってからはさらにその重要度を増しました。問題を解くだけでなく、問題が何かを見極め、問題解決までの道筋も考えなければならないので、勉強のアプローチの違いに大いに戸惑いました。

私は武藤研究室に所属し、学部4年時には炭素鋼を錆びにくくする表面処理について研究を行いました。修士に進んでからは、同じ武藤研究室で錆びにくい鉄系合金の研究を進めました。私たちは工学部のキャンパスがある青葉山のことを「山の上」と呼んでいましたが、その山の上で完結してしまうほどに大学の施設・設備は充実していて、集中して研究に取り組める環境だったと思います。そこで同期3人と共に取り組んだ研究が、腐食防食学会で若手講演奨励賞をもらうことができたというのが何よりの思い出ですね。

東北大学での6年間は本当にあっという間で、高校時代に下宿生活を経験していたとは言え、やはり一人暮らし、自炊は別のものでしたし、飲食店や塾講師などのアルバイト経験も思い出深いです。そして、先程も触れましたが個性的な友人との交流、ハイレベルな先生方からの指導により、人間的にも成長できたと思います。

説明をする石澤さん
ヤマトスチール株式会社内の展示
説明をする石澤さんと説明を聞く男性

就職を意識しだしたのは、修士1年生の頃からでした。材料、特に鉄、非鉄など金属材料にエンジニアとして携わる仕事をイメージしながら、Webを中心に情報を集め始めました。

現在勤めている「大和工業」という会社のことは、知らなかったというのが当時の正直な話で、産学連携の講義に大和工業が登壇したことでその名を知りました。その後、大学OBと接点を持つことができ、少しずつ会社のことを知っていきました。

特に惹かれたのは材料メーカーであることと、若いうちから海外赴任の可能性が大きいことでした。大和工業は鉄鋼材料メーカーとして世界8か国(2026年1月時点)に拠点を置いています。それぞれ拠点となる国のメーカーと組んで、常駐する大和工業スタッフが現地のリソースを活かしながら展開しています。特にアメリカへは、1980年代後半から進出していて、同国最大の鉄鋼メーカーであるニューコア(Nucor Corporation)とジョイントベンチャー(合弁事業)を組んでいます。経営はニューコアに任せ、大和工業は技術を提供するという形を採用していて、このジョイントベンチャーという方法が大和工業の重視している思想になっています。

実は私は、理系には進んだものの中学〜高校と英語が一番得意科目だったので、就職活動の軸をどこにするか考えた際に、自分の胸のうちには「英語力を活かせる仕事」というものがありましたので、大和工業を知った時には「こんなにマッチする会社があるなんて!」と思いました。

こうして、2024年4月に大和工業株式会社に入社し、グループ企業で、製鋼メーカー部門を担うヤマトスチール株式会社に出向することになりました。

工場内で点検をする石澤さん 工場内で点検をする石澤さん

良質なインプットを生む
コミュニケーション術

ヤマトスチールは、姫路の拠点において電気炉で鉄鋼製品の製造販売を行っている会社です。私の場合、故郷に戻りたいとか、故郷の近くで働きたいという希望は持っていなくて、場所よりもやりたいことを優先させた結果、兵庫までやってきました。

ヤマトスチールの一員となって2年目となりますが、毎朝8時、早いときには7時に出勤し、夕方5時までが所定の勤務時間です。所属する製鋼部製鋼技術課において製鋼工程のうち、溶けた鋼を冷やし固めて半製品という大まかな形に作っていく連続鋳造を担当していて、オペレータの作業改善、安全性や操業の安定性、半製品の品質などの向上に向けて、様々なアプローチで取り組みを行っています。

具体的にどんな仕事をしているかと言うと、主なところではトラブル対応・再発防止、操業やコスト面、安定性の改善などをチームで取り組んでいます。また、品質の向上や課題解決にも注力しています。中でも半製品の製造過程で冷やし固める工程があるのですが、ここでその後の品質に大きな影響がある、表面の品質向上に向けた分析や改善も私たちチームが担当しています。

操業の改善を例にすると、改善に繋がりそうな文献を読み、提言を行うようなことがあり、こうした仕事の進め方は、大学時代に培った問題解決を目指す考え方や、材料学に関する知識が大いに役立ってくれています。

スチールプランテック工場内でモニターを見る石澤さん
スチールプランテック工場内の石澤さん
スチールプランテック工場内

一方で、学生時代とは大きく異なる点もありました。まずはリスクやコストに対する考え方です。学生時代には理論や材料そのものに着目していればある程度良かったのですが、設備や工程に含まれる様々なリスクを考慮しなければなりません。また、企業である以上は利益を生まなければいけないので、リスクに挑む際にもリターンがどれだけ得られるかなど、学生時代の研究とは考える内容が全く異なります。

わからないことばかりですし、学生時代とは全く違うことに取り組んでいますので、インプットが特に大事だと思っています。先輩や上司としっかりコミュニケーションを取って、情報を引き出し自分の中にインプットすることを心がけています。今も、どんな質問をすれば求めている答えを得られるか、試行錯誤しながら日々を過ごしています。

海外拠点について説明をする石澤さん 海外拠点について説明をする石澤さん

挑戦を歓迎する職場で挑む、
大きなプラン

幸運なことに、この会社はとても若手の積極性を歓迎してくれる会社で、挑戦を評価してくれる社風があります。私はそこに非常にやりがいを感じていますし、主体的にチャレンジしたい人には向いている会社なのでは、と思います。

就職活動の際に重視した「海外への挑戦」ですが、こちらも機会を伺っているところです。入社後の研修でアメリカとタイの工場視察に行かせてもらったことで、ますますその熱意は高まっています。アメリカのマーケットリーダーであるニューコアとともに業界の最先端を、身を持って経験したいと思っています。

海外挑戦とともに将来像として描いているのは、経営的観点も併せ持ったエンジニアになることです。現在は実現に向け、MBA資格取得を目指し勉強を着々と進めているところです。

これから進路選択する皆さんには、心の底から「やりたい」と思うことに巡り合うために、学生のうちから自分が普段やらないこと、考えもしないことにたくさんチャレンジしてほしいと思います。そのうえで成功体験も失敗もどちらも経験しておくことで、本当にやりたいこと、挑みたいことと出会えるのではないでしょうか。

大和工業株式会社の石澤さん 大和工業株式会社の石澤さん