東北大学 工学部
材料科学総合学科

Department of Materials
Science and Engineering

東北大学工学部材料科学総合学科

Department of Materials Science and Engineering

MENU


白石 安代

ボッシュ株式会社 白石 安代さん [平成15年修士卒]

平成25年7月30日(火)、31日(水)にオープンキャンパスが開催されました。その中で、「女子高校生のためのミニフォーラム『工学にかける私の夢』」が工学部で開催されました。本系からは、30日に卒業生の白石安代さん(平成15年修士卒・ボッシュ株式会社)、31日に大学院生の草間知枝さん(金属フロンティア工学専攻大学院博士課程1年)が、集まった女子高校生に向けて講演を行いました。 講演の後、卒業生の白石さんに本系を志したきっかけや、ご自身の学生生活、そして社会に出てからの仕事内容や転機について、お話をうかがいました。

白石 安代

将来を考え理系を選択、マニアックな材料系に興味を持つ

私は、生まれも育ちも宮城県仙台市です。出身は宮城第二女子高校(現:仙台二華高校)で、大学もせっかく仙台に東北大学という大きな大学があるから、と志望しました。そもそも理系の進路を志したのは高校生の時。文系・理系にクラス分けをする時に、考えました。当時科目では英語が一番好きでした。でも、得意な科目を生かして文系の大学に進んだ場合、就職する時どのような職業選択があるのだろう?と考えて、ちょっとイメージしづらかったんですね。一方、理系に進んだ場合は、メーカー勤務や研究者など、職業をいくつか具体的にイメージできたんです。理系なら幅広い職業につくことができるんじゃないかな、と考えました。

東北大学の中でも材料系を選んだのは、あまり他の大学にない珍しい学問に興味を惹かれたからです。調べてみたら、全国の大学でも材料の学科は少なく、その中でも東北大学の材料は一番実績を上げている。せっかく大学で学ぶなら、他のみんなのやらない、マニアックな(笑)ことをやりたいと思いました。

自由な大学生活、アルバイトも充実

大学生活がスタートしてまず感じたのは、時間の自由度がすごく高い、そして雰囲気も自由ということ。みんな授業だけでなく、クラブ・サークル活動やアルバイトも充実させて、好きなことをしながらしっかり勉強もしている……そんな人が多くて。「あ、こういうところが大学なんだな」という開放感を感じましたね。私もアルバイトをたくさんしました。一番長かったのは塾講師と家庭教師で、学部の時から大学院生まで6年間続けました。他にも、工場での製造業や試食販売など、いろいろやってみました。働くのが好きで、色々な職業を体験したかったんですね。大学生と異なる年齢層の社員の方などと一緒に仕事をして、社会人の生活を垣間見ることができるのも、いい経験でした。

サークルは、学部生の時はさだまさし研究会に入っていました。高校生の時、フォークソング同好会にいた友人に「東北大学にはさだまさし研究会があるそうだから、一緒に入ろう」と誘われて。活動内容は…さだまさし一色というわけではなく、ギターを弾いてフォークソングを歌う人、部室でゲームする人、さまざまでした。私もギターをちょっとたしなんではみたのですが、難しいコードで挫折してしまいました(笑)。

研究室が一致団結!運動系のイベント

4年生になると研究室配属になります。私は進藤研(材料システム設計学分野)でした。研究室を決める前の見学期間にいくつか見て回ったんですが、進藤研で勉強していた方々がとても面白くて、波長が合いそうな雰囲気だったんです。おそらく研究室では長い時間を過ごすことになるので、楽しそうな雰囲気が大事だと思い、決めました。

研究室では、みんな各々、自分のペースで過ごしていました。 私は圧電セラミックスという材料の機械的な挙動を、理論と実験データを重ねて調べていくというのが研究テーマでした。研究内容にもよるとおもいますが、徹夜してガチガチに研究という感じではなかったですね。私は日中型で、朝来て夕方帰っていました。一方で、夜型の人もいましたし。ですから、24時間、多分必ず誰かが研究室にいたと思います。

研究室生活で一番の思い出は、運動系のイベントです。男性が多いせいか、工学部の運動会、系の研究室対抗で駅伝、野球、サッカーと、とにかく運動系のイベントが多いです。研究はテーマによって皆別々ですが、運動系のイベントでは一致団結。みんなで優勝目指して練習して、試合に出て、打ち上げして……それがとても楽しくて印象に残っています。 進藤研は特に強いんですよ!私が在籍していた当時も、サッカーや野球、駅伝で優勝が続いていました。研究室見学の時に来た人にも「野球できる?サッカーできる?」と、聞いていて、運動が得意な人を勧誘していたようでした(笑)。

私自身は、運動はあまりしないほうだったのですが、大学院の二年間は、スノーボードに打ち込んでいました。冬のシーズン中は、山形のスキー場に多い時は週3回通っていました。朝4時に行って、滑って、9時に大学に戻ってきて、講義を受けたり研究をしたりして、そして夕方からバイト(笑)。学部生と違って大学院生は授業より研究がメインなので、両立できたのだと思います。

先輩の多いボッシュへ就職、専門分野を生かしてエンジニアに

就職活動の時期になり、リクルーターの先輩に話をうかがったり、会社見学・工場見学に何ヶ所か行ったりしました。その中で、自分が研究していた専門分野が生かせそうだったこと、OBの方から具体的な就職してからの仕事内容について詳しく説明していただいたことが決め手になり、自動車部品の会社であるボッシュに就職を決めました。おかげで、ほとんど不安なく就職することができました。 進藤研出身者の先輩が多く、私の時も同期で2名同じ会社に入りました。

入社してから二ヶ月は集団で研修を受け、その後希望を聞いて配属になります。私は材料の知識を生かせる部署を希望し、日本で研究開発のリードを取り開発から製造まで手がけている部署に配属になりました。 仕事の内容は、車両に載せる製品を自分で設計して、CADでデザインし図面を引き、試作品なども自分で現場に行って部品を使って、自分で作った図面を見ながら組み立る……という、ひと通り、設計からモノを作り上げるまやっていました。自動車部品というものは自動車の中にあって外から見えないものなのですが、その自動車が市場に出た時に「私が設計した部品が入っている」と思えるのは、やはり設計者として非常に嬉しい瞬間ですね。

白石 安代

働きながら大学院で学び、マーケティングの仕事へ方向転換

エンジニアとして6年間勤務し、うち後の2年間は技術者の仕事だけではなく、プロジェクトマネージャの仕事も兼ねていました。このことが後の転機となりました。一つのプロジェクトが始まってから、最終的に車両として量産が始めるまで、スケジュールを立てたり各イベントを調整したりしていきます。 車両が世の中に出るまでには、お客様のイベント・試験のスケジュールによって、どのタイミングで試作品を出して、どういうふうに量産準備をして…などということを、いろいろな部署の人……製造部門、品質部門、さまざまな人と交わりながら考えていきます。こんなにたくさんの仕事があるんだと、面白く思いました。

でも、教えてくれる人も相談できる人もいないままプロジェクトマネージャの仕事を始めたので、最初はビジネス書を読んで勉強しましたね。やがて体系立てて学びたいと思うようになり、経営大学院(ボンド大学経営大学院)に入学を決めました。 働きながらでしたので、仕事以外の時間のほとんど……土日、帰宅してからの時間、通勤時間は、勉強にあてました。開講時期が限定されている科目を複数履修していた時は、寝る時間を取るのも難しいほどでした。大変でしたが、三年位かけて修了し、MBAを取得しました。 同じ頃、たまたま以前の上司から「マーケティングのポジションが空くから来ないか」とお誘いがありまして。勉強しているマネジメントも生かせるし、面白さを感じていたところだったので、方向転換して移ることになりました。今、三年目です。とても楽しんで仕事をしているので、しばらくはこの方面でキャリアを積んでいきたいと思っています。

理系の大学で学んだことは、私のように仕事が変わっても役に立ちます。ロジカルに考える力がある、数字に強いという点は本当に有利ですね。新しい技術についても、基礎的な学問の知識をもとに応用をきかせて理解することができます。マーケティングのお仕事は、例えば、営業と一緒に出掛けて新しい製品をプロモーションしたり、東京モーターショーなどの展示会で説明員をしたりします。社内では、担当している製品、事業部の収益性の管理、売上、チーム戦略や製品戦略を事業部のトップの人と考えていく、参謀のようなお仕事もあります。ビジネス寄りですが、部品だけでなく自動車全体についてひと通り説明できるような幅広い知識が求められています。エンジニアとして自分で設計・製造にかかわった知識の裏付けがあるので、仕事する上でメリットを感じています。

今、社会に求められている理系女性

今、会社ではダイバーシティ(多様性)を非常に重視していまして、積極的に女性のエンジニアリング職を採用しようとしています。私が入社したときは女性が60人中2名だったのが、今は半分くらい女性です。エンジニアリング部門でも2,3割くらいまで増えました。 自動車業界にはどうしても男性が多くなってしまいがちです。男性だけですとイノベーションは生まれにくいですし、同じような人ばかり集まると組織も硬直してしまいます。女性がすごく求められていて、追い風が吹いている状態です。ただ、理系の学問を大学で専攻する女子学生の絶対数が、まだまだ少ないと感じますね。

ボッシュでは、女性が結婚や出産などでライフスタイルが変化しても、仕事を続けられるよう取り組んでいます。産休や育児休暇、さらに時短勤務や在宅勤務も選択できるようになっています。例えば管理職でも、午後4時までの時短勤務と、週に1,2回の在宅勤務を併用して、育児と仕事を両立している方もいます。また周囲でもサポートしていこうという雰囲気が定着しています。男性の育児休暇取得の実績もあります。最近は携帯とネットがあればどこでも仕事ができるようになってきているのも、そのような働き方を後押ししています。

白石 安代

最後に、高校生の皆さんへ

とにかく一番言いたいのは、理系に進むと、その後の選択肢の幅が広がるよ、ということですね。

高校生の方にとっては、理系は数学や理科の科目が多くて、敬遠したくなるかもしれません。でも学生の時に基礎的な理系の知識が身についていたからこそ、社会に出てから、良かったと思うことがとても多いです。ぜひ理系の進路を志して欲しいなと思います。そして社会に出て、一緒に働けるといいなと思います。

いいことがたくさんあります。損はないですよ!

(平成25年7月取材)