循環材料プロセス学分野

教授
セルゲイ・コマロフ
准教授
吉川 昇
助教
山本卓也

超音波振動、マイクロ波、電磁力、プラズマを使った材料プロセス創成。「物理的作用」への理解を、循環型社会づくりにつなげる。

 

独自の研究開発を通じた環境負荷低減への貢献。
みなさんは「3R」という言葉を耳にしたことはありませんか? これは廃棄物の①リデュース(発生抑制)、②リユース(再使用)、③リサイクル(再資源化)の頭文字を取ったキーワードで、それらの取り組みを通じて環境保全と経済成長を両立させた循環型社会を目指そうというものです。今や“持続可能性”への視座は、未来に責任を持つ私たち一人ひとりが持たなければならないものです。
コマロフ研究室が掲げるのは、研究開発を通じた環境負荷低減への貢献。超音波振動、マイクロ波、電磁力、プラズマといった「物理的作用」を使用した循環型材料プロセス/環境調和型プロセスの設計・開発を担っています。ターゲットとなるのはアルミニウムや鉄鋼、セラミックス、ナノ構造材料、産業廃棄物など、私たちの暮らしに身近なものばかり。これらは(産廃を除いて)環境負荷が高い製造プロセスを必要とします。本研究室では、再資源化・リサイクルしやすい新材料の創出や、環境にやさしい鋳造技術・プロセスの開発(グリーン鋳造)、廃棄物の無害化処理の技術開発に向けて、独自の発想と視点によりアプローチしています。

優れた技術で架橋する「経済性」と「環境」。
例えばアルミニウムのスクラップから二次合金を作り出すプロセスを、原料(ボーキサイト)から地金を製造する過程と比較すると、要するエネルギーは約3%、CO2 排出量も3%で済みます。アルミニウムが「リサイクルの優等生」といわれる理由ですが、一次合金地金は、金属組織・機械的特性を改善・向上させるため、TiB2 (チタンホウ化物)、AlP(リン化アルミニウム)など様々な改質剤が添加されており、それがリサイクル時の選別を困難にし、コストを押し上げています。
コマロフ研究室では、超音波振動によって組織を制御し、改質剤を使うことなく、アルミニウム合金に要請される品質・特性を担保する研究に取り組んでいます。「経済性」と「環境配慮」は、しばしばトレードオフの関係として挙げられますが、本研究室では技術力で二つを架橋することを目指しています。
一方、進展するグローバル化の潮流の中、英語によるコミュニケーション能力の必要性はますます高まっています。本研究室では、異文化理解に向けた国際交流や、英語力の鍛錬に向けた研究室独自の取り組みを展開。グローバルな視野で考える“ 環境人材”の育成にも力を注いでいます。

Projects

新しい視点と発想、研究開発力で、環境調和型ディーゼル自動車の未来を探る。

クリーンな空気を、クリーンディーゼルから。

ステンレスの体積比率30%のフィルターであれば、マイクロ波印加後約13秒で、スス燃焼温度の600℃に達する。

多孔質のフィルターが、ディーゼルエンジンから出るススをキャッチ。

ディーゼル自動車の排気口からもくもくと上がる煤(スス)…この黒煙の正体はディーゼル排気微粒子(DieselParticulate Matter:以下DPM)。Particulate Matterとは粒径10マイクロメートル(μm)以下の大気汚染物質のことをいい、最近では“PM2.5”ですっかり知られるようになりました。DPMには、呼吸器疾患やアレルギーの原因となる成分や発がん性が含まれると指摘され、日本では1990年代に入ってから、世界最高レベルと言われる厳しい排気ガス規制が次々と導入されています。条例によって、環境規制に適合しない商用ディーゼル車の運行を禁ずる地方自治体もあります。基準を満たさない旧式車両への装着を義務付けられたのがディーゼル微粒子捕集フィルター(Diesel ParticulateFilter:以下DPF)です。
排出ガス経路に挿入されるDPFは、その多くが多孔質のセラミックでつくられており、排気をマイクロオーダーの微細な隙間に通すことで、スス状のDPMを捕らえる仕組みです。しかし、吸着量が限界を超えると目詰まりを起こすため、捕集したDPMを焼却処理し、“フィルターを再生”させる過程が重要です。

新しい技術の探索。「新規フィルター材料」と「マイクロ波加熱」の組み合わせ。

現在実装されているのは、白金系の酸化触媒によって排出ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に変えて酸化剤とし、通常の排気温度で燃焼させる方式です。しかし、触媒の多くは硫黄分の影響を受けるため、低硫黄化(50ppm以下)された軽油しか使用できないと言う制限が有ります。 一方、DPMを燃焼させるには600℃程度が必要とされますが、前述の触媒反応を促進させるには300℃前後の温度を保持しなければなりません。始動時やアイドリング運転時にはそこまでの排気温度に達しない場合が有り、DPM燃焼(フィルター再生)の低下のつながります。
コマロフ研究室では、セラミックに代わる新材料「ステンレスを分散させたSiO2ガラス多孔質フィルター」と「排出ガスのマイクロ波加熱」というアプローチで、燃料の自由度(低硫黄化軽油以外の使用を可能に)と温度制御の向上(迅速にDPM 燃焼温度600℃に到達させる)、そしてコストの低減に挑んでいます。これまでの研究では、特にエンジンスタート時において、二つの組み合わせが優れたフィルター再生性能を示すことが明らかになっています。
燃費経済性に優れ、CO2削減が期待されるディーゼル自動車の特長を生かしながら、排出ガスをさらに削減するにはDPF技術が鍵となります。コマロフ研究室では、これまでにない新しい視点と発想から「クリーンディーゼル」の未来を創造していきます。

Topics

これぞクール・ジャパン!『お花見』
花と言えば桜。自然を愛でる日本人の感性。

昨年(2014年)から立ち上がったコマロフ研究室。親睦を深めるイベントとして早速開催されたのが「お花見」です。25年前、ロシアから来日されたコマロフ先生、葉に先駆けて花が咲くソメイヨシノに驚かれたのだといいます。「美しい上に、自然現象としても面白いと感じました。開花時期も新年度ということで、気持ちの区切りにもなりますね。そもそも私が日本に興味を持ったきっかけとなったのが『桜の枝』(フセヴォロド・オフチンニコフ著)というエッセーでした。そこには自然に寄り添う日本人の繊細な感性が綴られていて、私も来日してすぐに石庭で有名な龍安寺(京都)を訪れたほどです」。海外からの注目を集める日本の伝統、文化・芸術、習俗…私たちも“クール・ジャパン”を再発見していきたいものですね。

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