材料システム設計学分野

教授
成田 史生
助教
栗田大樹

科学技術の進歩を、社会や暮らしにつなげる“複合材料”の力。破壊・変形・疲労に関する研究を通じ、その安全性・信頼性の評価を目指す。

 

単一材料では果たせない優れた特性を持つ「複合材料」。
「複合材料」とは、その名の通り2つ以上の素材からつくられた材料のことをいいます。航空宇宙機器から自動車、ノートパソコン・携帯電話まで、今やさまざまな領域で使用されており、今日の高度な科学技術社会を支えています。母材と強化材を組み合わせることによって、強度、弾性(材料の変形しにくさ)、じん性(材料の粘り強さ)などが向上することは経験的に知られており、7世紀には麻布を漆で張り重ねる乾漆造という技法によって、仏像などがつくられていました。さらに先人の知恵をさかのぼれば、補強材としてワラくずを混ぜた土壁などもあります。ちなみに私たちの身体を構成する骨や歯も複合材料の仲間に入ります。
複合材料は単一材料では到達できない特性を実現し、さらには設計のための自由度が高いため、多様で優れた特質を備えた複合材料が次々と生み出されています。とりわけ航空宇宙・超電導応用機器、微小電気機械システム(MEMS)などの先端技術分野に活用される複合材料システムは、人命はもとより社会情報システムの中枢を担っていることもあり、設計ならびに安全性・信頼性の評価が非常に重要になってきます。材料システム設計学研究室では、弾性及び固体の力学に関するコンピュータ解析・実験に基づき、複雑な物性に支配される材料システムの性能と破壊・変形・疲労に関する研究に取り組み、電磁・熱・力学的挙動の総合的解明を行っています。

メゾメカニックス探究のその先に、次世代のスマート材料の可能性。
複合材料システムの設計ならびに安全性・信頼性の評価に当たっては、原子集合体としてのミクロな特性とマクロな機械的特性との関係性を明らかにしていく必要があります。近年、ミクロとマクロの中間的構造(メゾ構造)が、材料全体の特性を形成することがわかってきました。マクロな複合材料システムの全体的挙動に影響を与えるメゾ構造を探究する研究領域が「メゾメカニックス」です。材料システム設計学研究室ではこうしたミクローメゾーマクロスケール間の相互作用を考慮したメゾメカニックス的視点に立ち、先端材料システムの力学・物理特性を解明し、知的・電子材料システム、マイクロシステム等の設計・開発・評価を目指し、計算・実験力学に関するチャレンジングな基礎研究を行っています。将来的には、メゾ構造を制御することで、より高性能な複合材料システムの開発、損傷・破壊の予測が可能になり、アクチュエータ、センサ、コントローラを備えたロボットのようなスマート材料・構造の研究開発につながっていくのではと期待されています。

Projects

巨大科学“核融合炉”実現への一翼を担う「超電導コイル容器の材料設計」

これぞ究極の“ものづくり”、地球上には存在しない過酷な環境に耐えうる材料をつくる

トカマク型国際熱核融合実験炉ITERの超電導コイルシステム

エネルギー問題の救世主、“地上の太陽”核融合炉。

エネルギー問題を半永久的に解決する有力候補として待望され、国際協力の下、研究が推し進められているものに「核融合エネルギー」があります。現在、カダラッシュ(フランス)に建設中のトカマク型国際熱核融合実験炉ITER(イーター)は、日本、EU、ロシア、米国、中国、韓国、インドの7極が協働して取り組んでいる大規模プロジェクトであり、我が国が先導的な役割を果たしています。
核融合反応とは、ごく簡単に言えば、水素やヘリウムのような軽い原子がぶつかって、ひとつの少し重い原子ができる現象をいいます。この時、わずかな質量を失う代わりにとても大きなエネルギーを生み出します。こうした核融合反応に基づく熱エネルギーによって発電を行なおうというのが核融合炉です。太陽を始め、宇宙空間で光り輝く恒星の内部で起きているのは核融合反応。核融合炉が“地上の太陽”と呼ばれるゆえんです。
核融合の難しさのひとつに、その反応を長時間維持させることが技術的に非常に困難である点が挙げられます。現在検討されているのは、“高温高密度のプラズマ”状態にし、超電導コイルによってつくられた強力な磁力線のカゴの中に閉じ込める方式です。プラズマの温度は、1億℃以上。核融合炉機器の材料は、高速中性子をはじめ、さまざまな高エネルギー粒子や超高温・極低温、強磁場に耐えなければならず、それは地球の自然界には存在しない過酷な環境下に置かれることを意味します。

核融合炉実現に向けた最も大きなハードルのひとつ=材料開発。

世界中の知見と英知を集めて研究が推進されている国際熱核融合実験炉ITERは、まさに“巨大科学”の集積といえるものですが、中でもすべての基盤をなす“材料技術”は、他の要素技術に先んじて確立される必要があります。
材料システム設計学研究室が担うのは、超電導コイル容器(構造物)の材料設計。ITER機構の厳しい品質管理に基づくオーダーは、極低温下(-270℃程度)でピアノ線並みの高強度に加え、強じん性をもつ大型鍛鋼品であり、もちろん人類未踏の材料開発となります。すでに鉄鋼メーカーとの共同研究により、高強度ステンレス鋼の開発・評価に成功しています。
環境への負荷が少なく、資源量、供給安定性、安全性の面で優れ、人類の恒久的なエネルギー源として期待される核融合炉の実現に向けて、材料システム設計学研究室の先進的な取り組みがその一翼を担います。

Topics

受け継がれるスポーツマインド『文武両道・材料システム設計学研』
頭だけでなく、体も鍛える!

そもそもスポーツが好きなのか、それとも研究室の雰囲気に刺激されてスポーツ好きになるのか…鶏が先か、卵が先か ? 的な詮索はさておき、“ 頭だけではなく体も鍛えよう”という文武両道精神が脈々と受け継がれる材料システム設計学研究室。運動会や各種球技大会などの学内のスポーツイベントだけで飽き足らず、「ママチャリ6 時 間 耐 久レース」や「氷 上 綱引き大 会」など、企業や自治体が開催する変わり種大会に “ 遠征 ” するほどの力の入れようです。さては賞品狙い? いえいえ楽しい時間を共有することが一番の目的です、とスポーツマンらしい爽やかな回答。マテリアル・開発系の駅伝大会では虎視眈々と頂点の座を狙う材料システム設計学研究室の面々(笑)。走り込みにも力が入ります。

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