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材料システム計測学分野

教授
三原 毅
准教授
小原良和
助教
辻 俊宏

構造物の健全性を評価、壊すことなく内部を視る超音波技術。計測限界を超えるためのセンサー開発から、大振幅超音波に挑む。

 

主役は超音波映像化技術
非破壊検査技術の正念場はコンクリート?

「かんじんなことは、目に見えない(サン=テグジュペリ、フランスの作家・操縦士)」とは実に示唆に富む言葉ですが、構造物や機械部品においては、内部の目に見えない有害なきずや欠陥が、深刻な事故を引き起こすことがあります。そこで重要となるのが、検査対象を壊したり傷をつけたりすることなく内部を視る「非破壊検査」です。
原子力/火力発電機器、航空・宇宙機器といった工業部材では既に、信頼性が高く、携帯性に優れた超音波法が、構造物の欠陥寸法を2次元計測することで、強度を保証する体制が確立しています。しかし高い信頼性での検査が難しい部材も存在し、非破壊検査技術の継続的研究が求められています。
我国では、少子化・高齢化の中で、戦後一斉に建設されてきた社会インフラの老朽化が大きな社会問題になりつつあります。老朽化したインフラの全てを建て替えることが不可能な財政の中で、非破壊検査で強度が低下した部材を見つけ、限定的に補修・交換することで部材の寿命を安全に伸ばす技術であり、構造物の言わばお医者さんです。
特にコンクリート部材は、モルタル中に骨材(石)や鉄筋が混ざった検査の難しい材料で、これまでは定性的な目視検査や打音法に頼ってきました。これまで鋼構造インフラで利用されてきた定量非破壊検査が、コンクリート部材でも実現できるのか、検査技術は新しい挑戦のフェーズを迎えています。
三原研究室ではこれらの研究領域を、これまで研究・開発してきた様々の超音波技術を武器にして、こじ開け、道筋をつけようと研究を進めていきます。

学生の研究成果をフィードバック。産業界の要請に応えられれば本物。
非破壊検査の超音波法では、検査対象に合わせて低周波(kHz域)から高周波(10MHz以上)まで広い帯域を使用します。前者は微小な欠陥を検出することは困難ですが、散乱減衰に強いという特徴があり、後者はナノメートルオーダーの高分解能を有する一方で減衰しやすいというトレードオフがありました。現在、三原研究室がターゲットとする柱の一つは、大振幅超音波送信技術の確立。大振幅超音波と様々な計測技術を組み合わせることにより、これまで対象とされてこなかった検査体への展開や、不可能とされてきた欠陥の検出を目指しています。
三原研究室の研究・開発スタイルは、学生が基礎研究を地道に進めながら、様々のジャンルの産業界における、非破壊検査の課題や問題にアンテナを張り、進行中の基盤技術の実証先としてマッチすれば、積極的に共同研究に取り組みます。大学の研究が、社会にどう反映されるかを実感できるのは、学生を含む研究者の醍醐味であり、これらを積み重ねることで社会の安全・安心を支える本物の計測技術が創出できるのです。

Projects

サブハーモニック超音波計測SPACE

これまで識別が困難だった“閉じたき裂”をターゲットに。非破壊検査の新しい可能性を拓く

入射した超音波の周波数とは、異なる反射に着目。

機械部品や構造部材の健全性を保証するためには、きず・欠陥の大きさや状態を精密に計測し評価することが求められます。超音波法では、送信探触子に電圧を与えて超音波パルスを発生させて、検査対象に照射し、欠陥や損傷に当たって反射したエコーを受信探触子で受けて、構造物内部の状況を把握します。この場合、開口しているき裂からは明瞭なエコーが反射されるため、検出に際して大きな問題はありません。一方、超音波が透過したりノイズが発生したりして識別が困難になるケースとして、一旦は、き裂が生じたものの溶接の残留応力などにより「閉口したき裂」や、応力腐食割れの複雑形状き裂、ステンレス鋼や鋳造材料の溶接部などがあります。これらの箇所では、き裂や損傷などが存在するにもかかわらず、き裂からのエコーが不明瞭になることが問題の1つです。
検査の現場を悩ませてきた課題にアプローチする三原研究室では、周波数ωの超音波を入射した場合とは異なる帯域(ω/2、サブハーモニック波)が、き裂部から発生する特有の現象に着目。こうした非線形超音波を利用したSPACE(Subharmonic Phased Array for CrackEvaluation)を独自に開発し、従来の探傷計測装置では評価の難しかった閉口き裂の検出とサイジングに有用であることを示してきました。

合理的な評価と運用。“もったいない”を科学の目で見つめる。

探傷用サブハーモニック画像装置・SPACEのさらなる識別能力の向上にむけて、鍵となるのが「大振幅超音波送信技術」の確立と、サブハーモニック波の発生機構の定量的解明です。
三原研究室では、超音波探触子(送受信)の製造とパルサーの設計・試作、その最適な組み合わせの探索に取り組み、これまで誰も到達したことのない大変位超音波発生に挑んでいます。また、様々な大きさと形状のき裂におけるサブハーモニック波の挙動を解析し、それらの成果を計測システムの改良につなげることで、SPACEの適用範囲を拡大していくことを目指しています。
微小で複雑な欠陥の検知と検査プロセスの簡便化を両立するSPACEは、非常に高い強度保証が要求される原子力/火力発電機器、航空宇宙などに限らず、経年対策が急がれる橋梁・高速道路・トンネルなどのコンクリート構造物、電子部品の薄膜積層製品の剥離探傷など、広範な分野での活躍が期待されています。
持続可能な社会に向けて、スクラップ&ビルドや大量生産・大量消費 / 廃棄型の社会経済システムから、合理的な評価に基づく社会資本の運用が求められています。非破壊検査法は “もったいない”を科学の目で見つめます。

Topics

イノベーションの萌芽がここに?!『こけし絵付け体験』
誰も描いたことのないものを!

この春(2015年4月)から始動した三原研究室。第1回目のイベントは、県内屈指の桜の名所「白石川堤一目千本桜」行きを計画していましたが、当日の天気予報はあいにくの雨。そこに「こけしの絵付けをしてみたい」とのリクエストが…。県外出身者はもちろん、宮城県が地元という学生も意外に体験していないことがわかり、一路、日本三景・松島へ。この機会に、牡蠣食べ放題”も楽しみます。
赤・黒・黄(伝統こけしに使われる色)の絵具を前に「懐かしー」などと軽口を叩いていた一同も、白木のこけしを渡された途端、無言に。勉強に匹敵する(?)集中力を発揮して、世界に一つのこけしを完成させました。作品は、ネコ、アニメのキャラクター、太陽の塔(岡本太郎作)と様々。自身の豊かな感性と独創性を思う存分発揮しました。いつの時代も革新の生むのは、とらわれのない自由で柔軟な発想。三原研の今後に注目ですね。

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