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電光子情報材料学分野

教授
小山 裕
准教授
田邉匡生

発生と検出の困難さで知られる、人類未踏のテラヘルツ波。有益な特質を活かすキラーアプリケーションの創製を目指して。

 

「光」と「電波」、両方の特徴を持つ不思議な電磁波、その無限の可能性に注目。
「周波数」とは、電気振動(電磁波や振動電流)などの現象が、1秒間にどれくらい繰り返されるかを示す尺度で、Hz(ヘルツ)という単位が用いられます。「1MHz(1メガヘルツ)」といえば1 秒間に100 万回の波が繰り返されます。周波数は有限な“ 公共資源”であるため、公平かつ能率的に利用されるよう国際機関や国の担当省庁によって、ルールや法律が整備されています。中でも300MHz-3GHzの極超短波(UHF : Ultra High Frequency)は、地上波テレビ、携帯電話、無線LAN、アマチュア無線などに利用される“ 使い勝手”のよい周波数帯で非常に混雑しています。
一方で、非常に大きな潜在力が知られていながら、未開拓・未使用に留まっている電磁波に「テラヘルツ波(THz)」があります。こちらは1 秒間に1 兆回振動する波の周波数です。テラヘルツ波の波長は、エックス線や可視光などの“光波”と、ラジオ波などの“電波”の境界領域にあります。光波のまっすぐ進む性質と、電波のように物質を透過する能力、その両方の特徴を併せ持つ不思議な電磁波です。そうした特性を活用して、構造物などを壊さずに内部を調べる方法や、空港等のセキュリティチェック、さらには物質の物性や状態を分子レベルで解析できることから医療や創薬など、幅広い分野での応用が期待されています。放射線の一種であるエックス線などと異なり、人体への影響がないことも大きな利点です。

工学の使命。社会や暮らしに役立つテラヘルツ波の応用を視野に。
テラヘルツ波の研究開発にあたって最も大きな課題となっているのが、発振(発生)と検出が困難というものです。小山研究室では半導体などの結晶を用いて、テラヘルツ波を“効率よく機能的に発生させる装置”と、テラヘルツ波を“ 社会や生活に役立つものとして応用する技術”、二つの方向から研究にアプローチしています。
前者は、分子・原子精度の材料プロセス技術(ナノテクノロジー、ナノプロセッシング)により、テラヘルツ波の高周波動作が可能となる極微細電子デバイスや連続発振デバイスを実現しています。応用面では、電線内部の銅線の状態を、非破壊で外部から可視化することに世界に先駆けて成功しています(詳しくはPick upをご覧ください)。工学とは、科学技術と暮らしを架橋する学問である、と考える小山研究室。目指すは、テラヘルツ波を利用した「キラーアプリケーション」、私たちの暮らしを変える“使える”技術の誕生に期待が集まっています。

Projects

未開拓領域の電磁波・テラヘルツ光を用いて絶縁被覆内部の電線を、非破壊・安全にイメージング

新しい光で、新しい世界を見る。

テラヘルツの周波数位置

幅広い分野での応用に期待!人類未踏のテラヘルツ波。

テラヘルツ波…少し聞き慣れない言葉かもしれませんね。ヘルツ(Hz)は周波数・振動数の単位で、電磁波や音波などの波の周波数を表す際に用いられます。1ヘルツは「1秒間に1回の周波数・振動数」と定義され、周波数の高い方からエックス線、紫外線、可視光、赤外線、電波と呼ばれます(右下図)。ちなみに数年後の実用化が想定される携帯電話・スマートフォンの第4 世代移動通信システムは、3.4 ~3.6GHzの周波数帯が国際分配されており、さらに国内においても担当省庁によって各携帯電話会社に周波数帯が割り当てられます。周波数は限られた資源、というわけです。
テラヘルツ波(THz、テラは1012=1兆)は、0.1から100テラヘルツの広い領域に当たり、光と電波の境界に位置します。レーザー光線のように直進する「光」の性質と、物質を透過する「電波」の特徴を併せ持つ不思議な電磁波です。テラヘルツ波は、発生と検出が難しく、長い間手つかずの状態にありました。しかし、光と電波、両方の特質から得られる有用性が示され、セキュリティー、医療・薬学、食品科学、半導体産業、農業など非常に幅広い分野での応用が可能であることがわかってきました。その大きな潜在力・可能性に向けて、世界中の研究者・科学者たちが“人類未踏のテラヘルツ波”に向き合い始めたのです。

電線内部を壊さずに可視化する技術を世界に先駆けて開発。

小山先生の研究グループは、テラヘルツ光が絶縁被覆材料(ポリエチレンなどの樹脂)をよく透過し、一方で電線素線である金属(銅など)では反射されるという特徴に着目。独自の小型テラヘルツ光源として、様々な周波数を発生させる半導体電子デバイスなどを用い、絶縁電線の内部をイメージングするための光学装置を設計しました。これにより世界に先駆けて、電線内部の様子を明確に示すことに成功しました。
現在の電線点検作業は、配電を停止させたうえで(停電)、熟練した作業員が経験と勘に基づき、絶縁被覆材料の上から目視で、内部の電線素線の腐食状態を判断しています。一方、テラヘルツ光を用いた検査方法では、停電させることなく、非破壊で的確に被覆材料内部の様子をチェックできます。さらはエックス線などの放射線と異なり、人体にも安心・安全です。 最近、国内の社会インフラの老朽化が取り沙汰されています。機能を維持・管理しながら使い続けていくためには、保守点検が要となります。前述の技術は、橋梁やコンクリートなどの構造物、また塗装膜の下にある金属構造物などの亀裂や腐食探知への応用が大いに期待できるものです。テラヘルツ光を使った“キラーアプリケーション”が持続可能かつ安全で安心できる社会の姿を見守ります。

Topics

和気あいあいの源!『月イチボーリング大会』
腕前は“キャリア”の長い上級生に一日の長。

風通しのよい研究室にしよう、しっかりコミュニケーションを図っていこう―とはいうものの、先輩-後輩の垣根を前に、遠慮したり、必要以上に空気を読んだりしてしまうもの。小山研究室の賑やかで和気あいあいとした雰囲気は、月に一度のボーリング大会によって育まれているのかもしれません。開催されるのは、ゼミが終わった金曜日の夜。この日の発表に備えて、根を詰めてプレゼン資料を作成した学生さんたちにとっては、ほっとひと息の開放感にあふれる日です。ゲームはチーム戦で、毎回違うメンバーと組み、親睦を深めあうように配慮。日程調整やチーム分けは、「ボーリング係」に任命された学部4年生が担当しています。“小山研の伝統のともし火を守るように”と受け継がれてきたボーリング大会も早6年の歴史。もちろん楽しいから続けられています。

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