Research Subject

チタン材料のβ粒成長に及ぼすイットリア析出粒子の影響

    はじめに

     
     チタン材料は優れた比強度、耐食性、生体適合性を有し、建材や宇宙航空分野のエンジン部材といった工業用途の利用だけでなく、生体材料やメガネフレームなどの民生用途でも幅広く利用されている。構造部材としてチタン材料の優れた強度特性を生かすため、鍛造による成型加工が行われることが多い。チタン材料の熱間鍛造は、まず変形抵抗の小さいβ単相領域で鋳造組織を壊し、その後仕上げ鍛造をα+β領域で行う。仕上げ鍛造をα+β領域で行うのはβ単相領域での粒成長速度が極めて大きく、一度粗大な組織となったミクロ組織の微細化が困難なためである。β単相領域での粒成長を抑制するために、当研究グループでは希土類金属に着目した。
      これまでの研究でイットリウム添加によるイットリア析出粒子が、チタン合金のβ粒成長抑制に効果的であることが明らかとなっている。
     そこで、本研究ではチタン合金へ微量のイットリウムを添加し、β粒成長挙動およびイットリウム添加量がβ粒成長に及ぼす影響を調査することを目的としている。

    Fig. 1 各種希土類金属を添加したTi-4.5Al-6Nb-2Mo-2Fe合金の熱処理温度とβ粒径の関係

     

    研究概要

     供試材はα+β型合金であるTi-4.5Al-6Nb-2Mo-2Feを基本組成とし、これにイットリウムを微量添加した合金を非消耗電極式Arアーク溶解炉で作製した。Ar雰囲気中でα+β 領域である1048 Kで7.2 ksの溶体化処理を行い、水冷した。その後、β単相領域においてAr雰囲気中で種々の保持時間の熱処理を行い、空冷した。熱処理後、試験片中心部を切断し、鏡面研磨後にフッ硝酸(H2O:HNO3:HF=85:13:2 in vol.%)でエッチングを行い、光学顕微鏡を用いた組織観察により平均β粒径を測定した。


    Fig. 2  0.1%イットリウム添加Ti-4.5Al-6Nb-2Fe-2Mo合金の(a)溶体化処理後および(b)1573 Kにて60 s熱処理後の組織写真