Research Subject

生体用Co-Cr-Mo合金における炭化物析出とその制御

    はじめに

     
    Co-Cr-Mo合金は優れた機械的特性や高耐食性といった特徴を有し、特に耐摩耗性に優れていることから生体材料として人工関節や歯科用義歯床などに応用されている。現在用いられている生体用Co-Cr-Mo合金は大きく鋳造用と加工用とに分類できる。鋳造用合金は鋳造欠陥の除去や延性の向上を目的とした溶体化処理やHIP処理と組み合わせることで、炭化物析出に起因する高耐摩耗性を利用している。一方、加工用合金は逆に炭化物析出を抑制し、熱間加工性を向上させる研究が行われている。しかし炭素は加工性に優れたfcc相を安定化するため、炭化物が析出しない状態では加工性の向上が期待される。従って加工用においても固溶炭素の利用が重要となる。このように鋳造用、加工用いずれにおいてもCo-Cr-Mo合金の特性を十分に引き出すには固溶炭素や炭化物相の制御が重要である。

     

    研究概要

    本研究は生体用Co-Cr-Mo合金の耐摩耗性等の特性向上を目的としている。そのためには熱処理に伴う組織変化および炭化物の溶解・析出挙動を系統的に把握し、制御する必要がある。そこで現在は、炭素濃度を変化させた種々の鋳造合金を作製し、それらに溶体化処理および時効処理を施した試料を観察することで炭化物の相や形状変化の分析を中心に研究している。これによって、合金中の炭化物が完全に溶解する溶体化処理条件を炭素濃度から判断できる系統的な結果や時効によって析出が確認される熱処理条件などが得られている。今後はより詳細な研究を進めることで炭化物の溶解・析出挙動の体系化を目指す。


    Fig. 1 人工股関節:Co-Cr-Mo合金は主に
    骨頭部に用いられている


    Fig. 2 炭素濃度C:0.25%含有したas-cast材の組織
    黒く見える部分が炭化物である