Research Subject

パックセメンテーション法による生体用チタン材料の表面改質

    はじめに

     
     チタンおよびチタン合金は、優れた機械的特性・耐食性や生体適合性と共に、骨組織と光学顕微鏡レベルで直接密着する特性(オッセオインテグレーション)を有するため、インプラント材料として利用されている。しかしながら、チタンが骨組織に固定されるには3ヶ月程度の比較的長期間が必要とされ、埋入直後に応力負荷できないことが問題となっている。
     骨-インプラント間の迅速で強固な密着を達成するため、骨の無機成分の大半を占め、骨と優れた結合性を持つリン酸カルシウムのコーティングが有力な方法と考えられている。チタン材料へのリン酸カルシウムコーティングで実用化されているのがプラズマスプレー法であるが、コーティング膜と基板の密着性や生成相の制御の点での問題が報告されている。
     そこで本研究では、コーティング方法としてパックセメンテーション法(PC法)に着目した。PC法とは、るつぼに粉末を入れ、その中に試料を埋入して熱処理することで試料の表面改質を行う方法である。他のコーティング方法に比べ安価でかつ簡便な手法であり、粉末の組成を変化させることで生成相の制御も可能である。これまでに行われたチタン材料のPC法の研究としては、Al, Si, Bなどのコーティングによる耐摩耗性の向上などがあるが、リン酸カルシウム系粉末を用いたコーティングは未だ報告されていない。
     そこで本研究では、リン酸カルシウム系粉末を用いたPC法によりチタン材料の表面に反応膜を作製し、その生成に及ぼす各種処理条件の影響を調査する。

     

    研究概要

    本研究では、供試材を工業用純チタン(JIS2種、10×10×1 mm、鏡面研磨)、粉末をHAp等のリン酸カルシウム系粉末、雰囲気を大気、Ar、真空および水蒸気、熱処理温度を773 K〜1073 K、熱処理時間を3.6 ks 〜259.2 ksとして、PC法を行う。
     膜の分析として、XRD(α-2θ, α=1°)で相同定、OM, SEM, TEMで組織観察、EDX, EPMAで組成分析を行う。また、疑似体液浸漬および密着力測定を行い、膜の生体適合性を評価する。