金属プロセス工学講座

教授
長坂徹也
准教授
三木貴博
助教
平木岳人

資源小国・日本を支える研究開発力と技術力。
英知と探究心で、次代に求められる物質循環社会の姿を描く

エネルギー・コスト・CO2をカットして、高純度・高品質の鋼づくりを。

高度経済成長期には“産業の米”(産業の中核を担うもの)と称された鉄鋼。1980年以降はその呼称を半導体製品に譲り渡すことになりますが、今でも国力・産業力の基盤としての位置づけは変わりなく、日本では年間約1億トンもの鋼が製造されています。鉄に炭素とさまざまな合金元素を加えてつくられる合金鋼は、優れた特性を持っており、これまで用途やニーズに応じて多様な合金が開発されてきました。例えば、鉄とクロム・ニッケルの合金であるステンレス鋼は、みなさんもご存知のことでしょう。しかし、資源に乏しい日本では、鉄鉱石を始め、クロム・ニッケルなどの重要な合金元素もほぼ全量輸入に頼っています。
長坂研究室では、製鉄プロセスにおける物理化学的・反応工学的研究を通じて、少ないエネルギー・時間・コスト、CO2排出量で高純度・高品質の金属を製造する方法を探究しています。これは今の時代に求められる省エネルギー、環境低負荷にも沿うものです。また、合金をつくる際には、不純物を取り除く必要がありますが、典型的な不純物である酸素を効率的に除去する方法の開発にも取り組んでいます。この技術は、様々な合金に適用できる可能性を持つものであり、大きな期待を集めています。

製鋼プロセスの“もったいない”に着目。スラグの有効活用を提案。
鉄鋼製造プロセスにおける“もったいない”への取り組みも長坂研究室の特徴。副生成物として産出される製鋼スラグには、悪影響を及ぼす不純物として徹底的に除かれるリンを始めとして、鉄やシリコンなどの酸化物も含まれています。製鋼プロセスにおいては邪魔者とされるリンですが、実はこちらもほぼすべてを輸入に依存する貴重な資源です。そこで製鋼スラグから、磁気分離によってリンを分離・回収する技術を開発(特許出願中)。現在、大部分が埋め立て処理されている製鋼スラグの大幅削減を実現するとともに、物質循環にも資する技術です。他にも製鋼スラグに関する取り組みとしては、藻場・干潟の造成基盤として再利用し、海洋植物を繁殖させ、海中の環境修復ならびにCO2吸収・固定化するプロジェクトが着々と進められています。
日本は資源小国ですが、世界に誇れる卓越した研究開発力、そして技術力があります。それらの可能性が、次代に求められる持続可能な環境調和型社会をつくる底力となっていくことでしょう。

Projects

リンのマテリアルフロー分析+製鋼スラグからのリン回収技術の開発

分析と技術開発―両輪で推し進めていく物質循環と再資源化。
持続可能社会構築への解を求めて。

日本におけるリンのマテリアルフロー(2005年)

タイタニック沈没の陰に“リン”あり?

大ヒット映画で知られる豪華客船「タイタニック」。氷山にぶつかった船体が二つに破断し、沈没した原因については諸説ありますが、そのひとつに「リン(P)」が挙げられているのをご存知でしたか? タイタニックの建造に使われた鋼板は当時の最先端技術でつくられていましたが、鉄鉱石などから不純物を十分に除去できなかったとみられ、現代の鋼に比べると4倍以上も多くリンが含まれていました。リンの含有量の多い鋼板は、低温で脆くなる性質があります。事故当時の周辺海域の水温は、マイナス2℃だったといわれています。
さて、ここからはリンのお話です。窒素やカリウムと並ぶ植物の三大栄養素であるリンは、化学肥料の原料に使われるほか、金属の表面処理剤、工業用触媒、食品添加物の原料として大量に使われています。また、人間にとってもリンはDNA合成のために欠かせないものであり、生命をつなぐ重要な元素です(通常、私たちは食物を通じて摂取しています)。しかし、資源小国である日本は、リン鉱石の全量を輸入に頼っています。主な産出国は、中国、アメリカ、モロッコであり、我が国の資源セキュリティの強化という観点からもリンの資源循環を考えていくことが急務とされています。

再利用されぬまま。製鋼スラグというリン資源

冒頭ご紹介した通り、リンは鋼にとって最大の不純物元素であるため、製鋼プロセスで徹底的な脱リン処理が行われています。銑鉄(せんてつ;高炉や電気炉などで鉄鉱石を還元して取り出した鉄)に含まれる炭素やリン、硫黄などを取り除き、粘り強い鋼に精錬するときに生まれた酸化物を製鋼スラグ(年間1,000 万トン以上発生)といいますが、それには鉄鉱石のリンがほぼ全量移行しています。長坂研究室の分析によると(リンのマテリアルフロー、右図参照)、リン鉱石の輸入量(約10万トン/年)に匹敵する量のリンが製鋼スラグに含まれています。製鋼スラグは、まさに新しいリン資源ともいえますが、これまでほとんど利用されていませんでした。
長坂研究室では、マテリアルフロー分析や廃棄物産業連関マテリアルフロー分析といった手法を用いて、国内に流通するリンの量などを調べ、回収・再資源化の可能性を模索するとともに、製鋼スラグからリンを回収する技術の開発に取り組んでいます(特許出願中)。こうした「資源循環の全体を俯瞰する視座・分析力」と「再資源化を実現する技術開発力」が両輪をなすことにより、次世代の持続可能な社会づくりが加速度的に推し進められていくことでしょう。

Topics

海風に吹かれてのんびりと『釣り合宿』
釣った後はクッキングタイム、海の恵みに感謝しつつ…。

なぜか伝統的に? 太公望が多い長坂研究室。毎年夏と秋には、「釣り合宿」と称して、東北各地のポイントに繰り出します。昨年は、酒田(山形)で波止釣りに挑戦。釣果はアジ一束(100匹)に、メバル・カレイ、サヨリなど。キッチン付きのコテージで、海の恵みに感謝しつつ早速調理。お造り、素揚げ、鍋など、和食レストランも顔負けのメニューが並びました。寿司店でアルバイトをしていた学生さんの手による握り寿司も振る舞われ、大好評。……と、ここまでの話を傍らで聞いていた4年生の学生さんが「僕も釣りが好きです!」と笑顔で申告。今年の合宿が楽しみですね。 左の写真は、長坂研究室が年に一度新調するユニフォームとパーカー。サッカーや野球大会では揃いのウェアで、まずチームワークの良さをアピール。実力の程は……聞きそびれました(笑)。

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