研究拠点形成事業 A.先端拠点形成型(令和2年度)
IoT社会を実現するマルチ環境発電材料・デバイス 国際研究拠点形成

事業概要

研究交流目標

環境発電材料は,普段の生活環境において活用されていないエネルギー(振動・衝撃,熱,光,電波など)を電力に変換するための材料であり,電源を必要としない真の IoT(Internet of Things; モノのインターネット)社会の実現に極めて重要である.しかしながら,現在開発が進められている環境発電材料の多くは,発電量が小さい上,脆性であるなどの理由で寿命が短く,加えて,発電効率を向上するための材料組織や形状に不明な点が多いことから,実用化に至っていない状況にある.したがって,高性能環境発電材料の設計手法確立と環境発電デバイスの開発が急務である.

本事業では,長年電磁材料の研究に取り組み,かつ現在も材料学分野で世界をリードしている東北大学工学部・環境科学研究科に,環境発電材料・デバイス研究の加速的な発展を可能とする教育・研究拠点を形成することを目指している.そのために,力を電気に直接変換する圧電材料,熱を電気に直接変換する熱電材料,コイルを介して力によって生じる磁場の変化を電気に変換する磁歪材料を対象に,環境発電材料分野において第一線で活躍するイギリスおよび中国の研究者と連携し,国際共同研究体制を構築して,マルチ環境発電デバイスを開発するための学術基盤を確立する.また,マルチ環境発電材料・デバイスに関する国際交流セミナーと交換留学・インターン制度を実施し,材料科学・機械工学・電子物理学などを融合した学際的分野で活躍できる若手研究者育成プログラムを確立する.若手研究者の育成により,持続的な環境発電材料・デバイス研究が可能となる上,本事業を通じて育成された若手研究者が大学や研究所ではなく産業分野へ活躍の場を移しても技術者として産学連携を推進できる体制を築くことで,事業終了後には企業も含めた国際共同研究拠点として展開し,環境発電デバイスの早期実用化を目指す.本事業を通じて得られた知見は,自動車,航空宇宙,スポーツ分野だけでなく,歩行などの生活の中で生じる運動・熱エネルギーを回収して駆動できるデバイスの提案を可能とし,社会へ与えるインパクトは極めて大きい.

研究交流計画の概要

本事業では,国際共同研究(①)として3つのタスクを設定し,交流相手国の研究者と連携しながら進める.定期的なビデオ会議により研究進捗状況を把握することで,参加機関が日常的に交流する機会を設ける.また,年に1度セミナー(②)を参加国の持ち回りで実施し,その後の持続的な連携および共同研究継続を目指す.セミナーでは,各機関に所属する若手研究者・学生に事業を通じて得られた成果報告の機会を与えると同時に,英語能力の向上と国際感覚を養う機会とする.さらに,定期的なビデオ会議の他,研究者交流(③)として,それぞれの機関に所属する若手研究者・学生が交流国の機関へ数ヶ月単位で滞在し,双方向型の滞在型共同研究を実施する.

①共同研究

  1. マルチ環境発電材料・デバイス挙動の理論的研究(東北大学・マンチェスター大学・早稲田大学)
  2. マルチ環境発電材料・デバイス挙動の実験的研究(東北大学・アストン大学・西安交通大学)
  3. マルチ環境発電ナノコンポジット・デバイスの創製・評価(東北大学・清華大学・チェスター大学)

②セミナー

初回は日本(仙台または東京)において開催する.その後,2年目はイギリス,3年目は中国,4年目は日本で開催する.5年目のイギリスにおけるセミナーでは,本事業を総括する.

③研究者交流

月1回程度の定期的なビデオ会議と数ヶ月程度の交換留学・インターンを行う.

上記①~③を効果的に組み合わせ,国際共著論文を執筆していく他,持続的な国際共同研究プロジェクトの推進,大学間交流の活性化,日本人若手研究者の国際感覚養成に努める.

実施体制概念図

実施体制概念図

IoT社会を実現する
マルチ環境発電材料・デバイス国際研究拠点形成

目的

  • 国際共同研究体制を構築してマルチ環境発電デバイスを開発すすための学術基盤を確立
  • 学際的分野で活躍できる卓越した若手研究者の育成プログラムを確立

コーディネーター

成田史生

成田 史生
東北大学 教授

日本に環境発電材料の知見を集約し,環境発電デバイスの実用化を加速的に推進

環境発電材料研究の実験的検討
東北大学&早稲田大学
アストン大学(プロセスに強い)&西安交通大学(センサ応用に強い)

環境発電材料研究の理論的検討
早稲田大学&東北大学
マンチェスター大学(理論に強い)

環境発電ナノコンポジットの創製
東北大学&早稲田大学
清華大学(ナノ評価に強い)&チェスター大学(ナノ印刷に強い)

  • 環境発電材料の学術的な基礎理論・実験知識の蓄積
  • 高性能な環境発電材料の設計および実用的な発電デバイスの提案