高感度反射赤外分光法 | 高速反射電子線回折法 | 低速電子線回折法

高感度反射赤外分光法


Fig.1 表面定在電場の入射角依存性

簡単にいえば、p-偏光を表面に対してすれすれに入射した場合に表面化学種に対する赤外感度が最大となります。これが高感度反射赤外分光法です。

入射赤外光は入射面に対してその振動ベクトルが平行なp-偏光とそれに垂直なs-偏光に分けることが出来ます。赤外光が金属表面に入射するとその表面に入射光と反射光の作る電場の干渉により定在波が形成されます。Fig.1 は定在波の作る表面電場 E の入射角依存性を示しています。p-偏光の作る電場 Ep はすれすれ入射(85度以上)で最大となります。これに対してs-偏光の作る電場は入射角によらずほぼ0です。このため、p-偏光を表面に対してすれすれに入射したしたときに表面化学種の情報が感度よく得られることになります。なお、偏光変調赤外分光法はこのスペクトル感度のの偏光依存性を巧みに利用した方法です。

高感度反射スペクトルにおいては、化学種の膜厚が入射波長に対して十分に薄ければそのバンド強度は比例します。 したがって、定量性に関する議論が可能となります。しかしながら、高感度反射スペクトルは通常の吸収スペクトルとは異なり、吸収係数 k だけではなく屈折率 n の情報が含まれています。このため、有機物の場合はあまり問題となりませんが、酸化物のような比較的屈折率の大きな無機化合物を測定対象とする場合はピーク位置やバンド形の解釈に注意が必要です。そのような場合クラマースクローニッヒ変換等を用いたスペクトルの議論が不可欠です。


高速反射電子線回折法


Fig.2 RHEEDの測定原理と強度振動

Fig.2に示すように、高速反射電子線回折法においては数十keVオーダーの電子線を試料表面にすれすれに入射し、回折像を得ます。電子線が本来物質と強く相互作用すること、さらに電子線をすれすれに入射することから、入射電子線の潜り込みは試料表面から数原子層にとどまり、したがって表面に敏感な回折像を容易にリアルタイムで得ることが出来ます。さらに超高真空中におけるRHEED装置配置の自由度からMBE薄膜成長過程におけるその場観察が可能となるといったユニークな特徴を有しております。


低速電子線回折法

Fig.3 LEED測定の模式図

低速の電子線(100 eV程度)はド・ブロイの関係式(\lamda(in A)=(150/eV)1/2)からわかるようにオングストロームオーダーの波長に相当します。これらの波長はちょうど試料表面の格子間隔にあたり、入射電子線は表面で回折を起こします。また電子線は本来物質と強く相互作用するので、入射電子線の潜り込みは試料表面から数原子層にとどまり、表面に敏感な回折像を得ることが出来ます。つまり低速電子線回折法によれば表面逆格子の”地図”を得ることが可能で、そのパターンを見れば容易に吸着化学種を含めた試料表面の対称性を知ることが出来ます。