ロールモデルになる先輩方の働く姿をご紹介
#10
砂沢 俊哉〔株式会社IHIキャスティングス〕
東北大学大学院 工学研究科
材料システム工学専攻 博士前期課程 修了
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ロールモデルになる先輩方の働く姿をご紹介
#10
砂沢 俊哉〔株式会社IHIキャスティングス〕
東北大学大学院 工学研究科
材料システム工学専攻 博士前期課程 修了
私は岩手県盛岡市で生まれ育ちました。小さい頃から外で体を動かすことが好きで、休み時間には校庭でサッカーをして、放課後はみんなでゲームをやって、週末は野球をしに行く、そんな子どもでした。野球は小学3年生のときに父の勧めで始め、それから高校までの10年間にわたって打ち込むことになりました。
勉強は得意なほうで、理解も早かったと思います。どちらかといえば要領が良いタイプで、進んで努力するなど特別なことはしておらず、学校で言われたことに取り組むだけでテストの点が取れてしまうような子だったと思います。盛岡には盛岡第一高校というトップの進学校があり、両親はそちらに進んでほしかったのかと思いますが、当時の自分の成績面や野球の強さなどを見た上で、盛岡第三高校を志望しました。
岩手の中では盛岡第一に次ぐ進学校と評される盛岡第三高校は、甲子園経験のあるOBが顧問として指導に入っていたことから、野球部が大変盛んで、野球少年だった私はもちろん入部し、文字通り野球漬けの毎日を送ることになりました。朝練のあと授業があり、夕方は暗くなるまで部活に励み、土日は練習試合へと出かけていくような日々が部活を引退するまで続きました。器用で要領が良いほうとは言え、さすがにこのスケジュールで野球に打ち込んでいたので、勉強と部活の両立は簡単ではなく、本格的な受験勉強は部活を引退した3年生の夏からでした。
しかしそこは進学校を看板にしている学校ですので、先生方の手厚いサポートに大変助けてもらいました。具体的には先生方が希望者を対象に物理や化学の補習や添削問題を出してくれていて、そうしたものを見つけては申し込んでどんどん勉強を進めていきました。
高校全体が「行ける人は東北大学へ」という姿勢の学校でしたので、志望校に関しても自然と東北大学が視野に入っていました。高校1年生のときには、東北大学のオープンキャンパスに足を運び、その時初めて「この大学で学びたい」と思ったのを覚えています。模試の判定も悪くなかったため、目標がはっきりと定まり、最終的に東北大学工学部への進学を決めました。
学部の選択については、特に強い希望などはなく、模試の判定が手がかりでした。最初の頃は理学部、工学部、農学部、あと薬学部も候補にしていたと思います。その後志望者数の推移や幅の広さなどを見ながら工学部に絞っていきました。材料系に興味を持ったのは、高校3年生の時にAO入試(現:総合選抜)を受ける際、研究内容について調べていたところ、磁性系の研究が目にとまり、面白そうだと思ったのがきっかけでした。
2012年度に東北大学に入学し、まず感じたのは、周囲のレベルの高さでした。高校までは上位層にいましたのでそれなりにできるつもりでいたのですが、グループで受けるような授業で、一緒に組んだ同級生たちが自分よりも理解が早くて、ただただすごいなぁとびっくりしたものです。最初のうちは教養の授業がメインでしたので、まだついていけましたが、徐々に専門科目が入ってくるともう余裕はなくなっていました。
専攻に選んだ材料系は、金属やセラミックスなど、物質の性質や構造を科学的に解き明かすことに魅力を感じました。授業では物理・化学・数学と幅広く学び、特に化学の専門的な内容では苦労しました。
3年生の終わりに配属されたのは、医用材料を研究する成島研究室です。研究室に入ってすぐ、「雑誌会」というものが開かれました。新たに入った6人の学生に、それぞれテーマを用意してくれていて、テーマに近しい英語の論文を読み、自分の研究であるかのように発表する、というものなのですが、英語の論文に触れるのでさえ初めてですし、専門用語もわからないものばかりでした。それに加えあまり英語は得意な方ではなく、スライドを使っての本格的な発表も経験がなかったので、慣れないことにかなり苦戦したのを覚えています。
この時に与えられたテーマというのが、細くなってしまった血管を膨らませて血流を確保するためなどに使われるステントという医療器具に使われる、コバルト系合金の特性を調べるというもので、学部4年時はこちらの研究を進めました。
修士課程に進んだ後も同じ研究室に身を置き、扱う材料をチタンに変えて研究活動に明け暮れました。文献を読み込み、コツコツと成果を積み上げていくよりも、チームで動き、実際の製品づくりに関わることに興味を惹かれるように感じてきました。同時に研究室での3年間では、粘り強く考え抜く力や、理論をもとに現象を整理する姿勢が身につけられました。
この時に書いた修士論文なのですが、先日業界の研究会で東北大学を訪れた際に声をかけてくれた研究室の後輩が「参考にしています」と言ってくれたのは、なんとも言えない面白さを感じました。
東北大学の材料系での学びは、振り返りますと、外部に行かずとも、すべて学内で完結できるくらい、高度な設備が揃っており、また指導いただいた先生方はトップレベルの実績で知識豊富な方ばかりでした。また知らぬ間に様々な機器を操作するトレーニングができていたように思います。
ここまでは大変な思い出の話が多かったかもしれませんが、もちろんそれだけではありません。ちょうど東北楽天ゴールデンイーグルスの日本一の瞬間(2013年)をサークルのメンバーと飲みながら分かち合ったり、研究室のメンバーとノリで松島ハーフマラソンにみんなで参戦したりと、学生らしい楽しみ方ができたのも、思い出深いです。
修士1年から就職活動を開始しました。地元・東北で腰を据えて働ける会社が希望で、せっかく東北大学に入ったのですから、そのネームバリューを活かそうと、MAST21の中で推薦がもらえるところを重点的に探しました。なるべく転勤が少なく、技術に関われるメーカーを中心に探していたところで出会ったのが、IHIキャスティングスでした。
航空エンジンの中核部品であるタービンブレードを製造していると知り、航空業界であれば将来的にも長く働くことができそうだな、と強く惹かれました。こうして2018年に入社し、相馬事業所の生産技術グループに配属されました。
入社1年目は研修を通じて、製造の流れを一から学びました。外部から依頼された円柱状の試験片の工程を設計し、鋳造し、検査までを自分で経験することで、現場感覚を身につけていきました。その後徐々に開発や工程に関わらせてもらうようになっていきました。
現在は、航空エンジン用部品の鋳造工程設計を担当しています。工業用のワックスで作った模型に耐火性の素材でコーティングして作った鋳型に金属を流し込んで作るのをロストワックス精密鋳造というのですが、製品形状や材質に応じて金属の流れ方や冷却速度を設計し、品質と効率の両立が図れるように工程を考える仕事です。
現在は約30種類の製品を担当し、不具合が発生した際の原因究明と、改善策の立案を行なっています。
学生時代に培った材料学の知識や経験は、今の仕事でも非常に有用です。もちろん医用材料と、現在取り扱っている航空機のための部品は全く違うものではありますが、金属の凝固や組織変化、温度による特性の違いなど、金属の基礎知識はとても役に立っています。そして研究室で何度も繰り返した報告や発表、それに向けたデータの取り方やまとめ方といった取り組みを経験したことがとても生きていると感じています。個人的には得意としていないことでしたが、やっておいて良かったな、と今は思っています。
現在、職場の勤務時間は8時から17時までで、残業は1日1時間ほど。週末は家族と過ごす時間を大切にしていて、特にまだ小さい子がいるので、プライベートもしっかり確保させてもらっている状況です。
今後について考えを巡らせた時、特に現場での工程管理や工程設計の仕事を重視していますが、もしかしたらどこかのタイミングで管理職、という話もあるかもしれません。管理職の場合は、部門間の調整やリソースの配分が主な仕事になります。例えば負荷が高くかかっている工程と、比較的軽い工程を見極めて、人員配置の変更を、規模が小さければ自分で動かす判断をし、工場自体に影響が及ぶような規模なら会社に提案するような仕事になると想像しています。そうなった時も現場感覚を大切にしながらキャリアを描いていきたいと思います。
大企業の子会社ではありますが、相馬工場は比較的小規模ですので、風通しが良く、上層部にも意見を言いやすい環境にあると思います。まだまだ若輩者ではありますが、工程に関して気づいたことや、試してみたいことを進言するとしっかりと聞いてくれますし、場合によっては2、3年目でも先輩のサポートを受けながら大きなプロジェクトの中心的な役割を担うこともあります。ただ、防衛省の仕事など認証がなければ触れることさえできないような責任の重い仕事を担当したりすると、やはり大企業なんだ、と実感したりもしますね。
理系を目指す皆さんには、ぜひ「材料」という分野を知ってほしいです。特に東北大学の材料系と言えば社会的に評価が高いので、将来に向けての武器になるはずです。
私自身、最初から明確な夢があったわけではありません。大学では難しいことも多かったですが、その分誰かに教えてもらったり、困った時に助け合ったりと同級生や先生方とのつながり、コミュニケーションの大切さをここで学ぶことで知りました。
すべての人が研究したテーマに沿った仕事に就けるわけではありませんが、たとえ本心はイヤイヤでも、真剣に取り組んだ学生時代の期間はきっとあなたを助けるはずです。これから東北大学を目指す人には、チャンスが訪れたら適当に過ごすのではなく、その時その時でしっかりやりたいことに集中してもらえると、良いかなと思います。
株式会社IHIキャスティングス
ihi.co.jp/icc/