単一材料では果たせない優れた特性を持つ「複合材料」。
「複合材料」とは、その名の通り2つ以上の素材からつくられた材料のことをいいます。航空宇宙機器から自動車、ノートパソコン・携帯電話まで、今やさまざまな領域で使用されており、今日の高度な科学技術社会を支えています。母材と強化材を組み合わせることによって、強度、弾性(材料の変形しにくさ)、じん性(材料の粘り強さ)などが向上することは経験的に知られており、7世紀には麻布を漆で張り重ねる乾漆造という技法によって、仏像などがつくられていました。さらに先人の知恵をさかのぼれば、補強材としてワラくずを混ぜた土壁などもあります。ちなみに私たちの身体を構成する骨や歯も複合材料の仲間に入ります。
複合材料は単一材料では到達できない特性を実現し、さらには設計のための自由度が高いため、多様で優れた特質を備えた複合材料が次々と生み出されています。とりわけ航空宇宙・超電導応用機器、微小電気機械システム(MEMS)などの先端技術分野に活用される複合材料システムは、人命はもとより社会情報システムの中枢を担っていることもあり、設計ならびに安全性・信頼性の評価が非常に重要になってきます。材料システム設計学研究室では、弾性及び固体の力学に関するコンピュータ解析・実験に基づき、複雑な物性に支配される材料システムの性能と破壊・変形・疲労に関する研究に取り組み、電磁・熱・力学的挙動の総合的解明を行っています。
メゾメカニックス探究のその先に、次世代のスマート材料の可能性。
複合材料システムの設計ならびに安全性・信頼性の評価に当たっては、原子集合体としてのミクロな特性とマクロな機械的特性との関係性を明らかにしていく必要があります。近年、ミクロとマクロの中間的構造(メゾ構造)が、材料全体の特性を形成することがわかってきました。マクロな複合材料システムの全体的挙動に影響を与えるメゾ構造を探究する研究領域が「メゾメカニックス」です。材料システム設計学研究室ではこうしたミクローメゾーマクロスケール間の相互作用を考慮したメゾメカニックス的視点に立ち、先端材料システムの力学・物理特性を解明し、知的・電子材料システム、マイクロシステム等の設計・開発・評価を目指し、計算・実験力学に関するチャレンジングな基礎研究を行っています。将来的には、メゾ構造を制御することで、より高性能な複合材料システムの開発、損傷・破壊の予測が可能になり、アクチュエータ、センサ、コントローラを備えたロボットのようなスマート材料・構造の研究開発につながっていくのではと期待されています。