未来社会の安心・安全を支える、正確な非破壊評価技術
日本で多発する自然災害、また、トンネルや航空機、発電所などでの事故が社会問題となる中、災害が起きても安全に運用・稼働できるインフラの実現や、劣化や欠陥を見逃さない保守・整備体制の構築は、安全・安心な社会を求める国民最大の関心事ともいえるでしょう。
これを持続可能な形で実現するためのキーテクノロジーが、ものを壊さずに内部を調べることができる非破壊評価技術です。橋の崩落などの原因を調べると、表面の傷や割れだけでなく、もっと深い内部に生じた欠陥が原因となっています。
高度成長期以降に整備された社会インフラの老朽化は、今後加速度的に進むと予測されており、複雑な構造物を壊さずに内部の状況を計測するために超音波やX線などを用いた、さまざまな非破壊評価技術の開発が進められています。
超音波計測が主流の現在、実は計測困難な欠陥や材料も
“超音波”は、光が通らない材料の中も真っ直ぐ伝わる性質があることから、航空機や自動車、発電プラントをはじめ、さまざまな製品・構造物内部の致命傷となるキズ(欠陥)の検査に利用されています。
超音波計測の工業応用は、潜水艦探知のためのソナーとして初めて実用化されており、その後、光の通らない材料の内部を見ることができる方法として、材料評価の分野へ応用されました。現在、その技術は産業界で幅広く利用されるほど発展しており、内部を映像で計測できる「超音波フェーズドアレイ」という手法も一般に普及しつつあります。
しかし、いまだに計測できない種類の欠陥(発生初期欠陥、閉じたき裂、複雑形状欠陥など)や材料(コンクリートなど)も多く存在しており、現状を打破する、革新的な計測技術の創出が強く望まれているのです。
世界を変える、小原研の最先端超音波計測技術
私たちの研究室では、複雑な超音波の物理現象を解明し、最新技術(ハードウエアやプログラミング)と融合することで、世界初の計測システムを実現しています。
中でも、それまで不可能とされていた「閉じたき裂」を大振幅の超音波で開閉振動させ、そこで生じる特異な散乱波をとらえて映像化させる技術は、世界初の技術として産業界へ与えるインパクトも大きく、世界中の研究者から大きな反響がありました。ノーベル賞は、MRIやX線CTなど多くの検査・計測技術の開発に授与されています。これは計測技術の発展により、世界が大きく変容するからです。
私たちは、医療が人間の健康や長寿命を支えるように、最先端の「超音波計測技術」の開発により、環境にも経済にも優しい持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。