多元変換機能システム学
多元変換機能システム学
多元変換機能システム学

多元変換機能システム学分野

教授
徐 超男
助教
内山智貴

魔法の光で科学の未踏の地へ
“応力発光体”で見えない世界を虹色に照らす

 

光源がもたらす現代文明
私たちの生活に光は欠かせません。古代から人は光を求め、暗闇では工夫して明かりを用い生活しました。昔は松明(たいまつ) など原始的な炎の明かりに頼っていたものが、現代の世の中ではさまざまな発光体を用いることで、暗闇を明るく照らし多彩な生活を楽しむことができるようになりました。
近年の青色LED (2014年・ノーベル物理学賞)の発明は、私たちの生活を変えるほどのインパクトがあり、いわば光源変革をもたらしました。人類の文明は光源とともに進化し、発展してきたとも言えるでしょう。

電気エネルギーを使わず、“力”で光る物質の持つ可能性
さらなる革新には新しい発光体が必要です。2008年にノーベル化学賞を受賞した緑色蛍光タンパク質は、生体反応で光を放出する物質として、生命科学研究に革命をもたらしました。
LED照明には電気エネルギーが利用されていますが、徐研究室では、電気エネルギーを使わずに、わずかな力を加えることで光る全く新しい材料を実現し、国際的な関心を集めています。それが “応力発光体”です。圧縮、引張、摩擦だけでなく超音波、ミクロな振動により発光する材料で、私たちが発見した、日本発かつ世界初の材料です。
私たちは、現在国内外において、新しい応力発光体の開発やその機構解明といった基礎研究、ならびに応力発光を用いた構造物安全管理、インフラ、モノづくり、エネルギー・環境、AI、IoT、生命等と多岐にわたる応用について研究しています。

近い将来、『飲む発光体』が誕生?
光は診断技術だけでなく、私たちの身体の治療にも活用されています。皮膚の治療法のひとつである光線療法は、アトピー性皮膚炎や乾癬などの疾患に効果があります。発光体は、体表面だけでなく、光が届かない深部へピンポイントに光を届け、治療することも可能なのです。
私たちが開発している生体に毒性のない発光体だからこそ光診断と光治療可能な『飲む発光体』も現実味を帯びています。
私たちは高機能な光の変換材料を開拓し、未来社会に貢献します。発光体の神秘と未来の可能性について、一緒に探求していきましょう。

Projects

新たな応力発光体の設計

応力発光体は、母体となる結晶と発光中心の組み合わせで発光特性が決定されます。すでにさまざまな発光波長(発光色)をもつ応力発光材料の開発に成功していますが、さらなる新機能を持つ発光体の研究も日々進めています。最近力を入れているのは、生体材料への適用を目指した革新な応力発光材料の開発です。
可視光だけでなく肉眼では確認できない不可視域の応力発光体の開発も大きな可能性を秘めています。新しい材料を創ったり、その機能を理解したりするためには、結晶の中の電子のふるまいを明らかにする必要があり、私たちの研究室ではスーパーコンピュータを使って電子のエネルギーを計算し、材料の機能の予測・機構解明を行っています。
本研究は、世の中に天然では存在しえない結晶構造を計算することもできるので、巨大機能を持つ材料を生み出せることも魅力のひとつです。

応力発光体を活用した新規計測・診断技術の開発

橋やトンネル、道路などの大型インフラは、補修・維持管理を適切に行うことで、安全に利用できる状態を保っています。現在、その維持管理には専門家が目視や打診(ハンマーで叩いて音を聞く)によって判断していますが、私たちは応力発光体を使った簡便で短時間の診断技術を開発しています。
例えば、目視できない内部のごく小さなマイクロレベルの亀裂や損傷を、応力発光体を活用した検査や測定によって簡単に見つけることができるというものです。特徴は、発光の強度が損傷の度合いを示すことです。発光が強ければ強いほど、危険度が高いというわかりやすい測定結果が示されます。本研究は環境問題・社会問題の解決に貢献する診断技術であり、実用化を目指して、さまざまな研究機関、民間企業と協力して進めています。
また最近では、新規の風力発電用ブレードの損傷予測と可視化技術に取り組んでいます。外からは見えない大型構造物の内部の劣化診断に、応力発光体を活用した新技術の開発を進めています。

Topics

オリジナルの新ユニフォームが完成

徐研究室は、2023年4月に東北大学に移籍した新しい研究室。応力発光分野で世界のトップを走り続けている当研究室では、日々新しい発見をしており、刺激的な研究生活を送っています。
最近、研究室のオリジナルユニフォームが完成。学生がそれぞれにデザイン案を出し合い、個性豊かなデザイン案から投票によってユニフォームデザインが決定しました。胸には「徐研」の文字、背中には研究テーマである応力発光体を図式化したロゴがあしらわれています。長袖の作業着は研究には欠かせないアイテムですが、メンバーおそろいのユニフォームによってチームワークも強化中。研究へのモチベーションもさらに高まりそうです。