超デジタル化による大量電力消費時代
私たちの社会が毎年のように“便利”になっていると感じられている方は多いと思いますが、それに大きく貢献しているのが情報機器の発展です。身近な例ではスマートフォンやコンピュータの性能向上が挙げられます。
最近では、オンライン会議や講演などのオンライン配信も盛んに行われています。また、パソコン本体ではなく、インターネット上にデータを保存するオンラインストレージも急速に普及しています。
このような大量のデータの処理や保存のためには、私たちが普段意識している以上に多くの情報機器が動作しています。それはすなわち大量の電力を使用しているということに他なりません。
情報機器の低消費電力化を実現する新材料の可能性
齊藤研究室では、情報機器等の電子デバイスの消費電力の低減に、材料科学の観点で取り組んでいます。長らく電子デバイスはシリコンという半導体を微細化することで性能を上げてきました。
ところが、近年、シリコンをこれ以上小さくすることができないその限界が見えはじめ、新しい原理や新しい材料を使ったデバイスの研究が世界的に多く報告されています。これらの材料は、シリコンよりも高性能であったり、またはシリコンでは実現できないことができたりと幅広い応用の可能性を秘めています。ただ、どの材料が一番有望であるかはまだわかっておらず、基礎・応用双方の観点からさまざまな課題を解決する必要があります。
現在、世界中の研究機関や企業から、新しい材料や、その作り方、方式などが発表されており、非常に活況な研究分野となっています。私たちは、従来にはない新しい電子材料の開発や、機能の発現を担う原子・電子レベルでのメカニズムの解明などを推し進めています。
最先端の分析・データ解析技術を駆使したナノスケールの研究
齊藤研究室では、いわゆる実験室にあるような分析装置だけでなく、東北大学青葉山キャンパス内に建設された放射光施設(ナノテラス)を用いた超高精度な分析や、第一原理計算といった物質中の電子の状態を計算するシミュレーションによる計算科学の力も活用しながら、ナノメートルという非常に薄い薄膜で機能を発現する材料の開発を行っています。
新材料を社会実装するために重要なことのひとつは、なぜそのような特性が得られるのか、どういったメカニズムでその現象が起きているのかについて明らかにすることです。どうしてかわからないけれどもうまく動作している、というのは、基礎研究ではありがちですが、実用化するためには、“何故”という問いに答えなければいけません。
最先端の材料研究手法を駆使することで未知の材料の“何故”に答え、これからの社会に求められる材料を産み出していきます。