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スピン情報材料学分野

教授
杉本 諭
准教授
手束展規
助教
松浦昌志

“材料”はいつの時代も、文明・社会の発展と二人三脚。そして今、夢のデバイス誕生前夜。材料の歴史が動く。

 

快適便利な現代社会を支える縁の下の力持ち・磁性材料。
古くは土器、青銅器、鉄器…人類は地球の資源を利用して“ 材料”を創り出すことで、文明を飛躍的に進歩発展させてきました。今や“材料”なくして21 世紀の科学技術、とりわけ工学分野は存立し得ないといわれるほどです。例えば永久磁石(ネオジム- 鉄-ボロン系)。これは、ハイブリット自動車の駆動モータ、パソコンのハードディスクドライブ、携帯電話のスピーカーや振動モータになくてはならない材料です。こうした機器のさらなる性能向上、省エネルギー、小型化のためには、ネオジム- 鉄-ボロン系永久磁石の磁気特性の向上が不可欠であり、さらにはこれまでになかった性能を持つ新しい永久磁石の登場も待たれるところです。
杉本研究室では、前述の『永久磁石』、『高周波磁性材料』『スピントロニクス』の3つを研究の柱としています。「高周波磁性材料」とは、利用拡大の進む高周波帯域(携帯電話や無線LAN、ETCなどに割り当てられています)で活躍する磁性材料のこと。近年問題となっている“電磁干渉”(電子部品が不要な電磁波を拾うことで誤動作やエラーを引き起こす)を防ぐ「電磁波吸収体」等の開発や、機器内部やコンピュータのCPU内でノイズを抑制する材料の研究に取り組んでいます。これの磁性材料は普段私たちが目にすることはありませんが、快適で便利な現代社会をつくりだすまさに“ 材料”なのです。

新デバイスが、薄膜100年の歴史を書き換える?!
半導体工学(電荷)と磁気工学(スピン)をナノレベル(10 億分の1メートル)で制御・融合させることで、新しいエレクトロニクスを創製する研究分野が『スピントロニクス』です。これを利用した発展途上のデバイスとしては、不揮発性(電源が供給されなくても記憶を保持するメモリ)で高速、大容量が可能な磁気メモリ(MRAM)があります。この次世代メモリにより、私たちはスタートボタンを押すと瞬時に立ち上がるパソコンを手にすることできるというわけです。100年余りの薄膜の歴史を書き換えるともいわれるMRAMは、近い将来の実用化も視野に入っています。私たちは新しいデバイスが生まれようという、その瞬間に立ち会おうとしているのです。
杉本研究室では、学生一人ひとりが主役。教員や先輩学生のサポートの下、ひとつのテーマに向けて、開発から設計、試作、評価に至るまで一貫して担います。多くの時間を費やし、試行錯誤を繰り返しながらの取り組み……研究へと駆り立てるのは、“まだ世の中に存在していない材料”に出会いたいという冒険心にも似た熱き思いなのかもしれません。

Projects

ネオジム磁石に添加するジスプロシウムを約40%減らす新技術を開発

資源小国・日本の切り札。研究開発力で“希少”なレアアースの使用量を低減

永久磁石に添加される材料ジスプロシウム

強くて省エネ、環境にもやさしいネオジム磁石。

最近、新聞やテレビなどのメディアを通じ、「レアアース(希土類元素)」という言葉を耳にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。17 元素からなるレアアースは、エレクトロニクス製品の性能向上に不可欠な材料です。中でも最も重要とされるのが『永久磁石』に添加される『ジスプロシウム』という元素。『永久磁石』(ネオジム-鉄-ボロン系磁石:以下ネオジム磁石)は、ハードディスクドライブや携帯電話を始めとして、家電機器、ハイブリット車(HV)、電気自動車(EV)などの駆動モータ、風力発電など、小型センサから大型モータまでさまざまな分野で使用されており、需要も累増しています。
ネオジム磁石は、その強力な磁界・磁束によって、省エネルギーや動力源の小型化・静音化を実現する環境にやさしいキーマテリアルでもあります。例えば、最近の冷蔵庫は音が静かになったと思いませんか? それもネオジム磁石のおかげ。しかしこの磁石は熱に弱いという欠点があります(耐用温度が200℃程度)。耐熱性を高め、保磁力を改善させるために添加されるのが前言のジスプロシウムです。

連携協力で「答え」を出すプロジェクト型研究。

ジスプロシウムは、ほぼ全量を海外(中国)からの輸入に依存しています。そこで経済産業省とNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、文部科学省では、元素戦略、レアアース使用量低減・代替材料開発に関する国家主導の2つの研究開発プロジェクトを立ち上げました。5大学・研究機構、民間4 社が、それぞれ微細化、界面、解析、応用の4グループを形成し、共同連携して研究開発に着手。杉本研究室ではインターメタリックス社(ネオジム磁石発明者の佐川眞人博士が代表を務める)との共同研究で、磁石を焼き固める前の合金粉末を従来の5ミクロンから平均粒径1.1ミクロンまで微細化するとともに、結晶粒子のまわりを薄く均一に界面(ネオジムリッチ相)が取り囲むように作製プロセスの最適化を行うことにより、保磁力を高め、ジスプロシウムを約40%削減することに成功しました。プロジェクトはまだ道半ばですが、各大学・研究機関、企業が熱意とリソースを注ぎ、切磋琢磨し合ったことが、短期間での成果を生んだものとみられます。
鉱石からの単離が難しいことからギリシア語の「近づき難い」を語源に持つジスプロシウム。今回のプロジェクトは、研究各チームの“密な連携と協力”が成功への牽引力となりました。そして開発された技術によるネオジム磁石の量産化が検討段階に入るなど、さらなる大きな成果に近づきつつあることも付け加えておきましょう。

Topics

イラっとさせます『MAG棒』
失敗者続出! 永久磁石の力で、行く手を阻む。

写真をみて、かつてバラエティ番組で人気を博していた“電流イライラ棒”(金属でできたコースに電極棒を入れて、フレームや障害物に触れさせることなく制限時間内にゴールまで運ぶゲームアトラクション)を思い出された方もいらっしゃるかもしれませんね。“マグネット棒”、通称『MAG棒』はその杉本研究室版。こちらはコースフレームの所々に永久磁石(ネオジム-鉄-ボロン系磁石)が仕込まれており、その強力な磁力が挑戦者の行く手を阻むという仕組み。多くの人が「M」の最初のヘアピンまでたどり着けない…というほどの難易度でした。しかし、ひっそりと練習を積み重ね、見事クリアした学生が登場! 難しさがチャレンジ精神を大いに刺激したようです。研究もかくありたいものですね(笑)。攻略者が増えた初代『MAG棒』は惜しまれつつ引退。2代目の登場が待ち望まれています。

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