作動温度を上げれば熱効率もアップ。過酷な環境に耐え得る材料開発を。
地球温暖化は、世界が直面している最も深刻な環境問題のひとつです。その原因には諸説ありますが、現在のところもっとも有力とされているのが、化石燃料を燃焼させることで排出される二酸化炭素(以下CO2)です。日本におけるCO2 直接排出量の部門別割合をみてみると火力発電などのエネルギー転換部門(約33%)と運輸部門(約20%)が半分を占めます※1。温暖化の抑制に向けたさまざまなアプローチ、選択肢を提供・提案していくことが研究を担う者としての使命・責務ですが、発電プラントや輸送機器の効率化を図っていくことによってCO2 排出削減を目指していこうとするのが吉見研究室の取り組みです。
発電プラント等では作動温度の上昇に伴い、熱効率も向上していくことが明らかになっていますが、現在は主蒸気温度600℃での稼働が主流です。さらに高温高圧に耐え得る材料の登場により、700℃級システムの実現に近づいていきます。吉見研究室では、高温下の過酷な環境においても高い性能・機能を維持する材料の開発で、プラントの高効率化に貢献していくことを目指しています。
※1 独立行政法人国立環境研究所「日本の1990 ~ 2009年度の温室効果ガス排出量データ」(2011.04.26 発表)
高精度な材料評価は、合理的かつ適正な材料設計に不可欠な指針。
自動車の燃費向上は、車体の軽量化がカギ。車両重量が100㎏減少すれば、リッター当たり1㎞の燃費改善が期待されるといわれます。吉見研究室では、軽い材料の代名詞ともされるアルミニウム(密度2.70g/cm3)よりもさらに軽量で比強度(引っ張り強さ)にも優れるマグネシウム(密度1.74g/cm3)に注目。これまで室温での扱いが難しく利用されることがなかったマグネシウムですが、近年、結晶粒の微細化による新しい加工性が示されました。吉見研究室では自動車に展開できる優れた合金への可能性を探索しています。
厳しい環境で使用される材料は、信頼性が前提条件となります。吉見研究室では、高温下でどのように変形・破壊していくのか、またどれぐらいの時間にわたって性能が担保されるのか(寿命予測)といった評価に関する研究も行っています。こうした高精度な材料損傷評価は、合理的で適正な設計に向けた重要な指針にもなります。
先端研究は、教科書に載っていない、あるいは書き換える可能性を持つ未知の事象を開拓していくことに他なりません。吉見研究室では、自ら発想・思考、行動する姿勢を軸に、材料の最前線を探究しています。