金属の持つ変形や流動の特性を理解しながら
目的の形状と性能に加工するプロセス


素形材とは、元となる材料に熱や力を与えて成形した部品部材のことをいいます。この時、熱や力を加えて成形したのちでも、部品材料が使用目的にかなった強さや靭性などの性能を発揮できるように、つまり欠陥が出ないように、材料の性質を制御しなければなりません。「素形材プロセス」とはこのような、材料を設計通りの形状と性能に作る工程のことをいいます。

金属材料に限らず色々なものを形にするには、何らかの力を加えて変形させるか、溶かして流動性を与えて固めるか、粉末を焼き固めるか、などの方法があります。

私の研究室のメインは、様々な方法で力を加えて変形させる「塑性加工」の部分になります。塑性とは変形しても元に戻らない性質のことを意味するのですね。このプロセスには圧延、鍛造、押出し、引抜きのなどの方法があり、鉄鋼材料、ニッケル合金、銅合金、コバルト合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、亜鉛合金などの構造用材料や、磁性材料、形状記憶材料などの高機能化とプロセスの開発に取り組んでいます。

そのアプローチとして、金属の中のミクロ組織を制御する部分があります。もともと金属が持っている変形特性を理解しながら、どのようなプロセスと作り方をすれば効率やコストも含めて理想的な成形ができるのかを研究するわけです。

例えば鉄鋼材料や銅合金のとても固い材料を使って、極めて薄い部品を作ることが求められることもありますが、相反することなので目的にかなう加工プロセスを開発するのがとても難しいわけです。

理論的には可能であっても、採算を考えると現実的な方法でないことも多々あります。金箔は長い時間と労力をかけて薄く延ばしているのですが、金だから採算とれるのであって、一般的な材料ではそうもいかないわけです。

薄い銅箔は基盤や接触端子などに使われるものですが、メーカーからの依頼で、引張試験時の強度を評価する方法の研究も行いました。

具体的な研究の一例として、少し前までやっていたのはニッケル基の超合金ですね。これは耐熱性が極めて高いので、航空機エンジンや発電所のタービンなどのような高温の条件でも使える素材です。高温下でも使えるということはとても固い合金なわけですが、加工するにあたっては難しくなります。それで加工時には、加工できる状態になるまで温度を上げるのですが、どの温度下でどの程度の荷重をかければいいのかを求めるわけです。そして金属組織が目的の状態になってくれるような制御も同時に行いながら加工するのです。

(図/写真1)

日本学術振興会優秀若手研究者海外派遣事業で2010年に半年間アメリカのNIST(National Institute Standard of Technology)のKattner先生(写真の左から3人目)のところに研究留学しました(左端が私です)。NISTには世界中からポスドクなどのポストで多くの研究者が集まってきました。このおかげで自分の所属している研究室だけでなく、ポスドクだけが集まるコミュニティーなど、いろいろな人脈を作ることができました。

取材風景
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