社会に貢献し続ける東北大の材料、
さらなる未知領域のハイパーマルチピエゾへ。


私は今年(2023年)から東北大に勤務しています。東北大学はDEI、つまりダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)に積極に取り組んでいます。実学を尊重し、女性も含めて多種多様な人材が活躍できるように門戸を開放していますし、新しい分野を切り開く人材が集まり研究しやすい環境を作っているのが魅力ですね。もちろん東北大学の材料は世界のトップレベルです。それは断言できますね。

私は小学生時に広大な中国を6回転校しました。そこでイスラム文化にも触れましたし、多様性を学んだと思います。仙台に来る以前は九州大学や産業技術総合研究所などにおりました。私は修士までは電子工学専攻で電子物理とデバイス研究室に所属し、電磁場のシミュレーションプログラムを作って、計算機による電磁場の振る舞いを予測する研究に励みました。ドクターコースから日本に留学し、応用化学・電気化学関係の研究室に所属し、研究のスタートはケミカルセンサだったのです。

最初は日本語のあいうえおも、化学実験の基本操作もできなかったのですが、自分で目標を立て、毎日知らないことにチャレンジしまくりました。やがて材料合成において独自の手法を確立することになり、博士修了時には私しか作れない半導体ナノ粒子を後輩のために20リットルを作製しておき出身研究室で長年それを使っていました。

また開発したナノ材料の評価においては、電子工学で得たプログラミングや、物性測定法なども次々と活用でき、研究の効率化・自動化だけでなく、新機能解明にも大変役立ちました。

博士研究では、半導体ガスセンサ分野で初のナノサイズ効果の発見と機構モデル提案した論文は、連続2年間当該論文誌の最高被引用表彰を受けました。無駄な体験や経験などないとその時から思うようになっています。

応力発光の研究の発端は私が科学技術事業団特別研究員に採用された時の研究です。NEDOの国家プロジェクト「シナジーセラミックス」に参加して圧電体の研究もしていました。当初は機械エネルギーを電気エネルギーに変換する材料を合成し、その圧電特性を調べていました。偶然に圧電体が破壊するときに光を発することに驚きを覚え、電気の代わりに、直接光に変換する材料を探索することに方向転換したいと提案しました。

圧電体の研究は非常に順調だったのですが、そのかたわらで応力発光という全く新しい分野に興味を持ち、圧電体のプロジェクトをやりながら休みの日に自費で研究を始めました。

最初周りの人には理解されなかったのですが、躊躇せずに挑戦できたのは、それまでの経験があったおかげかと思っています。研究者はナンバーワン、オンリーワンになりたいという気持ちがありますし、圧電体ではできなかった損傷の可視化を解決したいとの思いが強くありました。

世界でまだ発見されていないのにもかかわらず、やれるという自信だけはありました。それでもなかなかできなかったので、やめるかどうか自問自答もしました。もう無理だと思っていたところで、目にも見える光を発する応力発光体の合成に成功したのです。その時の感動は今でも忘れられません。部長も全員で応力発光をやるぞ、と興奮していたのを覚えています。その成果は高く評価されて、正式に主任研究官に採用されることになり、圧電と応力発光の研究を続けました。

科学は正直で、誠心誠意やっていると毎日発見があります。そして実現できた時の喜びは何物にも変えられません。ですから若い人には、苦労していいから挑戦してもらいたい、一生懸命生きて欲しいと思いますね。私は子供のころに文化大革命を経験してもいます。それで今日で終わっても悔いがないように、今日を精一杯生きるという思いがあります。

生まれたときはゼロですが、一生懸命生きればエネルギーが生まれてきます。脳細胞も同じです。何もしなかったらゼロのままで死んでしまうでしょう。

失敗を恐れたり、周りを気にしすぎたりすれば行動が生まれてきません。若いうちは迷惑かけてもいいと思います。たとえ失敗しても必ず得はあります。そして神様にもらったものを使い切れば、結果はどうあれ悔いはないと思いますね。

毎日を最後の日と思って生きることです。人生は一番やりたいことが一番先、大事なのは今を生きることですね。

私の研究室では今、IOT、AIの未来社会に貢献する光り輝く革新変換材料「ハイパーマルチピエゾ体」の開発を目標にしています。これは巨大圧電と発光機能を同時に備えた全く新しい材料です。これにより、力-電気-光の多元変換ができるようになるので、IOT、ロボットの自立駆動センサ・アクチュエータ、微小振動を活用したユビキタス光源や電源、ナノテックへの光治癒の自己修復材料・ナノマシン、生命科学へのバイオイメージング・光診断・光治療など、新たな可能性が広がる分野になるでしょう。

(図/写真2)

2023年4月に東北大学での新研究室をスタートしました。未来社会を照らす材料システムを目指してワクワクしています。まだこれからです。未来をともに創りましょう。

取材風景
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