東北大学 大学院工学研究科・工学部 マテリアル・開発系

プレスリリース

2003年

高性能膜で酸素を透過 ー家庭用燃料電池向け 水素生産に活用ー

2003年03月24日(日経産業新聞、日刊工業新聞)、2003年03月26日(河北新報)、2003年04月16日(ガスエネルギー新聞)
知能デバイス材料学専攻 高村 仁 助教授

 東北大学工学研究科の高村仁助教授らのグループは、大気中から酸素を効率的に取り出すことができる新型の膜を開発した。酸素を都市ガスなどに含まれるメタンと反応させることで水素を作ることができ、家庭用燃料電池の改質技術として活用できる。水素を製造するのに外部から熱を加える必要がなく、立ち上げ時間が短い燃料電池が実現する可能性があるという。

 開発した酸素透過膜は電子を通す鉄系の酸化物と酸素イオンを通すセリウム酸化物などの複合体。この膜は電子と酸素イオンの双方を通過する性質を持つ。1000℃で1平方センチメートル当り1分間に13ccの純酸素を分離する。従来の酸素透過膜と比べ、性能が約2割向上した。厚さ0.3ミリメートル、10センチメートル四方の膜を3枚使えば出力1 kWの家庭用燃料電池に必要な水素を供給する改質装置を作ることができる。家庭用燃料電池は2005年頃に実用化が予想されている。メタンなどを含む都市ガス水蒸気を使って700℃の状態で改質する技術が有望視されている。

 今回の東北大学の技術は、自然の発熱反応を伴うため、水蒸気による改質よりも、外部から与えるエネルギーが少なくてすみ、起動時間も従来の三分の一に短縮できるという。今後は、触媒などの利用により、水蒸気改質技術と同程度の700℃で性能を発揮する透過膜をつくる。また、実用規模の試験装置をつくり技術を確認する。研究は科学技術振興事業団戦略的創造研究推進事業として実施中。