東北大学 大学院工学研究科・工学部 マテリアル・開発系

プレスリリース

2004年

磁気不揮発メモリーの書き込み技術の飛躍
-ユビキタス社会の本命メモリーの超大容量化に道-

2004年05月10日(日経産業新聞)
知能デバイス材料学専攻 猪俣 浩一郎 教授

 独立行政法人科学技術振興機構(JST;理事長 沖村憲樹)は、フロッピーディスク等と同様に磁気によってデータを記憶する「磁気不揮発メモリー(MRAM)」のメモリー素子を従来の100分の1の電流で動作させることに世界で初めて成功した。MRAMは、現在のパソコンや携帯電話に使われているDRAM並の高集積化(大容量化)、SRAM並みの高速書き込み・読み出し、フラッシュメモリー同様の不揮発性などの長所を併せもつメモリーで、瞬時に立ち上がるコンピュータや、欲しい情報を欲しいと思った瞬間に得ることを可能にするユビキタス技術実現のためのキーメモリーとして期待されている。

 電子はスピンを持ちスピンの方向に対応した磁石として扱うことができる。MRAMの書き込み原理の一つとして、スピンを直接メモリー素子に注入しそのスピンの向きを反転すること(例えば上向き・下向きをそれぞれを「0」・「1」に対応させること)でデータの書き込みを行う方法がある。しかし多くの電子(スピン)を注入する必要があり、消費電力が高すぎることがギガビット級の大容量化への大きな課題であった。

 本研究では、記憶に必要な向きを持つ少数のスピンのみをメモリー素子に透過させるフィルタを 「RuとCo90Fe10 の二層構成の界面構造」により創り、従来の100分の1の電流(スピンの注入量)でスピンの向きを反転することに成功した。これによりメモリー素子を小さくして高集積化する際に、低消費電力化が可能になり大容量化に向けて大きく前進したと言える。

 この成果は、JSTの戦略的創造研究推進事業の研究テーマ「スピン量子ドットメモリー創製のための要素技術開発」(研究代表者:猪俣 浩一郎 東北大学大学院工学研究科 教授)において、東北大学の研究グループによって得られたもので、英国科学雑誌「Nature Materials」の印刷版での掲載に先立ち、5月9日付けで同誌のホームページ上に公開される。