東北大学 大学院工学研究科・工学部 マテリアル・開発系

プレスリリース

2004年

球状水素ガスセンサー 表面弾性波使い高感度

2004年08月06日(日刊工業新聞) 東北大、凸版印刷など
材料システム工学専攻 山中 一司 教授

 東北大学工学研究科の山中一司教授らは、凸版印刷、山武、米国ボールセミコンダクター社(テキサス州)と共同で、表面弾性波(SAW)を用いた高性能球状水素ガスセンサーを開発した。単独で水素濃度10ppmから100%までの広い範囲をカバーできるのが特徴。早ければ07年度にも新センサー市場投入を目指す。

 水素ガスセンサーは、燃料電池に供給する水素ガスの漏れや濃度を検知する。試作したセンサーは直径1mmの水晶球。球の約20%の部分に水素分子を選択的にとらえるパラジウム合金薄膜を蒸着してある。研究グループはSAWが水晶球の“赤道上”だけを周回し、それ以外の場所に広がらない現象を発見。試作センサーは、この新原理を用いて、パラジウム合金薄膜が水素をとらえた時のSAWの変化を増幅して感知することにより、高感度化を実現した。製品化されている代表的な高感度センサーとしては、電界効果トランジスタ(FET)と電気抵抗式センサーを複合化したものがあるが、二つを組み合わせるため電気回路・制御方式が複雑になるなど課題があった。ボールベアリング製造技術の応用により量産化も容易になるという。今後、東北大学では文部科学省の振興調整費を受けて、凸版印刷、山武と共同で「より詳細な機構解明を追及する」(山中教授)とともに、実用化への性能評価を行う。新たな共同研究は2年かを予定している。

 表面弾性波は物質の表面にエネルギーを集中させて伝搬する振動の一種。球における表面弾性波は、これまでの波の常識とは違うのがポイント。通常、波は細いと広がるが、東北大などが発見した波は細いのに広がらず、ある特定の場所をぐるぐる回る性質を持つことが分かった。今回は直径1ミリメートルのボールSAW水素ガスセンサー(水晶球)に表面弾性波の送受信機を設置。ここから表面弾性波を周回させる。水晶球に蒸着したパラジウム薄膜が水素分子に反応する際には、表面弾性波の伝わり方が変化するため、これを測定する。水素濃度10ppmから100%までの広い範囲を1個のセンサーで計測できる水素ガスセンサーはこれまでなかった。同センサーは水素ガスの漏れや濃度検知などに普及が見込まれる。

ボールSAWセンサのプロトタイプ

ボールSAWセンサのプロトタイプ