東北大学 大学院工学研究科・工学部 マテリアル・開発系

プレスリリース

2006年

有機分子の構造欠陥検出に成功

2006年12月13日(河北新報 、読売新聞)
知能デバイス材料学専攻 小山 裕 教授、田邉 匡生 助手

 知能デバイス材料学専攻の小山裕教授と田邉匡生助手は(財)半導体研究振興会と共同研究において、周波数純度を向上させたテラヘルツ波信号発生装置を用いて、有機分子中における構造欠陥を検出することに成功した。この結果は、日本学士院紀要欧文誌であるThe Proceedings of the Japan Academy, Series B(12月8日発行)に掲載された。

背景

 テラヘルツ波とは「光波」と「電波」の中間領域に位置し、周波数が10の12乗ヘルツ(THz)付近にある電磁波である。テラヘルツ波を発生させることは困難であったため、テラヘルツ領域における研究は極めて制約されていた。そのため、テラヘルツ帯は「人類未踏の周波数領域」と言われている。

研究成果

 今回の研究では(財)半導体研究振興会と共同で、糖類のひとつであるグルコース(ブドウ糖)にガンマ線を照射させることにより構造欠陥を生じさせると、テラヘルツ波と共鳴吸収する周波数が変化することを見いだした。また、アミノ酸のひとつであるアスパラギンの結晶化過程を制御することにより構造欠陥を導入した場合にも同様の結果を確認した。これらの測定にあたり、同グループは従来と比べて周波数分解能を約60倍に向上させたテラヘルツ波信号発生装置・分光吸収測定装置を開発し、それを用いることにより有機分子の構造欠陥検出を実現した。この結果は12月8日発行の日本学士院紀要欧文誌(The Proceedings of the Japan Academy, Series B)に掲載された。

 有機分子の構造欠陥を検出する一般的な方法はなく、この技術を用いることにより、例えば、薬剤の製造工程を監視することによる薬害防止や、製造における精製工程の違いに基づく麻薬の生産工場および流通ルートの解明が可能となる。さらに、DNAの欠損により発症すると考えられている癌などの早期発見が期待される。