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貝沼・大森研究室|東北大学大学院工学研究科 マテリアル開発系 金属フロンティア工学専攻 創形創質プロセス学講座 計算材料構成学分野


RESEARCH

研究概要

研究指針

 当研究室では,実験及び計算による状態図研究を基に,ミクロ組織の熱力学に立脚した材料組織制御を通して,今までに無い新材料の開発を目指しています.概要図に示すとおり,研究対象は,主に金属系構造用材料,機能性材料,鉄鋼材料であり,内容としては,状態図・相安定性から組織制御や各種特性評価に至る幅広い研究を行っています.この様な基礎から応用に渡る研究を通して,Co基超耐熱材料(日立製作所,日立メタルプレシジョン:摩擦撹拌接合ツール),Cu-Al-Mn系超弾性合金(古河テクノマテリアル:巻き爪矯正デバイス)を始めとした新合金の開発とその実用化を達成しています.

研究概要
1. 状態図の実験的決定及び計算

 素材の溶解から始めて,各種合金系の状態図を実験的に決定します.合金法,拡散対法,コンビナトリアル法などの実験手法,X線マイクロアナライザー,電子顕微鏡,熱分析などの実験装置を駆使して相安定性の評価,状態図の決定を行います.これは新材料の開発の基礎となり,当研究室の基盤となる研究です.
 また,必要に応じて実験状態図を基にCALPHAD法による熱力学解析を行っています.実験状態図は3成分以上の多元系では膨大な労力や費用を要するため,コンピュータシミュレーションが威力を発揮します.また,相安定性評価には、第一原理計算も取り入れています.

2. 材料組織制御の基礎研究

 材料における相の安定性が明らかになると,次はより優れた特性を見せてくれる材料組織を作りこむ必要が出てきます.そのために,加工熱処理を通して,析出,結晶粒成長,各種相変態を利用します.この時,示差走査熱量計,比熱測定装置,X線回折,電子回折等で変態挙動を明らかにし,レーザー顕微鏡,走査型および透過型電子顕微鏡,EBSD等で組織を評価します.
 また,必要に応じてCALPHAD法により構築された熱力学データと拡散データを組み合わせた拡散変態の濃度プロファイルシミュレーション(DICTRA)や組織シミュレーション(フェーズフィールド法)を行い、現象の理解と予測に生かしています.

3. 材料の諸特性評価

 目標とする組織が得られたら,その材料の持つ特性を具体的に評価し,実用化への可能性を明らかにする必要があります.当研究室は以下に示す数多くの実験装置を利用して特性評価を行い,既存材に勝る優れた新材料を開発しています.
 機械特性評価(高温用機械試験機、ビッカース硬度計、ナノインデンター,摩耗性評価装置,弾性率測定装置),物性評価(4端子法電気抵抗測定装置,振動型磁力計,熱膨張計,熱電特性評価装置),超弾性・制振特性(低温用機械試験機,粘弾性測定装置)他

主な研究テーマ

構造材料

  • 鉄合金や銅合金における集合組織と異常粒成長に関する研究
    構造材料

    材料の強度や磁気特性などの諸特性は、同じ成分であっても結晶方位や結晶粒径などのミクロ組織により大きく異なります。そのため、多結晶体において高性能な材料特性を得るためには、ミクロ組織制御が重要になります。当研究室では、鉄合金や銅合金などにおけるミクロ組織の制御、特に、集合組織と結晶粒成長に関する研究に取り組んでいます。単相域と二相域の間を冷却・加熱のサイクル熱処理を行うことで異常粒成長が生じる現象を発見し、熱処理のみで大型の単結晶を製造可能なことを実証しました。

  • 溶融めっき鋼板のための固液反応と相平衡の研究
    構造材料

    溶融めっき処理は金属材料の耐食性を著しく向上させることができるため、自動車ボディパネルや建材などに幅広く利用されているプロセスです。被めっき材とめっき浴(めっき被膜)の固液反応により形成される様々な金属間化合物は、その種類により異なる機械的性質を示します。めっき密着性を向上させるためには、これらの金属間化合物の形成メカニズムの理解や形成挙動の制御が極めて重要です。当研究室では、鉄鋼材料における先進的な表面処理技術の確立のため、固液拡散及び相平衡を実験的に調査し、固液界面における金属間化合物の形成挙動を熱力学的に解析しています。

  • 耐熱合金の状態図研究と新規材料開発
    構造材料

    CO2排出削減や省資源などの観点から、発電機や航空機の高効率化が世界的な課題となっています。耐熱材料の耐用温度の上昇により燃焼機関のエネルギー効率を向上させることができるため、優れた耐熱材料は環境技術のキーテクノロジーです。当研究室では、高融点金属の状態図を実験的に決定し、熱力学データベースの構築を目指しています。状態図を基に材料設計を行い、ミクロ組織制御や機械的性質の評価を通して、新規の耐熱材料の開発に取り組んでいます。

  • 銅合金の状態図構築と高強度銅合金の開発
    構造材料

    “青銅器時代”として知られるように、人類は古来より銅合金を利用してきました。現代では、自動車や携帯電話などにおけるリードフレーム、コネクタや、熱交換器の伝熱管などとして幅広く利用されており、銅合金は産業に不可欠な材料です。電気伝導性や熱伝導性に優れ、強度の高い銅合金を開発するため、当研究室では、状態図の構築とミクロ組織制御による新規銅合金の開発研究を行っています。

機能性材料

  • 新規な磁性形状記憶合金の開発と磁気・マルテンサイト変態の研究
    機能性材料

    形状記憶合金には、加熱による形状記憶効果と応力負荷・除荷による超弾性効果が現れます。当研究室では、形状記憶合金に磁性という自由度を増やし、磁場による歪制御(双晶磁歪・磁場誘起形状記憶効果)が可能な磁性形状記憶合金の研究を行っています。この材料は、高性能なアクチュエータやセンサーとしての利用が期待されています。また、物質の持つ磁気的なエネルギーを利用することで、リエントラントマルテンサイト変態による冷却誘起形状記憶効果という新しい現象を見出しています。このように、磁性もしくは磁気変態を示す形状記憶合金ならではの物理現象を研究し、新規材料開発を進めています。

  • 銅系形状記憶合金の研究と医療デバイス・建築部材の開発
    機能性材料

    当研究室で開発を進めている銅系形状記憶合金Cu-Al-Mnは加工性に優れる特徴を有しており、現行の実用形状記憶合金では高コストになる板や複雑形状の部材に適応することができます。この特徴を活かし、巻き爪矯正器具として商品化を実現しました。さらに、サイクル熱処理による異常粒成長の研究を行い、長さ70cmの大型単結晶棒材を熱処理だけで製造できることを実証しました。単結晶では優れた形状記憶特性が得られるため、この技術を利用することで、形状記憶合金を大型デバイスに適用することが可能になります。巨大地震による建物や橋などの損傷を防ぐ制震部材へ応用するため、更なるミクロ組織制御と形状記憶特性の研究を行っています。

  • 世界初の鉄系超弾性合金
    機能性材料

    鉄系超弾性合金は低コストが期待できるため、世界的に研究が行われてきました。当研究グループでは、鉄系合金として世界で初めて明確な超弾性を得ることに成功しました。二種類の鉄系合金で超弾性が得られており、Fe-Ni-Co-Al系合金では巨大超弾性歪が得られる特徴を有し、Fe-Mn-Al-Ni系合金では応力の温度依存性が極めて小さく、広い温度範囲で超弾性を得られる特徴を有しています。実用的に利用できる材料を実現するため、ナノ析出、集合組織、結晶粒成長、マルテンサイト変態などに関する研究を行っています。

  • 高性能な磁歪材料の開発
    機能性材料

    磁歪は磁場の印加により歪みが生じる現象であり、この性質を利用して、磁歪材料はアクチュエータ、センサーやエネルギーハーベスティング材料として幅広い分野での応用が期待されています。磁歪は、磁場印加により数十から数万ppm程度の寸法変化率が得られます。本研究室はFe系、Ni系やCo系等の金属材料に注目し、従来磁歪材料の性能向上と共に、全く新しい材料の開発にも挑戦しています。

  • 安価で高性能なMn基磁石の開発
    機能性材料

    ハイブリッドカーやハードディスク等に用いられている電気モーター、スマートフォンのセンサー、小型MRI等、私たちの生活には永久磁石が不可欠な存在となっています。安価なフェライト磁石と高性能な希土類磁石がある中で、近年その両者のギャップを埋めるものとして、Mn基磁石の開発需要が高まっています。当研究室はMn基合金における平衡状態図および金属間化合物の磁気特性等の基礎研究に立脚し、安価かつ高性能な新規Mn基磁石の開発を目指しています。

  • ホイスラー合金の相平衡・磁気特性の研究とスピントロニクス材料の開発
    機能性材料

    第4次産業革命とも呼ばれるAI、loTやビッグデータ等の変革には大容量ストレージ技術の革新が必須であり、それを支えるためには高記録密度媒体を実現するための高性能スピントロニクス材料が必要となります。本研究室は半金属性を持つホイスラー合金を対象に研究を行い、相平衡や磁気特性等の基礎データの構築と共に、優れた半金属性と高い相安定性を持つ新規材料の開発に取り組んでいます。