研究内容

Ferrous Processing Metallurgy

溶融Fe-Mn合金のAl脱酸平衡

修士1年 武井 琢真

一般的に鉄鋼材料は何らかの元素が添加された多元系合金となっている。合金元素は、鋼に様々な物理的、化学的性質を付加するために添加されており、合金元素の添加量は数ppmから最大数十%にまで及ぶ。合金元素が多く添加された鋼を高合金鋼と呼ぶが、高合金鋼の代表的な例としては、Fe-Cr合金、Fe-Cr-Ni合金、Fe-Ni合金、Fe-Mn合金などがある。本研究で取り上げるFe-Mn合金は優れた耐摩耗性を持つことや、磁性を持たないなどの特性から幅広く利用されている。特に近年では、自動車の軽量化や耐衝突性の改善のため、すぐれた延性を持つ高度な高強度鋼が求められており、近年では高Mnオーステナイト鋼が盛んに研究されている。高Mn鋼には変態誘起塑性を利用したTRIP鋼、双晶誘起塑性を利用したTWIP鋼などがあり、新たな自動車用鋼板として非常に注目されている。

高合金鋼の溶製プロセスでは、脱酸平衡の精密な熱力学データは酸化物系介在物の組成の制御に不可欠である。しかしながら、高合金鋼においては、その基礎となる熱力学的諸数値がまだ整備されていないため、実操業では経験に頼って行われているのが現状である。高合金鋼の脱酸平衡に関する研究はいくつか報告されているものの、十分な研究がなされているとはいえない。また、Al脱酸平衡に関する熱力学的諸数値は、介在物形態制御の面、あるいは超高清浄鋼製造のために非常に重要であることから、信頼性の高い数値が要求されている。そのため、本研究では高Mn鋼の溶製工程における脱酸平衡の基礎的な熱力学的諸数値を確立し、精錬の限界値等を知ることを目的とした。

溶融Fe-Mn合金のAl脱酸平衡

Fig. SEM image of interface between metal and crucible

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