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研究内容
   金属を主とした材料プロセス内には、流体の流動、熱移動、物質移動からなる移動現象が見られます。 本研究室ではそれらの移動現象の実験・解析し、超音波・マイクロ波・衝撃力・不定流動・電磁力等の"物理的作用"を利用することで環境調和プロセスの設計・開発を行っています。
   具体的なものとして、排ガス無害化処理、溶融金属の精錬・鋳造および表面改質過程の高効率化・省エネ化、含金属廃棄物の再資源化・適正処理技術などを研究テーマとして扱っています。

マイクロ波

   マイクロ波という電磁波を、金属や無機物質中の電子、原子(イオン)、そして水や有機物などの分子との相互作用という基礎的な観点からの研究を行っています。 それと共に、マイクロ波加熱特有の非平衡熱プロセスを利用した機能材料創製、材料の省エネルギープロセッシングや廃棄物の無害化、リサイクルなどの環境工学への応用研究を行っています。

   粘土土壌は層状珪酸塩と呼ばれる層状結晶の積層から構成されていますが、層間には(層間)水と共に種々のイオン(カチオン)を含んでいます。 特にCsイオン半径は層状結晶内のイオン隙間に合致するため非常に強固に結合しています。
   本研究では層状珪酸塩の例としてバーミキュライトを用い、その懸濁液にppbオーダーのCsイオンを添加します。 これを乾燥し水に再投入してもCsは溶出しませんが、粉末状態で種々の化合物と混合しマイクロ波加熱処理を行うと、イオン置換反応によりCsイオンが水に溶出するようになります。 本研究はICP-MS分析法を用い、微量Csの置換反応に対するマイクロ波照射の影響に関し調べています。
   ディーゼルエンジンは省エネルギー、低CO2排出などの点からガソリン車に比べ環境負荷が小さいと言われていますが,人体に有害な粒子状物質(PM)の発生が問題となっています。 現状ではPMを捕捉するフィルター(DPF)を用いて集塵し、一定の走行距離後に燃焼処理を行うことで待機中への放出を防いでいます。
   しかしながら近年注目視されているPM2.5に対しては、十分細かいフィルターを使用する必要がありますが、すると同時にフィルターが詰まりやすくなってしまいます。 そのため常時フィルターの加熱による燃焼除去を行うことが有効です。 ところが一般に粒子状物質はエンジンのイグニッション(コールドスタート)時に多く排出されるため、これを燃焼させるためには、エンジンスタートから迅速に加熱できるDPFが必要です。
   本研究はマイクロ波を利用した迅速加熱可能なDPF材料を作製し、PM無害化について評価、検討することを目的としています。
マイクロ波キャビティーと試料
試料の温度分布の
シミュレーション結果

   微細な電子回路を製造するために気相析出による薄膜形成が行われています。 基板へのダメージを最小限にするために成膜はできるだけ低い温度で行われます。 しかしながら低温で析出した薄膜は結晶性が劣悪であったり、微結晶から構成されることが多く、導電率が低いことが問題となっています。 このため加熱処理が施されますが、基板にダメージを与えず迅速な加熱処理(ラピッドアニーリング)を行う必要があります。 マイクロ波は金属薄膜を選択的に加熱するため、炉全体を加熱する必要がなく、低電力で効率の良い加熱プロセスが可能です。
   本研究はマイクロ波の電場と磁場を分離して加熱を行う特殊な方法を用いて、迅速な加熱処理を行うプロセス開発を目的としています。
AuPd薄膜のAFM画像
上:スパッタ法で製膜した試料
下:5.8GHzマイクロ波で750℃に加熱処理をした試料